第十話 ギア
「それにしても拠点デカすぎねえか?ビルを拠点にするとか財力強いな…」
「とりあえず一階から潰していくか。見たところ最上階は十階だな。」
「お邪魔します」
「はい。ご要件はなんでしょうか…っ!」
ナイフで刺そうとしてくる。
「正直っ話す必要もねえわっ!!」
避けながら殴りに行く。
「一発が重い…!?――」
ぐちゃり。
内臓が潰れる音が聞こえる。
「さーて。二階から九階まで飛ばして行くか。」
「十階までエレベーターで行くか。」
チーン。
ベルの音が鳴り響き、十階に着いたことを知らせる。
「…シロハ。」
「モミジか?お前は誰だ?」
「モミジか…。懐かしいね。残念ながらモミジくんは眠っているよ。君もあるだろう?精霊に乗っ取られること。僕は"ラグナロク"。クリシュナ、イシス、マモンが死んだあの日に僕も死んだのさ。『邪魔だから』という意味の分からない理由のせいで人間に崇められないまま。そのまま神社は汚れちゃったんだよ。そこで僕の神社で歩いていたのがピエロの王、モミジ。それをいい機会だと思い乗っ取ったのさ。」
「…だら…い。」
「何だ?」
「くだらないって言ってんだよハゲ。人を巻き込む雑魚はぶち殺す。」
「勝てるのならね。僕はピエロの王モミジ…いや、"ラグナロク"。まさか気づかないとは。君は詰みだ。」
背後を見ると、二階から九階にいた雑魚どもが並んで取り押さえてきた。
「さぁ眠れ。」
「まずい…意識がもうろ…と…」
「…?何処だ?」
目を覚ますと、別室に移動していた。
腕は生で椅子に縛られ、椅子は固定されていた。目隠しもされている。口だけは動かせた。
「此処はどこだろうねぇ。さぁさぁどんどん吐いてもらうよ?」
「好きにしろ…」
「とりあえず目を開放してあげようか。」
目隠しを外されると研究室のようなところに座らさせられていた。
周りにはカプセルのようなものに閉じ込められた人達が。
「じゃあ第一の質問。これは何?」
朧を片手で弄びながら質問してくる。
「…刀。」
「第二。なにか隠されているか?」
「特に。こういう武器は趣味で使ってるだけなんで。」
「じゃあこれは?」
何かの力で武器に組み込んだ能力が勝手に発動しようとする。
能力が発動する。神々しい光が部屋中に。
「だからやめろって。後悔しろ。お前は拷問する相手を間違えた。」
そして、追加で《覚醒》も使っておく。
俺の魔力は急増し始め、白い髪が少し銀に近づく。眼は、右が金、左が黒に。
この能力は、いまいち分からない。雑魚敵を狩っていたら習得していたのだ。
名前は確か《神の目》だった気がする。
そして、落ちている朧を拾う。
「何っ…!?護衛共!!守れ!!」
「分かりまし…」
モミジ以外全員の首を朧で切る。
「モミジ。いや、ラグナロク。そろそろやめよう。魔王という邪悪の根源を殺してからにしようぜ?」
「いや、俺はもう取り返しつかねぇ。モミジとやらの身体は返す。魂もな。ただ、元からピエロの王だったからお前の敵対人物だぞ?さーて。いただきまーす。」
そこら辺の死体へ乗り移ったようだ。
そしていきなりカプセルの人間を食べ始めた。
「何で俺が食べたか分かるか?こいつらは能力値を上げる違法の薬で漬けてある。本当は警備等に使おうと思っていたけど仕方ない。さて。本番だ。モミジくんは眠っていることだし。」
ラグナロクは、人ではない何かの身体になる。例えるならば、機神。ロボットに近い。しかし、神だ。侮ると殺される。
「そんじゃ先手もらいますか。よっこらせと…!」
重そうな体を動かしながらしっかりと攻撃を当ててくる。
「っ…普通に痛いなお前の攻撃…とりあえず天照!!」
「守、反」
天照は軽々とはじかれ、反撃される。
「お前…っ!結構神っぽいな…!あぶなっ」
