ジュライ11
ここは魔界。魔王の玉座の間。
「魔王様、ラタトスクが戻ってまいりました。」
ラタトスクは偵察用のネズミである。
「通せ。ラタトスク。どうであった? 先代、魔王の忘れ形見の実力は?」
魔王は先代の魔王の息子、ウァズワースの動向を探っていた。
「はい、魔王様。先代の息子ウァズワースはヘルハウンド部隊を撃破しました。」
「なんと!? あのフェニックスやフェンリルなどの強者混合部隊を倒したというのか!?」
ラタトスクの報告に驚く魔王。
「はい。ウァズワースを窮地に追い込んだのですが・・・。」
ラタトスクは言葉を濁らせる。
「どうした? 続きを申せ。」
「はい。あと一歩の所で、伝説の聖剣エクスカリバーを持った人間が現れました。」
「エクスカリバー!? あの伝説の悪魔剣か!?」
聖剣エクスカリバーは、魔界では忌まわしい存在なので、魔物たちからは悪魔剣と恐れられている。
「はい。あのエクスカリバーです。」
魔王もラタトスクも間違えている。正しくは、聖剣エクスカリバーではなく、変な剣エクスカリパーである。
「それは厄介な!? まさかウァズワースが聖剣エクスカリバーと手を組むとは!? 恐るべし連中がやってくるのか!?」
魔王も先代魔王の息子と聖剣エクスカリバーの夢のタッグに脅威を感じている。
「そんなに俺が恐ろしいか!」
「私の名前は、エクスカリバーではない!」
その時、部屋中に声が響く。
「何者だ!?」
颯爽と魔王の前に声の主たちが現れる。
「私は先代魔王の息子ウァズワース!」
「騎士にとって名前を間違えられることほどの屈辱はない! 我が名誉にかけて成敗してくれる! エクスカリパー!」
「アインです。」
「ヤッホー! イリーナです。」
「パイア。」
アインたち5人は魔王の元にたどり着いた。
「ゲゲゲ!? おまえたちがなぜ魔王城にいる!? 魔王城の外堀には人食いレモラの群れを放っていたはず!?」
「レモラ? ああ、あの魚か。全部やっつけた。」
「はあ?」
魔王は耳を疑った。
ここで軽く回想。魔王城の外堀。パイアが元気な魚を見つけた。これが人食いレモラだ。
「あ、魚さんだ。」
「危ない!? パイン、こっちにきて。」
「私が一撃で火の海にしてやろうか?」
「目立ちすぎるわ!? 俺がやるから何もしないでくれ! いくぞ! エクスカリパー!」
「おお! 連撃の回数に挑戦だ!」
エクスカリパーは聖なる光をチャージする。
「ガオー!」
レモラの群れが外堀の水の中から飛び出して襲いかかってくる。
「くらえ! 必殺! エクスカリパー・スラッシュ!」
「ギャア!?」
アインの必殺技がレモラを切り裂く。
「ガオー!」
しかしレモラはまだまだ数えきれない数が襲いかかってくる。
「見せ場だ! エクスカリパー!」
「おお! 騎士に不可能はない!」
「でやあああー! 必殺! エクスカリパー・オール・スラッシュ!」
「ギャア!?」
「ギャア!?」
「ギャア!?」
アインは外堀のレモラを全て斬り倒す連続斬撃を繰り出す。
「35臆連撃!」
周囲はレモラが陸に山積みになっていた。
「敵は全て斬り倒す! それが私の騎士道精神だ!」
エクスカリパーは真の騎士であった。
回想終わる。
再び魔王の城に戻る。
「さあ! 父の敵を討たせてもらうぞ!」
ウァズワースは魔王に迫る。
「私の名前を間違えた罪は重いぞ! おまえたち浄化してしてやる!」
エクスカリパーも魔物たちに迫る。
「おまえたちは悪魔か?」
「私は悪魔だ。」
「騎士も名誉を汚されては、暗黒騎士にもなるぞ。」
「はい、そうですか。好きにしてくれ。」
アインはウァズワースとエクスカリパーに呆れた。
「お待ちなさい!」
「ワルタハンガ!?」
その時、悪魔の蛇の女神ワルタハンガが現れた。
「私たちは降伏して、魔王城を引き渡します。だから命ばかりはお助け下さい。」
「何を勝手なことを!?」
「魔王様! 勇者が魔王城までやってきた時は魔物の敗北は決まっています!」
「ヌヌヌッ!? それを言われると!?・・・分かった。降伏する。」
魔王もワルタハンガの言葉に説得され、自らの敗北を認める。
「誰が和解すると言った? 私はおまえたちを燃やし切らないと気が済まないぞ!」
「そんな!? 魔王の座は差し上げますから、許してください!?」
ウァズワースは炎を集約し、巨大な炎の塊を完成させる。
「魔王の座など要らない! 決めたことは必ずやり遂げる! 魔王を斬って世界を平和にするのが私の騎士道精神だ!」
エクスカリパーは、初志貫徹、正義が勝つことを重んじる。
「都合よくないか? 自分が殴るだけ殴って、殴り終わってやめたから、殴られた相手に殴り返すなって言うの。」
アインも魔王たちの提案に首を傾げる。
「エクスカリパー。チャージ。」
「もうやってる。既に魔王城は聖なる五芒星の魔法陣で包み終わっているぞ。」
「さすがのエクスカリパーだ。それでこそ騎士の中の騎士だ。」
「私の騎士道精神が、こいつらを許すなと言っている。」
「やるぞ! エクスカリパー!」
「おお! 最後の戦いだ!」
アインとエクスカリパーの周りだけでなく、魔王城すべてから聖なる光に包まれる。
「今日から私が魔王だ! 必殺! デビル・キング・ファイア!」
「俺は魔王を倒して、たくさん褒美をもらうんだ! 必殺! エクスカリパー・ホーリー・スラッシュ!」
「ギャア!?」
魔王城に炎と聖なる光が放たれ、魔王たち魔物を焼き尽くし、浄化し尽くす。
「なに!? 私も浄化されていくというのか!? この裏切り者!?」
なんとエクスカリパー・ホーリー・スラッシュは聖なる五芒星の中にいる魔族のウァズワースも浄化させ始めた。
「尺がないんだ! オチだ! 成仏してくれ!」
「ギャア!?」
ウァズワースは聖なる光の渦に消えていった。
「これで人間界も魔界も俺のものだ! 俺はお金持ちになれるぞ! ワッハッハー!」
「二世界制覇といやつだ。騎士の称号にピッタリだ。もらえるものは何でももらう、それが私の騎士道精神だ。」
「これでいいの?」
「いいのだ。だって、パイアは消えないよ。」
こうして伝説の生き物エクスカリパーの冒険は幕を閉じた。めでたし、めでたし。
つづく。




