夜に
その優しさが夜の膜を突き破ったなら色々なことを思いだそう
高速道路を走る車の中でCDをかけながら
気持ちを飛ばしていたあの時は幸せだったのだろう
グラウンドに立って運命を開こうとするあの時は幸せだったのだろう
柔らかく珊瑚色の混じる地球の水たまりに
目を覚まされたあの時は幸せだったのだろう
記念撮影のカメラの前でふざけ合ったあの時は幸せだったのだろう
それで今は?
今君は私の前で虚ろな目をしてこの静かな夜に迷子になっている
言葉の列を追っているその左手にはグラスに入ったアイスティーと氷
ミルクを入れる前にテーブルを濡らしはじめている
指を濡らされても気付かないぐらいに真剣になっているのにどこかけだるく眠そうな目
それに気付かないふりをする私もこの関係も限りなく薄く流れている
向かい合っているテーブルのざらざらした木目を撫でる私は別に何も語る訳じゃない
さざ波のような静けさに混じる香りのような貴方の感情が呟いて
私はなんとかそれを聞き取り私の言葉で返しているだけ
どうせ明日は明日の人生
ですので
今日も終わりになるこの時間だから
もう少し息を吸って揺らしてみて
君は今この時間を見ない、
重く塊のようになにかが君の視界をふさいでいる
なにがあったか、
それはとてもじゃないけど聞けないけどさ
どうにもならない今なんてなんの価値もないなんて
そんなこときっとないよ
”そのページを開いて
いつかきっとその氷を溶かし純粋に心を動かしてみせるよ”
そんなことを言える関係でもないこの距離でいい
幸せの底にはきっと
今みたいな時間があるはず
疲れて立ち止まった君が
いつか遠く残してきたものを振り返り
私のどうでもいいような話を指先で聞き流し
前を向くまでの、
空気でつながる特別な時間。
浅黄です。こんばんは。
ぼーっとしている子にキザったるく話しかけている様な詩です。
(誰が誰だとかはあまり考えていません)