「そりゃあ神だからなっ…!っと。」
「そろそろお互い本気出すか。」
「モミジくんが目覚めるまで戦おうか。」
「よっし。朧…俺に力を…」
朧をしっかり握り、魔力を一点に。
すると、この剣のベースとなったとある龍が話しかけてくる。その龍の話もそのうちしよう。
『お前は何故戦う?』
問いかけられ、一応心で答えておく。
「魔王を殺るため。」
『人を殺めて何になる?』
「世界を平和にできる。」
『平和とは何?』
「争いの無い世界…?」
『争いを無くすために争いをするのか?』
「それ以外じゃ…」
『お前が争いたいだけでは?個人の欲を満たすために他人を巻き込むのか?』
「違う…!失いたくないだけ…」
『失いたくないから?馬鹿げてる。争えば失うかもしれないぞ?』
「失うのは怖いけど失わないためには争わなきゃ…」
『ふーん。面白い目的だとさっきは思ったけど大した目的でもないな。で?お前はどんな感じになりたい?』
「相手と互角に戦いたい…」
『ったく。余は忙しいのだぞ?ったく、仕方ない。この能力を与えるか。』
『能力、《ギア:龍》を獲得。』
『この能力は龍モチーフのアーマーを着ることが出来る。ギアを上げることでどんどん龍の姿に近づく。ただギアにも限界がある。ギアが崩壊すると龍の皮をかぶったただの化け物になり戻らなくなる。理性もほとんど消え、人間の食事もできない。とりあえずは1~3を使え。4以上は危険だ。』
「分かった。」
一点集中の魔力を拡散させる。
「どうだ?準備は整ったのか?」
「あぁ。」
「お互い、良いようだな。んじゃ、」
「よーい…」
「スタート」
「ギア1」
「機神武装最小化」
お互い変身したところで切り、殴り、守りの攻防戦が始まる。
「天照」
「守」
「天照」
「遅い。」
「天照!!」
「反射!!」
効かねぇ…
「ギア解放!!ギア2!!」
ギア2になると、尻尾が生え、白銀の鱗を纏う。
朧…力をもっと…
『力が欲しけりゃ使え。どれ、乗っ取ってやる。』
その瞬間、龍に憑依される。
「この小僧。ラグナロクも倒せんのか。…朧月」
「何だこの光は!?」
「風よ、全身を切り裂け」
その瞬間、ラグナロクの身体が一瞬でバラバラ死体に。
「こんなもんか。憑依解除…」
「朧月って何だよ!?」
『余のみが使える能力。貴様にも伝授してやりたいわ。ただ油断するな。部下共は生きてるぞ?ラグナロクの死体は回収しておけ。魂がまだ宿っているはず。こいつもギアに出来るはず。』
「ありがとな、朧爺や。」
『まぁ実はおじいちゃんキャラ演じてるだけなんだけどな。』
「え?」
『どうでもいい。とりあえず帰ろう!』
「モミジは?」
『っ…まずいぞ。すげぇ魔力を感知した。逃げるぞ。』
「了解。」
どこかからの視線を感じつつも、拠点へ帰る。
俺達を見ているものが居ることは、誰も知らなかった。
「ふーん。シロハくん、ギア獲得か。モミジくんはどう思う?」
「策略はあるので。魔王に勝つ算段は整っています。」
「金眼さん、とりあえず逃げましょうか。"魔王城"へ。」
「ふーん。魔王とシロハくんを裏切ったのに逃げ場があると思うの?」
「魔王?クソ喰らえ。僕は今日、道化として魔王を殺してきますよ。」
「…モミジ。やめとけ。セトの能力は不明だ。」
「僕が情報を持たないと思いますか?瀬戸の能力は――」
「"ギア:死神"」
「死を操るあの死神か?」
「うん。でもね、僕も勝つ自信はある。理由はね…ギア1」
「お前もかよ…龍か…?」
「そーだよ。これでシロハと協力出来る。僕が死んだことで彼の人生は狂ったからね!金眼さんももちろん持ってるよね?ギア。」
「持ってるよ…あと金眼って呼ぶな。エドって呼べ。」
「分かったよー。僕は追求しなきゃ。」
「"ギア"の存在意義を」