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廃墟戦 Ⅱ

 武装した兵士の一人、勝ち誇った顔をした老人に歯向かうことができないままシドは彼の要求を飲むことにした。 

 信用した訳ではないが今のこの不利な状況でどうすることもできない。

 シャトルバイクは動かすことができない上こちらの人数を上回る兵士達に囲まれている、クレハートの能力があれば勝てるだろうがうまくいかなければ自分もエルトも生きてはいられまい。

 先日手に入れた金になる卵を渡せさえすれば。

(……。)

 少し考えてからシドは窓外にいる老人に話しかける。

「わかった、あんたの要求を飲もう。

 ただし卵を渡した後俺達に危害を加えるならこちらも素直に死なないとだけ言っておく」

 サングラスの奥の瞳に偽りなどはなく彼の言葉に老人は承諾する。

「そっちには化け物がいるんだ、こちらとしても無駄死には嫌だよ」

 そう言って老人はシドの顎に押し付けていた銃をゆっくりと離す、シドもそれと同じように銃を戻した。

 シドが銃を仕舞ったのを確認してから老人は兵士の一人を呼ぶ、するとシャトルバイクを取り囲んでいた五人の内一人が駆け寄ってきた。

「話はついた、他の者にも知らせろ」

「ハッ!」

 呼ばれた兵士は敬礼をしてからその場を去り仲間たちの元へ駆けて行く。

 その兵士を見送った老人は視線をシドに戻し話を続ける。

「悪いがこの車から下りて頂けるかな?

 車内の状況が外からでは細かくまでわからないからな。

 別に車ごと寄越せとは言わんよ」

 その言葉を聞いた時、シドは反抗するタイミングを決めた。


「あぁわかった。

 但し俺達が外に出た途端撃たれたら洒落にならねぇから武装だけはさせて貰う」

「それは無理だな、お前らが出た途端撃ってくるとも考えられる」

 シドの頼みを老人はすぐに断った、しかしそれもシドの考えの内。

「そうかい、それじゃあこの二人を先に建物の中に入れてやってくれないか、そこの宿場でいい。

 全員一緒に降りて近くなり遠くからなり撃たれて一網打尽にされたら困る。

 俺一人とこの二人を別グループにしてくれ」

 シドにとってはこの案だけは譲れなかった、この案さえうまくいけば後はどうにでもなる。

 シドの提案に老人の顔は困惑し黙った。

 少し時間がほしい、そう言い残し老人はシャトルバイク後方の仲間の元に行き何かを話始めた。

 それをサイドミラーで確認しながらシドは手元のシンカーを操作し車体後方のカメラを彼らに向ける。

 シンカーのディスプレイ画面には四人の兵士が輪になって話し二人がシャトルバイクに警戒している様子が映し出される。

 その画面を見ながらシドは窓を閉め振り向きながらエルトとクレハートに話始めた。

「クレハートはエルトを守りながら宿場に籠城しろ」

 急なシドの作戦に二人の顔は困惑している、そもそも相談もないままシドが勝手に話をつけてしまったのだから。

「その前にお前は何をしようとしてるんだ?卵を渡すだけだろ?」

「なんで籠城なんかするのですか?」

 二人は疑問だらけだ、そのサングラスの男が何を考えているのかさっぱりわからない。

「卵は渡さない。

 恐らく渡しても渡さなくても殺り合うことになるからな」

 シドは視線をシンカーに向けたまま話続ける。

「恐らく今見えてる六人だけじゃない、他にもいるだろうな。

 地形も数も情報も向こうが有利、こちらの有利な点は銃弾の効かないクレハート様と卵を積んだこのシャトルバイクだけだ。

 このシャトルバイクが破壊されることはとりあえずないがこのまま車内にいても埒があかない。

 それに向こうが強行作に出ればクレハートは無事でも俺とエルトは間違いなくこの世にいないだろ」

「でもシャトルバイクから全員でればこの車奪われるかもしれない」

 クレハートは問題点を指摘する、しかしシドの表情は変わらなかった。

「こいつ持っていくから問題ないさ」 

 そう言いながらシドはシンカーを見せた、この電子端末があればこのシャトルは動かねーよと付け加えて。


 兵士達との話し合い終わり老人が運転席側の窓まで向かってくる、それをサイドミラーで確認したシドは窓を開けた。

「わかった、二人を宿場に入れよう。その変わり見張りを付けさせて貰うぞ」

「あぁそれで構わねぇ、別に反抗するつもりじゃないからな。

 それじゃあ先に二人を降ろす」

 シドの言葉を聞きエルトとクレハートがシャトルバイクから降りる。

 助手席から降りたエルトの傍にはすでに屈強な兵士が立っており銃を構えている、もし撃たないというのが嘘であれば今頃彼女はこの世にいない訳でそう思うと冷や汗は止まらなかった。

 逆に後部座席のクレハートにとってみては銃など怖いものでも何でもないので降りた時隣に兵士がいようともただの不快感しか残らなかった。

「歩け」

 兵士に促された二人は揃って宿場に向かう、シャトルバイクからすぐそこの場所にあるため時間はかからない。

 エルトは言われた通り頭の後ろに手を組み従ったがクレハートはポケットに手を突っ込み話を聞こうともしない、それでも兵士が口うるさく言わないのはこの男がその気になればここにいる全員が数十秒でただの肉塊になるからだ。

