『秋、紅葉』
なんか最初に投稿し『夏、揚羽』の続きです。知らずに投稿して『』をつけてしまったので、『『夏、揚羽』』になってしまったりしてました。相変わらずの変な文法、文章ですが読んでもらえたら幸いです。
夏休みも終わる。
俺、山田浩介高校二年生の夏休みも例がいなく終わり秋がやって来る。
新学期も早くも2週間が過ぎていた。
俺は、夏休み一人の少女にあった。
その少女は、千国院揚羽、12歳。
揚羽は、余命半年という残り少ない人生で、俺のことを好きだと言ってくれていた。
一方、俺はというと……。
揚羽に好きだと言えていない…。
自分でいうのもなんだが、ヘタレなのだ。
だが、揚羽を抱きしめたし、揚羽に気持ちは伝わっていると思う……多分。
俺は、揚羽と夏休み最後の日以来会っていない。ドラマのようなキレイな言葉を交わし合いわかれ、それっきりになっていた。
揚羽は今後のことは言ってなかったし、これで良いのかもしれない。
俺は昼休みに1学期にあった授業のノートを写させてもらっていた。
「おう、浩介、頑張ってんな」
「まあな、ほら、俺って頭よくねえじゃん。今まで適当にやっていた分、これくらいはやんないと。あいつとの約束だから頑張んないとな」
「?」
こいつは嶋村遊作。
クラスメイトだ。
中学からの腐れ縁でもある。
「大事な奴に対して、俺は恥ずかしくない奴になるって決めたんだ、やるしかないだろ?」
「もしかして例の彼女か?」
嶋村には揚羽のことを話している。
どんなに可愛くて大切で、……命がそう長くないことも含めて。
でも、彼女……悪くない響きだ。
まぁ、一方的とはいえ、お互いに気持ちは確認した……ような気もする。そう言ってしまってもいいだろう。
「おう」
「で、そういえば、浩介、お前の彼女はいくつなんだ?」
俺は、全部話したつもりだったが、揚羽の年齢については言ってなかったらしい。
うっかりしていたもんだ。
「それはな…!」
俺は言おうとして少し考えた。
こいつ、嶋村は意外と信用できる奴だ。口も軽くはない。
そう考えると大丈夫そうだな。
しっかり情報統制しておかないと、場合によっては俺のこれからの高校生活に支障が出てくるからな。
「えーとだな、揚羽は12歳なんだが」
「お前、12歳と付き合ってんのか?!」
その嶋村の声はクラス中に響いた。
一瞬の静寂のなか、ほぼ全員の視線が俺に集まったのがわかる。
ああ、視線がいたい。
「悪い、……少し声がでかかったな」
「まったくだ」
嶋村は謝ってくれた。
だが、しばらく、クラスの中では俺の影の呼び名は『ロリコン』、これで間違いないだろう。
しかし、俺はロリコンと呼ばれることは気にしない。
あいつ、揚羽に対して、俺はなんも疚しいことはなんもしていないんだから。それに、ロリコンと呼びたいやつは呼べばいいと思っていたはずだ。
「気にすんな」
どうせ、今まで俺は空気みたいにいるのかいないのかわからないくらいの奴だったんだ。
今さらクラス内での名声なんて気にしない。
嶋村は不思議そうな顔をして俺をみる。
「浩介、お前ほんとに変わったな」
「そうか?」
「なんか大人になったっていうか………まさかお前!」
「嶋村、お前今変な妄想しただろ」
「いや、俺はお前が例の彼女とやらしいことをしているなんて思ってないぞ…………少ししか」
「はぁ」
ため息が出る。
こいつは良い奴なんだが…。
そんな不埒な想像は俺が許さん!
