ジュン10
ここはジュン城下町。
アインとイリーナは宿の部屋まで帰って来た。しかし、ジュン城を壊したことで自分の罪が問われないかとビクビクしていた。
「町人全員、殺そう。愛のためなら何でもやる。それが私の騎士道精神だ。」
久しぶりのアインとイリーナの二人きりの時間に、騎士道精神をうたうエクスカリパーはお邪魔虫でしかなかった。
「ううううう!? 邪魔だ!? せっかくイリーナと再会したロマンチックな夜なのに、エクスカリパーはなんてお邪魔虫なんだ。」
アインは常にエクスカリパーに見られていると思うと、イリーナを抱きしめることはできず悔しがっていた。
「さすがのエクスカリパーね。しっかり騎士らしく私を守っているわ。キャッハッハッ!」
そんなアインを面白がって笑うイリーナであった。
「それにしてもアイン、助けにくるのが遅かったわ。」
「ええー!? 俺も俺でがんばってきたのに!?」
「ワッハッハー! 面白いー!」
「こら!? 俺で遊ぶな!?」
イリーナはアインをからかって楽しむのが幸せだった。
「アインが不憫で見ていられない。私は廊下で寝よう。」
気を利かせてエクスカリパーの聖なる光の騎士が現れ部屋から出て行こうとする。
「ダメよ! エクスカリパーは神父役なんだから!」
イリーナはエクスカリパーを呼び止める。
「神父?」
さすがのエクスカリパーも首を捻る。
「そうよ。結婚式をやり直すの。」
イリーナは乙女らしく、コンドールにぶち壊されたアインとの結婚式を。エクスカリパーに神父をやらして、結婚式をやり直すというのだ。
「はあ!? なんで!?」
男のアインには女のイリーナの思考回路は理解できなかった。
「死にたいの?」
イリーナはアインを殺意のこもった眼差しで見つめる。
「やります。やらせてください。」
アインは命と引き換えに結婚式をすることを受け入れた。
「まったく女心の分からない奴だ。女にとって結婚式は、私の騎士道精神に匹敵するくらい大切なのだ。」
剣であるエクスカリパーの方がイリーナの乙女心を理解しているのだった。
「さすがのエクスカリパー! よく分かってる!」
「騎士として当然だ。仕方がない。他ならないイリーナと私の持ち主の幸せと平和のためだ。神父役を引き受けよう。」
エクスカリパーはイリーナのために女の幸せのためと、アインの命が無事であることを祈って神父役を引き受けて、2人の結婚式を始める。
「アインはイリーナを妻にすることをエクスカリパーに誓いますか?」
「はい。誓います。」
なぜ? エクスカリパーに? と思ったアインだが隣のイリーナが怖いので聞くのはやめた。
「イリーナはアインを夫にすることをエクスカリパーに誓いますか?」
「はい。誓います。」
イリーナは心の中で、アインが浮気でもするなら、エクスカリパーにブツブツに切り刻んでもらおうと笑っていた。
「それでは誓いのキスを。」
アインとイリーナは向かい合ってキスをしようとする。
「ギャアアア!!!」
その時だった。外から大きな悲鳴が聞こえてくる。
「な、なんだ!?」
「せっかくいい所だったのに!?」
アインはカーテンを開けた。
「眩しい!?」
なんと朝日が昇っていたのだった。
「お城が無くなっているぞ!?」
「いったい何があったんだ!?」
「大司祭様は無事なの!?」
城下町の人々がジュン城が破壊されたのに気づき騒ぎ始めた。
「わ、私の結婚式が。」
二度も結婚式に失敗したイリーナはショックを受け茫然と立ち尽くす。
「もうどうでもいいや。ふあ~あ。眠い。寝よっと。」
こうして、めでたくアインとイリーナの結婚生活が始まった。
「次の持ち主を探そうかな?」
この物語は聖剣エクスカリバーではなく、変な剣エクスカリパーの苦難の物語である。
「殺す!」
イリーナの殺意に満ちた新婚生活が始まった。
つづく。




