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1日目その3
「先生どう? 進捗は?」
「いいわけないだろう。今すぐお前の観察日記でも書こうかと思っていたところだ」
「それはよくないなぁ……よし、じゃあ職業作家の俺からありがたいアドバイスをあげよう」
私がうんうん唸っている横でさらにうんうんと唸りだす。狭い仕事場に男二人の唸り声が響く。
「そうだ、お前の代筆の経験をちょっともじって書いてくれないか。そうすればまた、謎が深まるんだよ。本当はこんなことをやってるのかー、とかまた憶測が生まれていい感じになうから。うん、そうしよう」
「そうしよう、っていっても俺にも拒否権っていうものがあってな――」
「どれにするかは任せるからさ。さあ、それよりはやく書いておくれよ」
とはいえ、このまま原稿用紙とにらめっこを続けていても勝手に文字が浮かび上がるわけではない。このまま完成できなければ裏方道を道半ばで諦めることになってしまう。他にいい案が無い以上それで書いてしまおう。
私は何かないかと、思い出しながら筆を動かし始めた。