「ちょっと、そこのあなたたち、今、変な話が聞こえてきたんだけど?」
「!」
みると、一人の女子生徒が座っている俺たちを見下ろしていた。
こいつは……。
厄介な奴が来た。
「お前には関係ないだろ」
「そうはいかないわ」
俺の言葉を突っぱねる女子生徒。
よく見たら可愛いとも見えなくはないが、キツイつり目が少し怖い。
こいつは山城紅葉。
クラスメイトだ。
しかし、クラスで空気のように佇んでた俺と違って、こいつは有名だ。
……悪い意味で。
こいつはクラスメイトの問題に自分から首を突っ込んでくる。そいつが迷惑がっても突っ込んでくる。それで、問題がこじれたことも、大きくなったことも数知れない。…前にちらって聞いた話では、人死ににも関わったことがあるとか。
さすがにそれはデマだろう。
だが、こいつ、山城紅葉は迷惑がられている奴なのだ。
「さっき、あなたたちの話していた話、詳しく聞かせてくれない?」
「断る!」
俺はキッパリと断った。
別に俺がこいつ、山城紅葉のことをとくに嫌いというわけではない。だが、回りの評判を聞くに、こいつの協力を得て得になることはないらしい。
それに、俺の将来や……揚羽の余命を神ならないこいつがどうにかできるわけでもないだろう。
帰り道、俺は待ち伏せされていた。
この学校にも希少ながら生息している不良連中にというわけではない。
待っていたのは山城紅葉だ。
「……」
「あのさ、一緒に帰らない?」
「何で?」
「話があるの!」
有無をいわさない強い目。
断ってもまた付きまとわれそうだ。
俺はしょうがなく付き合うことにする。
さて、どんな話やら。
俺たちは、比較的学校から近いカフェに入ったにいった。
初めて入ってみたが、俺の行きつけの喫茶店と違って店内は明るく、奥様方や、他の学校の女子生徒やうちの生徒など九割がたが女性で埋め尽くされている。
コーヒーを注文、すぐに運ばれてくる。
ふーん、なかなか美味いけど、俺はやっぱり喫茶店のがいいな。それに、女ばかりっていうこの空間はどうも苦手だ。
そんなことを考える。
「そんで?話ってのは?」
すぐに終わってほしくて、突き放すような態度を取っておく。これなら、山城も怒って手短に用件を終わらせてくれるはずだ。
俺は、コーヒーを飲みながら相手の出方を待つことにした。
一口啜ると山城が用件を告げてくる。
「私と付き合って」
ブフウー
コーヒーを吹き出してしまった。
あっ!何か前にもこんなことあったな。
たしか、揚羽と出会った頃だ。懐かしいなぁ……って、今はそれどころじゃないか。
「何で俺がおまえと付き合わなくちゃいけないんだ?」
「あんたがロリコンだからよ!」
あっ!言っちゃった。
ほら、周囲のお姉さまがたの視線の痛いこと……。
これだから人気店は困るんだ。
俺は、もうこの店に顔を出すことはしばらくないだろう。
「えーと、つまりはどういうことだ?」
俺はさっぱり意味がわからんという感じを全面にだし、問い返してみた。
「私があんたと付き合うことで、いたいけな女の子が一人救われる。だったら私は喜んで犠牲になっていい」
「犠牲って……山城、お前、何か勘違いしてないか?」
どうやら、こいつ、山城紅葉の脳内では俺はとんでもない鬼畜野郎になっているらしい。
「なぁ、一つ確認だが、俺はお前のことをよく知らないし、お前も俺のことをよく知らないだろ?」
「ええ、知らないわ。なんて名前なの?」
「そこからなのか!……まぁ、いい。俺は山田浩介だ」
「山城紅葉よ」
お前の名前は知ってる。
悪い意味で有名だからな。
でも、ため息が出そうだ。
いくら夏休み前までの俺が、やる気のない空気のような奴だったといっても、一応、同じクラスになって5ヶ月以上は経っているが、お互いに今が自己紹介のような感じだ。
「山城、お前、そんな何も知らん俺と付き合って大丈夫なのか?」
「!…それは…」
少し、動揺する山城。
そりゃ、そうだろう。
俺はロリコンと思われてる。まぁ、12歳の揚羽のことが好きなんだ。いろいろ言いたい奴はいるだろうさ。他の奴等が、揚羽の余命とか、そんな事情を知らなかったとしても言い分けにはしない。俺は余命とか関係なく揚羽に惹かれただろうから。
「ロリコンな俺と一緒にいたら、お前まで友達とかに変な目で見られるんだぞ」
「…………」
さすがにそれは嫌なのか、山城は無言だ。
よし、もう一押ししたら、山城は手を引いてくれそうだな。
俺はたたみかける。
「それに、もし付き合ったとして、俺が変な趣味でも持ってたらどうするんだ?」
「えっ!あなたロリコンなだけでなく、変態趣味も持っているの!」
「ちょっ、だから声でかすぎだろ!」
ほら、また周囲の方々がざわざわしてきただろうが…。
俺は誓う。
もう二度とこの店には来ない!
