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Tea break.スワンボート

ほら、よくあるじゃない。

カップルで乗ると、必ず別れるっていう、いわくつきのスワンボート。



「なんで、そんなの乗りたくなったんだ」

隣の席で、一生懸命にペダルをこぎながら文句を言うアキラ。

「だって、一人で乗ったって寂しいだけじゃない」

そんなのは、もう目いっぱいの口実。

二人っきりになりたかったから、なんて、まだ恥ずかしくて言えるわけない。

「だからって、何でスワンボートなんだよ」

周りをキョロキョロとしながら。

まるで、誰かを探しているみたい。

「いいじゃない、ボートって言ったらスワンだよ。それとも、ヘリコプターの方が良かった?」

それはそれで、狭そうだから、もっと近くに寄れていいかな、なんて。

「やだよ、そんな子供っぽい。これで十分。それで、どこまで漕げばいいんだ」

ムスッとしている表情でも、どこか、楽しそう。

なんだ、素直じゃないな。

「じゃぁねアキラ。時間の限り進める限り」

二人っきりになれるとこまで。

「はいはい、仰せのままに」

「うそ?ほんと?やた」

とっても嬉しくて、ボートの上で小躍り。

「わ、動くなよ、揺れる揺れる、勘弁してくれよ」

「ごめんごめ、あ、わ」



何で、ボートなんか乗らなきゃなんないんだよ。

「じゃぁねアキラ。この湖の真ん中まで」

指さす先は、ずいぶんと先の方。

「はいはい、仰せのままに」

ま、この間の埋め合わせじゃないけど、そのくらいは付き合ってやるか。

「うそ?ほんと?やた」

よっぽど嬉しかったのか、隣で飛び跳ねてる。

「わ、動くなよ、揺れる揺れる、勘弁してくれよ」

漕いだりするのはいいけど、揺れるのは恐いんだよ。

「ごめんごめ、あ、わ」

ボートの揺れに併せてふらふらして。

「おい、そっちは外」

バランスを崩して、外にふらっとして。

「あ、わ、あ」

そのまま揺り返して、俺の方へ倒れてきた。

「わ。おい、大丈夫か」

驚いて、そのまま抱き留める形になって。

「うん、ごめん。え」

思ったよりも、顔が近くて。

『あ』

お互いの声が重なって。

視線がじっと絡んで。

何も言えなくて。

そのまま、流されるように、時間は過ぎて。



「ねぇ、何やってるんだと思う、あの二人」

湖にせり出したステージの上。

「んー、まどろっこしい。そこはギュッと行くところだろ」

なんてことを言う保護者様。

「それって、応援してるの?それとも、こうやって監視してるの?」

それって、心配?それとも、嫉妬?

「今日は、マシロんとデートが主目的だよ?その途中で、たまたま見つけただけ」

どうだか。

気にあって、跡をつけてきたってのがバレバレなのに。

「素直じゃないな、レイは」

そう言って、ほっぺをつんとする。

「素直も何もないだろう?それとも、マシロんは素直なの?」

そういって、お返しとばかりにつんつんと。

「何それ、普段から素直だよ」

そう言って膨れて。

「マシロんがいつ、一番素直になるのかって、知ってるよ」

そう言いながら、後ろからぎゅっとされた。

「たまらないなぁ」

寒いけど、これだけでおなかいっぱいだ。



マシロの事を抱きしめつつ。

でも、視線は流れるスワンボートをずっと追いかけて。

ま、何事もなさそうで、大丈夫かな。

「ねぇ、マシロ」

顔を耳に近づけて。

「ん、なに」

少し、身をよじって。

「もしも、さ。二人の間に、大きな子供がいきなりできたら、マシロはどうする?」

「え、何それ。それって、プロポーズ?」

くすくすと笑いながら。

「そんな風に聞こえた?なら、そうかも」

そう言って、もう一回、ギュッとする。

「んー。レイと一緒だったら、良いよ?」

抱きしめている手を、マシロの手が、握り返して。

「レイと一緒にいられるなら」

嬉しいな、そんなこと言ってくれて。

「じゃ、前向きに検討?」

抱きしめていた手をほどいて。

「んー、検討してあげてもいいよ?」

くるっと回って。

マシロと、軽いキス。

「でも、その答えは、今日じゃなきゃダメ?」

「ダメ?とは?」

そう言うと、口に指をピッとされて。

「今日は、そういうの抜きで。二人のデートの日だから」

そうだね。

「うん、行こうか」

流されていたスワンボートは、再び自力航海中。

もうそろそろ、時間切れかも。

休憩話。


ありがとうございました。

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