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廃墟戦 Ⅵ

 血生臭い部屋の中心にシドは立った。

 部屋の隅はそうでもないが中心は血をたっぷり吸った絨毯がひかれそこからこの血液の原因であろう死体を引っ張った跡がある。

 それはキッチン側ではなくこの部屋から対面の廊下に伸びている。

 遺体は上半身を持たれ運ばれたのであろう、地面を擦った脚が絨毯からひとつ、もうひとつは壁のほうから走る。

 その壁には大きく凹んだ後があり何か大きな衝撃を受けたようだ。

(見た感じではクレハートがぶん殴ったとしか考えられないよな)

 そもそもアイツが血を流すなど、シドはなんとなくクレハートの身が安全だと思えた。


 遺体が引きずられたであろう血の跡を追い廊下へと出る。

 この先は家屋の大きさを考えても恐らく玄関で、そこから出ると愛車が停車している広間に繋がるはずだ。

 二つの遺体であろうものを引きずられた理由が何かはわからないが敵兵がいることだけはほぼ確実である、元々は見ることができたのは六人。エルトの話を聞いた分と先ほどの遺体の分も含めると三名はこの世にいないはず。

(残り三人か)

 シドは銃を握り直し廊下沿いの窓から中央の広間を覗いた。

 まだ綺麗ながらも汚れているカーテンを少しずらし外の風景へと目をやる。

 曇りのため昼間だというのに外は暗く今にも雨が降り出しそうだ。

 その風景の中に動く人間を見つける。

 真っ赤な愛車のシャトルバイク、その傍に例の老兵を含め敵兵が三人、その足元には鎖で胴体と腕、脚を縛られたクレハートの姿を見つけた。

 息を吐く、どうやら無事らしい。とは言え血の絨毯の原因はまだ彼かもしれないのだが。

 クレハートの傍に立つ三人は言い合っているようだ、特に老兵に一人の兵士が怒鳴るように話しているのが見える、もう一人の兵士は彼をなだめようとしているが彼の怒りは収まっていないようだ。

(これはチャンスか……?)

 そう一瞬考えるが彼らが軍人であるということを思いだしすぐにその考えを捨てる、一対一になろうが恐らく勝てない。

 それに相手はライフルでこちらは自動小銃なのだ、打ち合いをすればほぼ負けるのは確実。

 とりあえずクレハートの安否が一番気になるのだがそれを確かめるには近づくしかない。

 カーテンを捲っていた手を離しシドは作戦を練ることにした。




 彼らがいる町の端、川を隔てた一軒屋がある。

 他の建物同様人が住める状態ではない。

 その建物の二階、ベランダがすっかり朽ち果て無くなっている部屋の中にうつ伏せの状態で一人の女性が寝転んでいた。

 顔は若くエルトと同じくらい、真っ青な髪は肩にかかる程度の長さであり後ろで纏められ縛られていた。

 全身を迷彩服に包んでいるが中央広場の兵士達のように緑を基調としたもでのはなく灰色が全体的多い。ヘルメットは被らず彼女の横に置かれている。

 彼女の下には分厚いゴム製のシートがひかれ節々の痛みを和らげているようだ。

 そもそも彼女がこの格好をしている理由は手に握られている長細い銃だ。

 右肩にストックが当てられ右手はグリップに、左手は右手の少し前で銃をホールドしている。

 銃の全長は彼女の身長とほぼ同等、消音装置の付いたバレルと大きなスコープは広場の中央へ向けられている。

 スコープを覗く彼女の表情は真剣ではあるものの口元はにやけていた。

 彼女はすでに目標を見つけていた、カーテンを捲り広場の様子を伺うシドを。


 広場中央、真っ赤なシャトルバイクの傍にいた三名に動きがあった。

 さきほどまで一人の兵士が老兵に食ってかかっていた、老兵が仲間の三人を殺した足元の敵を殺すことに許可を出してくれないからだ。

「隊長殿は悔しくないのですか!」

「私としてもこの男を憎くない訳がないだろう!」

 結局自分の本心を伝え彼に同意する形で話は収まった。

 部下をなんとか説得することができた老兵はやっと本来の目的通りクレハートを人質にシドからシャトルバイク内の卵を渡すよう交渉を行うことにした。

 ただしクレハートにいつまで麻酔薬が効いているかわからないのだ、なるべく早く交渉をしないといけない。

(私としてもこの男を憎くない訳がないだろう)

 若い兵士の言い方に腹も立つ、それはまるで自分が仲間の死など何とでも思ってないように言われたからだ。

 それに足元の男に普通の銃弾は効かず今寝ている時でさえ殺し方が確定していない、実際はクレハートが目覚めるまでに交渉を済ませてしまわないといけなかった。

 手にもつ拡声器の電源を入れ町全体に聞こえるよう話はじめたその時大きな影がその町を覆った。

 

次からやっと佳境

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