「だから、もし!…って話だ」
「それでも、私はあなたと付き合う」
そう言った、山城紅葉の瞳には強い意思が宿る。
何でだ?
いざとなったら、俺と揚羽のエピソードを語ってやればいい訳だが、何でこいつがこんなに人様のことに首を突っ込みたがるのか俺にはわからない。
でも、興味がわいた。
目の前のクラスメイト、山城紅葉に。
「わかった。妥協案だ」
「妥協案?」
「とりあえず、とりあえずだ。俺と友達になってみてくれ。そして、俺がどんな奴か見てくれ」
俺の提案は簡単だ。
とりあえず、友達って立場からみてもらえたら、俺はそこまで酷い奴ではないはずだ。……多分。そこで、俺が変態でないことやロリコン……ではあるわけか。まぁいい。ありのままの俺をみてもらおう。そして、学校のやつらの誤解を解いてもらい、普通の高校生活を取り戻す。
機会があれば、何で山城がこんなことをするようになったのか聞いてみたい。
「わかったわ」
「じゃあ、よろしくな。山城」
俺がわざとらしくフレンドリーに笑いかけてみた。
山城の表情はよく読めない。
迷惑そうにも、恥ずかしそうにも見える。
「……私のことは紅葉でいい。私も浩介って呼ぶようにするから」
「おう、よろしくな。紅葉」
そして、俺たちは帰宅するため解散した。
翌日の昼休み。
俺は、いつも通り嶋村と購買にパンでも買いにいこうとして、呼び止められた。
相手は、山城紅葉だ。
「おう、紅葉どうしたんだ?」
「あのさ、お弁当作ってみたんだけど、一緒に食べない?」
こちらの様子を伺うように紅葉が聞いてくる。もちろん、断る理由はない。二つ返事でOKだ。
「おう、いいぞ」
「何だ、お前らどういうことだ?」
昨日のやり取りを知らない嶋村は顔面に?を貼り付けていた。
「ええと、そこの……誰だっけ?」
「紅葉、お前な……」
どうやら、紅葉はクラスメイトの名前もろくに覚えてないようだ。
嶋村は苦笑しているが、気を悪くした様子はない。できた奴だ。
「俺は嶋村だ」
「嶋村も一緒に食べる?お弁当はいっぱいあるから」
「いいのか?」
嶋村が俺の方を向く。
……なんで、俺に確認するんだ?
「……いいんじゃないか。そんで、ここで弁当を食うのか?」
「ええと、それはやめとこっか」
紅葉が拒否する。
クラスの有名人、山城紅葉とこんなに話をしていたのだ。
周りの目を引かないわけがない。
「場所を変えようか」
教室を出て、特別校舎の外階段にいく。
なるほど、ここはこの時間他の教室や通路から死角になるわけか。
「紅葉、よくこんな場所を知っていたな」
「……うん、まあ…ね……よく来るんだ」
俺の何気ない一言だったが、紅葉はいいよどむ。俺、何か変なことを聞いたのだろうか?
