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幸福探究者

 そこは砂漠のような広い砂浜だ。起伏のある地面や照りつける太陽のせいもあり砂漠と見間違えてしまうが遠くには山も海も見える。

 その砂浜には当の昔に流れ着いた朽木や遠くの山から風に乗ってやってきたであろう枯葉等幾つか殺風景を彩る物が点在した。

 

 その中でもっとも不似合いなオブジェクトが三つある。

 一つは一人の青年、年は十五、名をクレハートという。長く伸びた黒髪を後ろに括り青い目が印象的だ、上半身は白いシャツを着用し橙色のズボンを履いている、足元は何故か裸足だ。

 二つ目はその隣に立つもう一人の青年、年は丁度二十、名はシドという。金髪をオールバックにしサングラスをかけている、全身を黒革の服に包みその表情は暑さに我慢するそれであった。

 三つ目は彼らより十メートルほど離れた所に立つ砂の巨人だ、全長は軽く三メートルを超えている。巨人と呼ばれるだけあって人型をし頭部には目や鼻などはないものの黄色に輝く宝石が丁度その中心に付いていた。

 

「話に聞いた通り本当に”メルセブン”を持ってるのは砂の巨人だったか、もっと小さなネズミとかでもよかったのにな」

 シドは心底嬉しくなさそうに話す、その声は暑さもあってか普段より一段と元気がない。

「服脱げばいいのに」

「これは俺のポリシーなんだよ!」

 クレハートの率直な意見にシドは答える。いつだって彼はこの格好で通してきたのだ、ある意味生き様とも言えるのではないだろうか。

「さて、さっさと片付けて昼飯にしよう。それでさっさと食ってさっさと帰るぞ」

 そう言い終えたと同時にシドは背負っていたそれを構える。それは一メートルほどの鉄の塊、ほぼ長方形であり引き金や筒状の物等から見て銃のように見える。

 彼がその銃を構えたと同時に隣にいたクレハートは走り出した。

 

 走り出したクレハートは一気に距離を詰める、彼が駆けた後を蹴り上げられた砂が舞う。

 一般人では到底追いつけないほどの速さで駆け抜けたクレハートはその勢いのまま砂の巨人に飛び掛かった。

 右拳を強く握り射程内に入ったと同時に殴る、その一撃は軽く巨人の腹に突き刺さるがそれに対して巨人は痛むような動作は取らずクレハートを掴みにかかる。

 両手でクレハートを押さえ込むように手のひらを叩き合わせたが目的の黒髪の青年には大した効果はないようだ、彼は苦しそうな表情など見せず巨人の手を振り払う。

 クレハートは自身を押さえ込む砂の塊を両手を勢いよく跳ね上げ振りほどく、その勢いは振りほどくではなく砂の塊を粉々に弾き飛ばした。

 巨人は驚き後ずさるがクレハートは間合いをあけようとはせず足早に詰める、そして一度深く屈んだ後巨人の頭部に一気に跳躍した。

 先ほどと同じように拳を強く握り巨人の頭に向け突き出す、その拳が巨人の頭に届く瞬間その中から黄色の宝石とそれに連なる一際大きな球体が宙を舞った。

 それは核、砂の巨人の本体とも言えるものでこれが正体である。これさえ残っていれば巨人は何度でも蘇ることができる。

 その核は砂の上に踊り出した後クレハートでも追いつけないスピードで砂上を滑走する、そしてある程度の距離を開けると砂を纏い始め再度巨人へと変貌し始めた。

 ただそれを見ていたシドにとってはこの上ない射撃のベストタイミングであった。

 手に持つ特殊改造銃『スクリーム』の向けられた先で轟音と共に砂の塊が弾け飛んだ。


 粉々に砕けた核の破片の中から黄色に光る”超宝石”『メルセブン』を拾い上げたクレハートはシドの元に向かって歩く。

「今回も作戦通りだったな」

「うまくいってうれしいけれど毎回砂まみれになるのは嫌だ」

 ご機嫌なシドはクレハートに向かって親指を立てて笑顔で言ったが毎回砂まみれになるクレハートはおもしろくなさそうに返す。

「でもお前が砂まみれになるだけでそこそこの金が手に入るんだぞ?こんなにいい仕事はないだろ?」

 確かに砂の化け物に飛びついて砂まみれになるだけでそこそこの金が手に入るのだ、そう思えばいい仕事なのかもしれない。

 それでも受け取った宝石を見てニヤニヤするシドにクレハートはすっきりしなかった。

「お前もかぶれ」

 クレハートは足元の砂を両手ですくいシドに投げつける、先ほどまで満面の笑みだったシドの顔は困惑の表情を浮かべたが砂によってその表情をクレハートが見ることはなかった。


「この大きさだとだいたい三百万ノルくらいになる?」

「さぁね、不景気だから二百五十万くらいになればいいほうだがな」

 緑に塗られた大地に線を引くように茶色の道が走りその線の上を真っ赤なシャトルバイクが走っていく。両側覆う木々の枝が時折車体に当たり音を立てた。

 シャトルバイクとは彼らが乗る円錐形を倒したような乗り物だ、タイヤはなく代わりに空気を噴射することで地面から浮き上がりそれを推進剤とすることで滑走でする。

 全長は五メートルほど、シドの乗る運転席が一番前にありその後ろが荷物を載せるキャリアになる。クレハートはその荷物の群れに背中を預け目蓋を閉じリラックスしている。

 車体の窓は全て閉められており時折当たる枝などが車内に入ることはない。

「結局燃料代と食費、情報料を払うと半分も残らねーな」

「あとこのバイクの借金も」

「……そう考えると十分の一も残らねーな」

 はぁ、とシドは大きくため息をつく。”協会”の奴らはもっと儲かると言ったのに儲かってるのは手数料を引くお前らだけじゃなーかと心の中で愚痴る。

 そう言いながらもシドはスピードを緩めず目的の街を目指す、”七つ色の街 エーテフ”へ。




 一部の生物が体内に宿す超宝石セル・ストーン____

 それはこの世界『クリオン』における富の象徴。

 大きさ、形、輝きの対価として大金が積まれ多くの者が危険を顧みず超宝石を手にいれる為奔走する。

 

 いつしか人々は彼らを『幸福探求者』(Happiness Seeker)と呼ぶようになった。

 


 今作も勢いと自己満足で書く。



(本当は脳内で温めた作品を書いていく予定でしたが脳内で収集がつかなくなる&設定集作りに飽きましたので今日思いついた話を書いていきたいと思います)

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