第三話 グラディウスの森
「って言ってもクエスト受注ってどうやんの?」
「とりあえずギルドに行こ!」
「ちなみに、ギルドにも種類があるんだ!狩猟用ギルドのサラマンダー、探索、回収ミッションのジャイアントなど!王都の方だと中央に基本全てのギルドが揃ってるよ!」
マルスが浮きながら得意気に言う。
「で?今から向かうのは?」
「もちろん!サラマンダーだよ!今回は魔王に奪われてしまったグラディウスの森を救ってもらうよ!とりあえず勇者軍の強さを王都中に広げてもらうよ!」
「りょーかい。」
「てかシロハ小さくなったね。」
「これ十一歳の身体。ミユウは年齢変わってねぇの?」
「いや、十四歳だよ?」
「やっぱり年齢下がってんだ。」
「話変わるけどさ、瀬戸神君って居るじゃん?あの子と避難してたはずなのに消えてたんだよね。何があったんだろ。」
「一人で逃げたんだろ。」
「そろそろ着くよ〜!」
マルスが言う。
「結構デカイね。」
「此処は王都で一番大きいギルドだよ!」
「とりあえず中入ろっか。」
「いらっしゃいませ。お初にお目にかかりますが会員登録をお済ませ済みでしょうか?」
「いえ、まだです。」
「では、そこに能力紋が書いてある手の甲をかざして下さい。」
「はい。」
「登録完りょ…ぶふっ!?」
コーヒーを飲みながら作業をしていたお姉さんが驚いて吹き出す。
「どうかしましたか?」
「勇者様だったんですね!?しかも模倣持ちの!」
「えぇ、そうですよ?」
「なら会員登録は不要です。勇者免許と…後ろの方は?」
「賢者ですよ?」
「でしたら、お二人共免許をかざしてください。」
言われるがままに、免許をかざす。
「…はい。登録完了です。早速クエストを受注されますか?それとも宿や温泉で一休みしていきますか?」
美優とマルスが目を輝かせながらこちらを見るが、
「クエスト受注します。」
俺のこの一言により、二人の敵意を買う。
「お前ら、金欠なんだからやめろ。」
しょんぼりとした顔のまま、ギルドの壁の端へ行き、しゃがみ込んだ。
「えぇ!?グラディウスの森を救う!?」
「はい。何かやばいことでも?」
「いや、あれは厄災級クエストでして…」
小さい声でマルスに聞く。
「おい、マルス。厄災級ってどんくらい難しいんだ?」
「んードラゴンとクラーケン同時に殺せって言われてるようなもんだね。」
「行けるだろ。…とりあえず受注します。」
「り、了解です。馬車を用意しますか?」
「大丈夫です。擬似的飛行で飛んでいけるんで。」
「賢者様は…」
「私黒法使えるし、何なら魔族なんで翼くらい出せると思いますよ?」
「わ、分かりました。明日の二十一時までですので、お早めに。」
「分かりました。…行くか。」
「行きましょう!」
「で?方角は?」
「北の方向へ十分くらいだよ〜」
「めんどいな…お前ら、俺の手に掴まれ。そして、ミユウは風魔法か結界魔法で囲え。」
「わ、分かった。何するつもり?」
「簡単なことだよ。」
「擬似的飛行…縮地!」
何だかんだで一瞬到着。
「速!」
『能力、転移ゲートを獲得しました。』
お、移動が楽になるね。
「よし。勇者軍!突撃するぞ!」
「「おー!」」
「とりあえず森に入るか。」
足を踏み入れると、転移不可結界、脱出不可結界が張られた。
「チッ。逃げ道を無くすか。やっぱり魔王軍の幹部あたりがいるな。」
「そうだね。警戒レベルを高めて。」
その瞬間、俺はミユウにハグする。
「えっ!?」
「すまねぇ、ちょっとしんどかったんだ。」
「分かった。」
「もー!しっかりしてよ!!」
怒ったミユウの裏に、照れ顔があったのは俺達は知らない。
《瞬時判断を獲得しました。》
何で今なんだろう。
まぁいいや。常につけておこう。
「もうそろそろ敵が出てくると思うけど…」
「ガルァァァギァァァ」
「ふーん。ゴブリンの巣か。ミユウ、黒魔法で倒してみて。」
「死人よ、我に力を貸せ。」
「はっ。ミユウ様!何か御用ですか!」
魔族の暗黒騎士が魔法陣から出てくる。
「勇者シロハの願いだ。ゴブリンの巣を潰せ。」
「はい。仕事を与えていただきありがとうございます。」
全員切り裂き、死亡。
「余裕だな。」
「この調子で倒していくぞ。」
出てくる的は殲滅していた。
「…!!」
俺達が敵だと理解した小さなスライムは、隠れた。
「魔力をあげるから。おいで。」
「…」
怪しみながらも近づいてくる。
「んー仕方ない。俺がスライムになって魔力を渡してくる。」
「変化。スライム。」
ゆっくりと近づき、魔力を渡す。
「!!」
そして俺は帰る。
「変化解除。おいで、スライム。」
手のひらを出すと、そこに乗り、腕を伝って肩に乗る。
「プルルン!!」
嬉しそうに飛び跳ねる。
「この子の名前はぷるるんでいいよね?」
「好きにしろ。」
仲間?が増えた。
「ふぅ。これで全員殺したかな?」
「…お見事。流石転生者。私の名はラー。」
「…チッ。ミユウ、マルスとぷるるんを連れて逃げろ。」
「無駄ですよ?結界が張ってあるんですから。」
「チッ。そうだった!」
「流石は馬鹿勇者。」
「馬鹿はお前だ。」
結界が割れ、空から破片が降り注ぐ。
「な、何!?」
話は遡り、俺がミユウにハグした時。
耳元で、小さく囁く。
「創造、魔法破壊を創造。ミユウへ譲渡。」
「な、何これ。」
「プレゼントだ。俺が幹部との戦闘になったら逃げて結界を破壊しろ。」
「わ、分かった。」
「何が起きたか分からないがとりあえずもう一度結界を張ってやるぅ!」
「そんな事させねぇぜ?創造、神の鉄槌!」
空から、槍、剣、やつが殺した生物の怨念が降る。
もちろん俺は結界を模倣して当たらない。
「さぁ、グラディウスの森は返してもらうぜ?」
「お、俺はまだ死なねえ!」
ラーは、薬を大量に飲み込む。
そして、注射を打つ。
「ぐぁぁぁあぁあ!」
目が光り、真の能力を使う様だ。
「死ね、五月雨突」
真の勝負が今、始まる。