「いい場所だな」
俺は素直に思ったことを口にした。
学校特有の喧騒から離れられる静かでいい場所だと思ったのだ。
紅葉は意外な反応と思ったのか、それとも自分のよく来る場所を褒めてもらったせいなのか、気恥ずかしそうにしている。
「そんなことより食べようよ」
紅葉は持っていた弁当箱を広げる。
弁当はデカイデカイとは思っていたが、なんと、二段のお重で一段目にはおにぎり、二段目には唐揚げや卵焼きといった鉄板のメニューが詰め込まれていた。
何でだろう?けっこう旨そうな弁当なのに、紅葉は不安そうだ。
これ、実は不味いとか?
漫画でよくある設定を思い出す。
俺は唐揚げを一つ手に取ると恐る恐る口に運ぶ。
「美味い!」
「本当!」
嬉しそうな紅葉。
「じゃあ、俺も貰うな。……美味い!」
嶋村も手放しで褒める。
俺たちは、紅葉の弁当で昼食を済ました後も階段で少し語り合う。
食後のドリンクは俺の奢り。
浮いた昼食代と比べれば安いもんだ。
だが、奢るのはもちろん弁当を振る舞ってくれた紅葉だけ。
あとで嶋村からは徴収だ。
紅葉は少し温くなったココアを両手持ちしている。ここは日陰だし、女子にとっては少し冷えるのかもしれない。
嶋村にも、俺たちが友達になったことを話したが、すごく驚かれた。それくらい意外だったってことだろう。
昨日に続き、今日も紅葉と途中まで一緒に帰る。
嶋村は部活もあるし帰るときは一人のことがほとんどだったが、紅葉と友達になってからは途中まで帰るようになっていた。
「どうだ?友達になって、少しは俺のことをわかってきたか?」
「……少しはね」
いい感じとまでは言わないが、悪くはない返事が帰ってくる。
そして、いつもの別れ道、
「じゃあな」
「……」
明日は土曜日。
次に紅葉と会うのは月曜だろう。
とくに問題はない。
「あのさ、日曜遊びにいかない?」
突然の紅葉からのお誘い。
「まぁ、いいぞ。んで、どこにいく?」
「映画でも……いい?」
「おう」
願ったり叶ったりだ。
まだ紅葉と、知り合って日が浅い。
きっと、共通の話題も少ないだろう。
映画で適当に時間を潰し、その感想をいいながらお茶くらいはしてもいい。
事実、槙村とも出会ったころはそんなことを繰り返しながら、お互いを知っていった。
「じゃあ、とりあえず、日曜の十時くらいに駅前に集合な」
「……いいの?」
「お前が誘ったんだろ?そうだ、一応、連絡先聞いといてもいいか?」
「あっ!私……ケータイとかないから」
親の方針なんだろうか?
「そうなのか?じゃあ、俺の番号だけは渡しとくな。くれぐれも変なとこに情報流出させんなよ」
「ありがとう」
「じゃあな」
「うん、……じゃあ」
そうして、俺は紅葉と別れた。
日曜日。
約束通り、駅前にいくと待ち合わせ場所には、もうすでに紅葉がきていた。
秋と言ってもまだまだ暖かい。
彼女は、フレアスカートとカットソウといった格好だ。
「待ったか?」
「全然」
映画は何でもいいと俺が言うと、グログロゲチョゲチョのホラーを選びやがった。
えっ、マジ?
