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カフェテラスであなたと Ⅳ

 シドは飲み干したビール缶を手の中で遊ばせる。

 手の中の缶は指の力で凹まされたり戻されたりするたびに気の抜けるような音を出す。

 それを何度か繰り返してから座席傍のごみ箱へ捨てた。

(やっと終わったなぁ……)

 運び屋として一仕事を終えた達成感が全身を走り体から気が抜けていく、一日二日で終わる仕事はなく数日から数週間かかることが多く今回の仕事も二週間ほどかかった。

 途中危ない目に会いはしたが今こうして無事仕事が終わったことを心から喜んだ。

(なんかうまいもんくってから次の仕事探すか)

 心の中でとりあえず今後の予定を組んでから座席を立つ、それから地下駐車場へ戻るため近くの階段に向け歩きだした。 


 その時だった。

 シドが階段を下りかけた時一際高い歓声があがる。

 闘技場を揺るがすほどの完成にシドは驚いた。

 これほどの歓声があがるとすれば試合が白熱している証拠なのだろう、彼はそう考えさきほどの予定を取消座席に戻ることにした。

 座席の戻る途中溢れかえる観客の隙間からステージを見下ろす、そもそも試合を見ることが目的ではなかったのでこの観客席で一番高く遠いこの場所からははっきりとステージ上で何が起こっているのか見えない。

 闘技場の天井に開いている大きな穴から太陽の光は差し込んでいるのでサングラスの効果はありそうだ。

 なんとか目を凝らしてステージの上を注視する。


 そこには子供がいた。

 表情などは当然見ることはできないが服装はすごく地味な格好をしている。

 しかしシドが驚いたのはその子供の足元に大人が転がっていることだった。

 体格もよくこの闘技大会に相応しい大人の男性だ、それが子供の足元で腹を抱え時々苦しみながら転がっている。

(あの子供がやったのか……?)

 別に子供が大人を倒すことが珍しい訳でもない、例えば子供が格闘術を長年しているなどの経験があれば十分ありえる光景だ。

 ただ身長も体格も一回りも二回りも大きな人間が負けるのだろうか。


「決まったぁぁぁ!!クレハート選手の見事なカウンター炸裂!!

 初日から続く快進撃は誰にも止められません!!」

 拡声器によって高められた試合実況者の声が会場に響く、それと同時に会場からは拍手や歓声があがる。

 シドの周りでも拍手や歓声が止まずそれは一人の少年に贈られる。

(クレハートとか言ったか、あの子)

 周囲の状況を一旦見渡してから再度ステージに向け視線を戻す、沢山の人に祝福された少年はステージを下り控室があるであろう方向へ歩き出していた。

 



 それから三日間シドの闘技場通いは続いた。

 仕事を無事終えた報酬も仲介業者から払われ今のところ極端な散財をしない限り赤字にはならない。

 食事と必要な物資の補給等には金を払わないといけないが寝る場所は愛車があるのでこのベニロン舞闘会を見終えることにしたのだ。

 ちなみに駐車場所は闘技場地下になっている、案外自分と同じように車中泊する人間もおり恐らく禁止されているのだろうが結局居座ることにした。


 身長規則になんとかパスをすることで大会に参加した最年少、かわいい顔をしているものの戦闘スタイルは一撃必殺ボディへのカウンター、その鋼のように硬い体から”鋼人”と呼ばれている。

 これは買い物ついでに聞いた店員の情報であるが目的はクレハートのことである。

 彼がこの大会で優勝するのではないかという噂があちこちでなされ最年少優勝の新記録がでるのではないかと言われていたからだ。

 なかなか見ることができないその結末にシドの興味は惹かれていた。

 その情報と一緒にこの街に老婆と二人で住んでいるとも聞いたがシドにとってその情報はどうでもよかった、別にサインがほしいわけでもなく熱狂的なファンという訳でもない。

 舞闘会が終わった夜、彼の家が襲撃されたという噂を聞くまでは。

                               

タンドリーチキンが食べたい

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