 そうならないための抑止力が彼の目の前を歩く女性とあの真っ赤なシャトルバイク、それの運転手が人質になるからだ。

 結局どちらが極端に優勢ではなく均衡は保たれている。

 

 宿場は古く中は散乱していた。

 机や椅子とその破片が散らばり床一面が埃が覆っている、兵士達の足跡ははっきりと写し出されてここに彼らが来て間もないことが証明されている。

 奥にはカウンターがあるがその上は埃で真っ白くなり天井のあちこちに蜘蛛が巣を張っている。

 今は日も昇っていることもあり窓から差す光によって屋内はそこまで暗くはなかった。

 エルトとクレハートの二人を入り口とは逆の壁際まで歩かせると二人いた兵士の内一人が報告の為戻っていく。

 残された兵士は二人から目を離すことなくただ銃を構えて作戦終了の合図を待つ。

 宿場から出た兵士から報告を聞いた老人はシドに降りるよう指示した。

「それじゃ後ろのハッチを開けて降りてくれるか」

「あぁわかったよ」

 シドはそれに素直に従いシンカーだけを持って降りようとする、が老人はそれを見て制止させる。

「待て、そのシンカーは置いていけ」

 しかしシドは引かない。

「俺が降りた途端あんたらがこのシャトルバイクを取らないって証明はないからそれはできないな。

 それに俺がこれを持って逃げたとしても他の車両で牽引でもすればいいだけだろ。

 そもそも地面の中の装置がある以上コイツは動かすことはできないからな」

 老人はシドの話にきな臭さを覚えながらも了承する、卵さえ手に入れば後はどうとでもなるのだから。

「わかった、その代わり他の物は持って降りるなよ」

 はいはい、と適当に返しながらシドは運転席から降りる。当然その場に老人がおり銃は構えている。

「それじゃあ後ろのハッチを開けろ、変なことはするなよ」

 老人に言われシドは車両後方へ向け歩き始める、彼はシドが何か問題を起こさないか後ろから着いていった。

 車両後方には兵士が四人集まっており全員がシドに銃を向けている、彼が何か問題を起こせばすぐにでも打つだろう。

 シドはそれを気にする素振りを見せず車両後部で扉についたボタンを押しロックを解除する、するとハッチが開き始めた。

 最初は上側が開き次に下側が開く、扉自体の厚さは人間の持つ銃火器程度では貫通もできそうにないほど厚い。

 開ききったその空間は広く家具の収容もできそうなほどだ、しかし木や鉄等で作られた箱が積まれそれほど広いとは見た感じでは言えない。

 その場所の中央にブルーシートがかけられた”大きなもの”が置かれていた。

「これが例のやつだ」

 そう言ってシドは一歩進みブルーシートに手をかけようとするが老人がそれを声で制した。

「待て!こちらで作業は行う」

 老人は自分の後ろにいた者に行けと命じ二人の兵士が承諾しシドに変わってブルーシートに手をかけた。

 二人の兵士は恐る恐る大きなものに載せられていたブルーシートを外し始める、すると徐々にその全貌が姿を現し始める。


 その卵というものは球体でガラス玉のようであった。

 全体は中身に靄がかかっているようで所々透き通て見える、その丁度中心には青い何かが浮いていた。

「これが竜の卵か……!」

 形や色、手触りと予想以上に温かいそれを触りながらブルーシートを外した兵士は感動している。

 もう一人の兵士も卵に触れ感動したように率直な感想を言った。

 その卵に見とれていたのは他の者も同じ、老人ももう一人の兵士もそれに見とれていた。シドを除き。

 彼はその瞬間を待っていたのだ、唯一自分への視線が逸れるその時を。

 袖に仕込ませていた人差し指程度の灰色の筒を器用に引きだすとその先端を捻じる、それから二人の兵士が乗る下ハッチの上に軽く放った。

 それに老人ともう一人の兵士が気付くが時はすでに遅くシドが放った小さな手榴弾から凄まじい光と高音が放たれた。

(スタングレネードかっ!)

 兵士達は頭の中でそう理解しても咄嗟に行動を起こすことはできない、視覚と聴覚がいうことを聞かない。

 シドはふらつきながらも宿場傍の狭い脇道に逃げ込み更に走る、目を塞いだものの耳の奥に激痛が走る。自爆テロとは言え彼の作戦は上手くいったのだ。

 舗装もされていなく雑草が生え放題の脇道を走り民家裏の馬小屋らしい建物の影に隠れる。

 まだ耳には不快感が残り目にもチカチカとした光の粒が飛び視界を遮る。

 それでもシドは手に持つシンカーを操作し二つの機能を使用した。

 一つはハッチを閉めること、もうひとつは……。

 

久しぶりにFF6したら低レベルで魔大陸に突っ込んでしまった。

そして帰ることができないことも忘れてセーブした。

詰んだ。

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