案の定、ストーリーなんて頭に入ってこない。でも、見ないことにはこのあとの会話に差し障る。
ぎゃぁぁぁぁぁぁ。
俺は心で悲鳴をあげつつ耐えきった。
映画館を出ると、隣を歩く紅葉の顔をみるが、ケロッとしている。こいつはこいうのは平気なようだ。
俺たちは少し遅めの昼食を摂るため、食い物屋の多い通りを歩いていた。
昼を過ぎても、大通りに近いせいか人通りもなかなかだ。
「なぁ、あれ山城じゃねえ?」
「?」
山城……って紅葉のことか?
声のした方を振り向くと、同年代の女子が三人いた。
見た覚えはない。
紅葉の知り合いだろうか?
「何?山城の奴、ロリコンと一緒じゃん」
失礼、どうやら、あいつらは俺の知り合いでもあるらしい。……って、どう考えてもあっちのほうが失礼だろ!
だが、俺や嶋村の名前を覚えてなかった紅葉のことを笑えないな。
「あはは、ボッチとロリコン。お似合いじゃん」
「あはは、確かに」
好き勝手に言っているのが耳障りだ。
だが待てよ。ロリコンは俺のことだとして、ボッチって……ひょっとして、紅葉のことか?
隣をみると、紅葉がうつむき加減で震えている。う~ん、状況はよくわからん。
少し整理してみよう。
・紅葉はクラスで好かれていない。評判からすると嫌われているのだろう。
・紅葉は他の教室や通路から死角になる昼食場所を知っていた。いつもあそこで飯を食っていた可能性もある。
・せっかくの日曜日、よくわからん俺なんかと一緒にいる。
・多分クラスメイトだと思われる奴等が言った言葉……ボッチ。
上記を総合する。
あまり察しの良いとは言えないと自負する俺でもわかる。
山城紅葉はボッチ、つまりは一人ボッチ、友達がいないのだ。
見ると、紅葉の顔がだんだん紅潮している。
当たりか。
俺たちを馬鹿にした女子たちが近づいてこようとしているが、このまま指をくわえて待つつもりはない。
となると、やることは1つだ。
俺は、紅葉の手を掴むとダッシュする。
早くこの場を離れなければ。
後ろも振り返らなければ、紅葉の表情もイチイチ確認しない。
通りからは少し離れた公園で、俺たちは一息つくことにした。
並んで手近なベンチに腰を下ろす。
おもむろに紅葉が口を開く。
「……あのさ」
「紅葉、悪かった!」
紅葉が何かを言いかけたが、それを遮って俺が先に謝った。
「何で浩介が謝るの?」
「俺がお前を連れてダッシュしなけりゃ、今頃、文句の1つもあいつらに言うことができたんだ。そりゃ謝ったって当然だろ?」
紅葉がキョトンとしている。
でも、俺はわかっている。あのまま紅葉があの場にいても何も言えず、針のむしろのようになってしまったことを。
「そんなこと私ができるわけないってわかってるくせに……浩介は優しいなぁ」
……あれ、バレてたのか?
だったら、気をつかった分だけ、恥ずかしいじゃないか。まったく…。
「紅葉には、弁当の恩もあるからな」
「また作ったげようか?」
「お前の気が向いたら頼む」
「うん」
そういって笑う紅葉は、全速力で走ったせいか名前通りに顔が真っ赤に染まっていた。
……いつも難しい顔やキツイ顔の多い紅葉の笑顔。それだけなのに、普通に目が離せなかった。
そろそろ秋も深まって行くのかもしれない。
それから、紅葉は週に2度は弁当を作って来てくれるようになった。
紅葉は料理が美味い。
友達になってしばらく経つが、性格もやや思い込みが強い面もはあるが、とくに嫌われるってほど悪くなかった。
この日の昼食は久しぶりに嶋村と二人だ。
紅葉は職員室に用事があるらしく、別行動。
「そういや、嶋村?」
「?」
「お前は、俺や紅葉と一緒にいて平気なのか?」
「どういう意味だ?」
「俺はロリコンって言われているし、紅葉はクラスの奴らに嫌われてんだろ」
「それがどうした?俺からしたら、お前らはいい奴だろ?一緒にいて何が悪いんだ?」
うわっ!
