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ここは、数百年もの寿命を持つ、長寿の人々が暮らす世界。
東西南北に広がる土地を各地の長が統べ、さらにいくつもの里を造り出していた。
北は碧、西は紫と黄、南は茶。そして、東は紅と藍――色の名を冠する彼らは、遥か昔から"英雄"の一族として、民に慕われ、民を守り、各地を治めてきた。
碧、紫、黄、茶、紅、藍――六家は色の名を拝したその時から、固い絆で結ばれ、手を取り合って共に生きてきた。
しかし、それにもかかわらず、とある一族は崩壊する。
彼らにとって誇りとなった色の名を作り、それまでのすべての争いを収束させ平穏をもたらした"賢者"の血を引く一族の崩壊に、彼らは困惑し、悲鳴を上げた。
そして同時に、彼らの異変に気付きながらも、気付いた時には既に手遅れだったことに酷く悔やみ、自らを責めた。
後年、すべての情報を断絶し、一族以外の接触を絶やさせ、隔絶した里で起こったことは、語り継がれることもなく、憶測だけが飛び交った。結局、真実は明るみになることはなかった。
ただ、滅びた一族の名は――藍の名は、今もなお、人々の心に深く浸透している。
現在、東を治めているのは紅の一族。長く藍の一族と共にこの地を守ってきた彼らは、武に長けた一族である。
藍家の右腕とも呼べる彼らの存在は、この地にとって唯一の光だった。
それ故に、彼らは悲しみや後悔に浸る間もなく、藍の一族の崩壊の収束や東を統べるための問題に奔走することになる。
そして、落ち着きを取り戻して十数年、彼らはやっと"真実"と向き合うことになるのだった。
これは、東を統べる紅と藍の物語―――。