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トイレ休憩、水分補給を行いログインする。ゲーム時間五時、日本時間十九時。ごくわずかに空に赤みがかっている。エールラーケ街の住人も活動し始めたようだ。
まずは冒険者ギルドに向かう。冒険者ギルドに入ると閑散としている。兎肉と皮の買取を依頼した。
「肉が二千六百個で三十一万二千、皮が二千七百個で三十二万四千、合計六十三万六千だね」「六十三万六千マールでよろしいですか? はい いいえ」
当然”はい”です。相場を確認した結果、兎の死体は百六十、肉と皮は九十六マールだった。前と同じだな、大量販売した時に下がる限度額があるのかもしれない。
他の品物の相場を確認してみた。兎の涙は百二十万マールで、ヤマアラシの針は一本十マールだった。どちらも売らずに取っておいた。
まだ武器屋は開いていないようなので、ギルドのログアウトドアからログアウトして、やっぱり夕飯を食べることにする。
夕飯とお風呂を済ませてログイン。ゲーム時間九時。武器屋が開いていたので品揃えを確認する。鋼装備が約四十万であるだけで、他はクローネシュタットと代わり映えのしない品揃えだ。
初期装備の杖では攻撃力が低すぎる。少し強い敵を倒すのに何十回も叩くのは効率が悪るい。どんな武器でも良いから攻撃力が高いものに変えよう。
武器を買うなら初期街より進んでいるこの街がいいだろう。先行投資だと思えば良いし、最悪孫娘にあげれば良いし。うふふふ。
「この店で一番高い武器ってどのような装備ですか?」
獣人狸と思われるようなおじさんが、ジト目で見ている。そういえば、布装備一式に木の杖、どう見ても金が有るようには見えない。
「あのこれー」と言って、今持っている所持金をチラッと見せたところ、店員の態度がコロッと変わり揉み手になった。古そうな杖を持ってきた。
「これは高名な賢者が長年使っていた杖で、魔法による強化がされております。装備者が唱える癒し系魔法効果が二倍、火系なら一.五倍、それ以外でも一.二倍の効果があり、しかも消費MPは二割減される優れ物です」
「それは殴るのに使ったらどんな効果がありますか?」
「え?いや、こんな貴重な武器で殴らないでしょ?」
「仮にで結構なんですが、殴ったらどんな効果がありますか?」
「木の杖と変わりません」
「値段はおいくらですか?」
「はい!勉強させてもらって百億マールです」
「ごめんなさい買えません」
どうやらこの狸、この武器を自慢したかったようだな。絶対売る気がない値段だったし。所持金を正しく伝え、その金額内で良さそうな武器を職業適性を気にせず持ってくるようにお願いしました。
「魔法使いの方であれば、先ほどのような魔法効果がかかっている装備です。大抵は魔法詠唱や効果の補助目的になっております。ですので、魔法を使わない事を前提にであれば、これらの商品はいかがでしょうか?」
まず見せてもらったのは、モルゲンステルン。メイスで頭の部分が丸く、幾つもの刺が出ている。長さも八十cm位で扱いやすそうだし、与えるダメージも大きそうだ。四十万。
次に見せてもらったのがフットマンズアックス。長いから槍の一種かな。先端は槍、斧、鉤爪が着いており、鎧や兜を装備した相手とも戦えるとの事。これは格好良くて気に入ったが、化物退治となると違う気がする。四十万。
その次が十文字槍。すごく綺麗で美しいというのが第一印象。先端の刃以外の横から出た刃でも殺傷効果がありそうだ。これなら攻撃範囲も広くて少し離れた敵なら戦い易そうだ。でも接近戦が難しそうだな。少し興味を持って見ていると、
「この商品は大変お買い得です。魔法強化武器なのですが核となる部分が欠けています。修理すれば魔法強化がかかりますよ。お値段は破格の六十万です」
魔法効果は取り付ける宝石の種類とレア度で効能が変わるらしい。ルビーは攻撃力が増加、サファイヤはHP増加、エメラルドは力が増加、ダイヤは防御力増加、等の効果があるらしいが、武器なのにHPや防御力が増加するのはおかしい気がする。
ゲームだゲーム、ゲーム、うん全然気にならない。自分で強化したい箇所も選べるし、結構いいな買おうかな。
「そうそう。もう一つこの武器に特徴があります。魔法強化を最大限まで有効にしたため、魔法詠唱に殆ど影響を与えない仕様になっています」
何それ?魔法使いに最適な武器じゃないか。
「しかしながら、逆に魔法が良く掛かり易くなりますので、攻撃魔法が当たると、ダメージをおよそ二倍受けますし、癒し系魔法を掛けてもらった場合は二倍癒されます」
何それ?凄く致命的な欠陥じゃないか。これは諸刃の剣だな。本当は呪われた武器なんじゃないのか?不良在庫を高値で売りつけるつもりなのかもしれない。更に悩んでいると、
「一旦使われてみて気に入っていただけたらお買い上げ頂くというのはいかがですか?一度お金は頂きますが、返品していただければ全額返金します」
なかなか良い提案だな。実際に試しみて気に入れば良いし、気に入らなければ返せばいいのか。
でも返品期限はどうすればいいのだろう?いつまでって訳にもいかないだろうし。
「お試し期間はいつまでですか?仮に気に入った場合、そのままクローネシュタットに戻りたいのですが」
「本日の営業時間内、十九時までお戻りなられない場合は、正式にお買い上げしたという事でいかがですか?はい。お買い上げありがとうございます」
こいつ商売が上手いなあ。こちらの思考を読んで話す内容を選択しているんだろうな。ちなみに宝石の取り付けは鍛冶屋で行えるが、それなりの腕前が必要になるので、アイゼンハルトか、ノイケーニヒシュロスになるだろうとのこと。なんかRPGっぽいな。
商会に行きお使いの品を受け取った。途中屋台で猪肉の串焼きをいただいた一本五百マール。この辺でよく取れるらしい。
猪肉なんて硬そうだなと思ってたら、意外と柔らかかった。なんでもワインに漬けているそうだ。
よし、この街ですべき事は終わったので、まずは街の外で武器の使用感を試そうかな。と門を出たところで声をかけられた。
「おじいちゃん」
会話が多いと話が進みませんね。でもちょっと入れたかった。
装備品
ランタン、布の服上下、布の靴、十文字槍、ギルドカードEランク
ポシェット*二個の中身 十枠
薬草三十九個、毒消し四十個、HP回復ポーション四十個、
テント一個、剥ぎ取りナイフ、火種四十六個、クエ品五枠、
兎の涙、ヤマアラシの針四十本、木の杖
所持金二十八万九千四百六十マール
LV三 経験値:四百七十三
参考:お使いクエの内容
・納期が十日後[当日含まず]、一品目千マール。一日短縮で百マール追加。
一クエストあたりの品数十個 現在一日経過
アスファルト十樽、原油十樽、石材十箱、芋十箱、豆十箱
街で不足しそうな燃料と食べ物、建築用の石材