こいつ、何しれっと言ってんの?
聞いてるこっちの方が恥ずかしくなるわ!
「俺は美味い飯にありつけて、面白い浩介と健気な山城を間近で見ていることができる。それで十分だろ?」
「……ありがとな」
初めて嶋村と友達でよかったと思った!
でも、俺が面白いってのもあまり納得はしてなかったが、紅葉の評価として健気ってのも意外だった。
健気ってのは、誰かのために尽くしている奴のことをいうと思っている。料理が得意な奴に気の向いたときに作ってもらっている弁当は違うだろ?
そこまで思考したところで、俺の腹に急に衝撃が加わる。
ぐはっ!
「嶋村、また突然だな?…」
「わかっていない面が、少しムカついたもんでな」
嶋村が唐突に俺の腹に一発叩き込んできたのだ。
嶋村は、自分の感情だけでそんなことをやる奴ではない。きっと、俺が知らないうちになにか余計なことを言ったかやったんだろ。
「そういや、何で紅葉はあんなにクラスの連中に嫌われてんだ?」
「それは……」
嶋村は言いかけてやめた。
「山城、本人に聞いてみたらどうだ?」
「そうだな」
自分の知らないところで、自分の過去の話を探られるのは気持ちの良いことではないだろう。
「それより、お前は山城にちゃんと言っているのか?」
「何をだ?」
本当にわからない。
「そのお前が好きだといっていた12歳の子のことだ!」
「揚羽のこと?そりゃ……」
思い返して、おやっと思う。
俺は、ちゃんと紅葉に揚羽のことを言ったことがあっただろうか?……いや、ない。
「浩介、その顔は言ってなかったっていう顔だな」
よくお分かりで…。
「ちゃんとしとけよ」
そんな嶋村の言葉だけが俺の脳裏に残った。
その週末。
俺は紅葉を誘った。
「なぁ、少し話していかないか?」
「いいけど、どうしたの改まって?」
紅葉は不思議そうに聞いてくる。
俺らは、落ち着いて話せる場所に動く。
揚羽ともきた喫茶店だ。
懐かしい。
俺は前に座った席とは違う場所に腰を下ろす。
さてさて、なんて切り出すものか…。
なんて考えていると、
「ねぇ、浩介。ひょっとして大事な話だったりする?」
「まぁ、俺にとっては大事な話だ」
「そうなんだ」
嘘は言っていない。
揚羽のことは今も俺の中で一番大事な思い出だ。
「前にチラッて聞こえた、12歳の子のこと?」
「ああ」
「そっか…」
それにしてもこれは良い流れだ。
紅葉のほうから、切り出してくれたのなら、俺のほうも話しやすい。
「えーとだな」
「ちょっと待って!!!」
いきなり紅葉が俺の言葉を遮る。
何だいきなり?
「浩介の話の前に私からも話したいことがあるの。先に話していい?」
紅葉が俺に話?
なんだろうか?
