~きよの苦悩~
「う~~~。」
俺は、昨日の夜から、変だ。本当は男なのに、昨日のことを考えると顔がほころび、熱くなる。
昨日の放課後、とし、杉山利彦に告白され、最後はあいつの胸に。
そこで、としは「ごめん」といって走り去っていった。どうしよう。
きっと、今日答えないといけないよね。なんて答えよう。やっぱ友達でって言ったら、嫌われるかな?
俺は、自室の鏡に映る自分を見る。あいつこのリボン好きかな?
髪もうちっと綺麗にした方が、嫌われないかな、あいつどんな髪型が好きなんだろう?
って、違う。俺は男に戻るんだ。必ず、絶対、確実に戻ってみせる。でも、やらなければ良いんじゃない?
いや、それはダメだ。流されるな自分、清彦お前は、男の中の男、漢だった父、良介の血を継ぐ強い子だ。決して弱い娘なんかじゃない。
でも、あいつの胸板厚かったな~。
「はぁ。」
俺は、リビングの食卓に座って、盛大にため息をつく。
「きよ。お前、昨日からどうした。」
親父が、俺を心配する。
「えっ。いや何でもない。」
「あなた。女の子にはそういう日もありますよ。ねえ、きよちゃん。で、恋のお相手は誰?」
と、お袋がウィンクし、俺の顔が熱くなる。そして親父が吠えた。
「ハハハ。何言ってるんだい、美子、そんなわけあるはずが……あるのか?お父さんは、許さないからな。」
「あら、別に子供が出来た訳でもないんだから、良いじゃない?ねぇ、きよちゃん。それに、桜は18で作って責任取ることになったわよ。じいじ。」
「そ、それは……ゴホン。とにかくサクラのように不純異性恋愛はするなよ。それから、付き合うんだったら……。」
「いや、そのつもりはないから、俺は男に戻るから……。」
「もどっちゃダメよ。折角、母さん一男一女で産んだのに、長女は息子になったのよ。あなたもそう思うでしょう。」
「そ、それもそうだな。まあ、付き合うかは別として、その子を連れてきなさい。これは、父からの命令だ。」
俺は、この日一番のため息をついた。