ヘビと炎
川辺に焚火が燃えていた
チカチカ・チカチカ
しかし、人は居なかった
チカチカ・チカチカ
見捨てられたのだろうか?
理由は分からない
チカチカ・チカチカ
そこに一匹のヘビがやって来た
ニョロニョロ・ニョロニョロ
ヘビは焚火に話しかけた
「やぁやぁ、火の粉さんよ、今日は良い天気だね」
「ヘビさんか、天気なんてどうでもいいよ」
「どうしたんだい?」
「君は動けるからいいじゃないか」
「動ける?」
「あぁ、ぼくは生まれた時から動けない。灰となって死んでいくんだ」
「そうかい」
「君が羨ましいよ」
チカチカ・チカチカ
「でも、僕も大変なんだよ」
「そうなのかい」
「食べ物は自分で見つけないといけないよ」
「そうかい」
「君は人から養ってもらってるじゃないか」
「そうだけど」
「それに外には天敵がいる」
「天敵?」
「そうだよ、僕を食ってかかろうとするやつがいるんだ」
「そうなのかい」
「外で生きるというのは、そんなに簡単じゃないんだよ」
ニョロニョロ・ニョロニョロ
「ぼくは昔、大炎になりたかったんだ」
「大炎かい」
「煌びやかな炎、皆を魅了する炎」
「そうかい」
「残念だけど、そうはなれなかったよ」
「そうかい」
「ぼくはちっぽけな炎さ」
チカチカ・チカチカ
「でも、君は僕を温めてくれてるよ」
「役に立ってるかい?」
「あぁ、もちろんさ。外は寒い。とても役に立ってるよ」
「だと嬉しいな」
チカチカ・チカチカ
「君はこうなりたいとか無かったの?」
「僕は無いかなぁ」
「そうかい」
「生まれた時からヘビだから。それ以上でもそれ以下でもないよ」
「そうなんだね」
ニョロニョロ・ニョロニョロ
「何か嬉しかったな」
「何がだい?」
「最後に君と話すことが出来て」
「最後?」
「あぁ、ぼくの家主は帰ってこない。ぼくはもう死ぬんだ」
「そうかい」
「木をくべる人が居なければ、ぼくは生きていけない」
「そうかい」
「一人じゃ生きていけないからね。最後に、君と話せて良かったよ」
チラチラ・チラチラ
雪が降って来た
粉雪だ
「じゃあ、僕が木をくべようか?」
「君がかい?」
「あぁ、君の苦しみも少しは分かるしね」
「いいのかい?」
「もちろんさ」
「嬉しいよ。君は命の恩人さ」
「僕もだよ。君といると心が温まる」
チラチラ・チラチラ
粉雪は焚火に吸い込まれた
そして、星くずのような火の粉を放った
一面、銀世界
そこにある小さな炎
それを優しく見守るヘビ
世界の片隅には
こんな世界もあるんですね