「別にいいぞ」
「ありがとう。ねぇ、浩介、私の過去に興味がある?」
「それは……ある」
こうして、一緒に過ごすようになっても、やっぱり紅葉は悪い奴だとは思えない。なのに、何でクラスの奴らに嫌われているのか。
そして、紅葉は話始めた。
始まりは、よくあるような恋ばなのようだ。
「最初はさ。私も協力するつもりはなかったけど、友達だと思っていた子の頼みを断りきれなかった」
「そんで、どうなったんだ?」
「相手の男に情報を収集するために、近づいたらどうやら私のほうを気に入っちゃったらしくて」
本当によくある話だった。
だが、結論が違った。
「その子、自殺未遂しちゃったんだよね。理由は、その子が私と比べて、どんだけ劣っていたのかを男に罵られて、ひどいフラれかたをしたの……私の目の前で」
「……」
「あとは、ぐちゃぐちゃ。男のほうは自分に責任はないって捲し立てるし、もちろん、私も自分に責任はないって思った」
「じゃあ」
俺は思う。
この話のどこに紅葉に責任があるのだろうかと。
「でも、その子が用意していた遺書には私の名前しかなかったから」
「!」
俺が思うに、それはひどい話だった。
「それからは、浩介の知ってる通りの学校生活の始まり」
「……紅葉」
「でも、同情はいらないよ」
どうやらこいつは俺の話を遮ることが上手いらしい。絶妙のタイミングだ。
「だって」
「ん?」
「だって、浩介に会えたし」
「えっ!俺?」
「浩介がカフェで私に言ってくれた妥協案を覚えてる?」
「友達になってくれってやつか?」
「そうそれ。あれ、嬉しかったな~」
紅葉が本当に嬉しそうに振り返っている。
この時になって改めて思う。紅葉はよく笑うようになったと。
「私が一人でお昼を食べてた場所を見せたときも、いい場所だっていってくれたしね」
「実際、そう思ったんだ仕方ないだろ」
「あれで、どれだけ私が救われたことか……」
紅葉が噛み締めるように、言葉にする。
「浩介、私と友達になってくれてありがとうございます」
紅葉が丁寧に礼を言う。
「俺の方こそ、ありがとな。いくらお前が料理が得意といっても、あんなに弁当を作ってもらって感謝してんだぜ」
「……得意なんかじゃないよ」
紅葉が呟く。
「ほんとはさ、全然得意とかじゃないんだよ。いつも準備に前の日から取り掛かって、結構大変なんだから」
「そうなのか?」
「そうだよ。見て、この勲章の数々」
紅葉の細い指は、切り傷でいっぱいになっていた。
俺は知らなかった。
「じゃあ、なんで私が苦手でも頑張ってお弁当を作っていたのか、浩介はわかってないよね?」
「ああ」
紅葉は、しょうがないなって感じで優しく笑っている。苦笑なのかもしれない。
「ほら、覚えている?映画を観に行ったこと?私の手を取って逃げてくれたこと?」
もちろんだ。
あの時、クラスメイトから逃げ切った後に見せてくれた紅葉の顔は今でも忘れられない
「もちろん、覚えているぞ」
「あれからかな?私の中で、浩介は……特別になったんだから」
特別って、なんだ?……なんて聞ける雰囲気でもない。
「でも、私って魅力ないからね」
紅葉がハァってため息をつく。
「そんなことはない!」
俺は珍しく大きな声を出す。
こんな声を出したのは、ホントに久々だ。
「紅葉は十分魅力的だと思うぞ。たしかに最初はなんだこいつって思ったさ。ああ、思った。でも、友達になって一緒に過ごすうちに、なんて良い奴なんだって思うようになったんだから」
「やっぱり、浩介のほうこそいい奴じゃん」
「もし、お前を悪く言う奴がいたら、俺がぶん殴ってきてやる!」
もし、ここに紅葉と友達になる前の俺がいたら、ぶん殴ってやるやるところだ!
「暴力はダメでしょ」
そういって笑う紅葉は、本当に可愛い!
…だが、俺は受け入れるわけにはいかない。
「あのさ、紅葉……」
「わかってる。大事な子がいるんでしょ?」
「ああ」
「揚羽ちゃんだっけ?」
俺が肯定すると同時に、紅葉が名前を言い当てた。どう言うことだ?
「へっ?なんでお前、揚羽の名前を知っているんだ?」
「さーて、何ででしょ?因みに、これなーんだ」
紅葉が俺に見せてくれたのは、まだ新しいスマフォだった。話を聞くと、友達の自殺未遂以降怖くて持てなくなっていたそうだ。
良かった、心からそう思う。
「ん?」
よく見ると画面は通話中だ。
「紅葉、通話中になってるぞ?」
「浩介、ちょっと耳に当ててみて」
「?」
不思議に思いながらも、紅葉からスマフォを受けとると、耳に当てる。
声が聞こえる。
『もしもし』
まだ幼さの残る少女の声。
忘れるわけない。
間違えるわけない。
それは、揚羽の声だった。
俺は驚きとともに、嬉しさが込み上げてくる。……でも、なんで?
俺は目の前の紅葉を見ながら、声を出せずにいた。
「紅葉、揚羽の声だ……」
唯一、絞り出すことができたのはそんな一言だった。
「よかったじゃん」
「紅葉、お前、なんで……」
紅葉はドッキリ成功とばかりに喜んでいる。
「嶋村に色々聞いてね。やっぱりさ、悪いとは思っても知っときたいじゃん」
「…………」
「特別な奴の……好きな子のことは…」
紅葉のいう、特別な奴ってのは俺のことだろう。これは勘違いでもなければ、自惚れでもないだろ。
だって、その証拠に、この電話の向こうに、は揚羽がいるんだから。
俺は、久しぶりに揚羽と話をした。
時間にして、ものの数分だったろう。
「どうだった?」
「驚いた」
「で、なんで揚羽ちゃんと会わないの?」
紅葉が有無をいわさない強い瞳でみつめてくる。だが、今の俺にはその強さの中に、優しさがあることを知っている。
そして、俺は言った。
揚羽と夏休み最後の日に交わした言葉。
もう会わなくても良いんじゃないかという気持ち。
今まで隠してた、目をそらしていた、揚羽が死ぬのを間近で見たくないという気持ちも!
それらを全て語った。
全てを聞いたあと、紅葉が口を開く。
「バッカじゃない?」
慰めの言葉を期待というか予想していた俺は、想定外の罵倒に泣きそうだ。
「それひどくないか?」
「全然酷くない。だって、彼女、揚羽ちゃんは今も生きてるんでしょ?」
「ああ」
「だったら、いいじゃん。会えばいいじゃん。ここでこうしてウジウジしてないで、二人の時間大事にすればいいじゃん。浩介が言っていたのは、全部あんたの気持ちでしょ?」
たしかに。
今の揚羽の気持ち……。
俺は考えようとして、すぐにやめる。
きっと、このまま考えても出てくるのはどれも俺の考えでしかない。
「どうせ、今の揚羽ちゃんの気持ちはわかんないんでしょ?……だったら、浩介はどうしたいの?」
「……俺は、確かめたい。揚羽の気持ちを」
「このメモに揚羽ちゃんのいる病院の場所と病室書いてあるから」
「!」
「浩介、なんも言わなくていいよ。……だって、私たち友達じゃん」
「……わかった。紅葉、ありがとな」
紅葉は、出ていこうとする俺の後ろ姿を見送る。
「それでこそ、私の大好きな浩介だ」
最後に紅葉が何かを呟いたような気がしたが、今は気にしない。
ただ、紅葉に悪いことをしたとは思っている。
嶋村がいたら、腹パンしてもらうとこだ。
喫茶店を出ると、外には嶋村がいた。
あえて、なんでここにいるんだなどとは聞かない。
嶋村は全部知った上で協力してくれたのだろう。
「よぉ、浩介、帰ってきたら腹に一発いっとくか?」
「おう、世話かけたな嶋村。帰ってきたらドギツイやつを一発頼む!」
俺は、揚羽のいる病院へとダッシュした。
俺はもう迷わない。
揚羽に残る時間も気にしない。
今あるものを大事にしていく。
今頑張れることは、全部頑張る!
でも、それでもヘタレな俺のことだ。尻込みしたり、間違ったりすることもあるだろう。ただ、なんかあったとしても、大丈夫と今なら言える。俺には頼りになる友達……いや、親友たちがいるから。
もし、読んでくれました方がいましたら、ありがとうございました。




