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異変

 何処かから聞こえてきた音を確かめに向かった。アメリアは置いていきたかったが、手を離してくれず、仕方なく連れていく事にした。


 受付場に行ったが、入り口は外側から鎖で施錠されている。ここから音が聞こえたわけじゃなさそうだ。一階にある部屋の窓や、ゴミ捨て場など裏口がある場所を見て回ったが、人が通った形跡は見当たらない。道中見かける事や、ばったり出くわす事もなかった。 


 階段を見上げた。あの音は、一階より上の階から聞こえてきたのだろうか。窓が割れた音には聞こえなかったが、もしかしたらそうなのかもしれない。それならそれで、余計な心配事を抱える必要は無くなる。


 階段を上って二階に着いた。部屋を見回ったが、何処にも窓が割れたような部屋は無い。


 階段を上って三階に着いた。アメリアに連れ込まれた部屋の割れた窓から吹雪が舞い込み、部屋の半分が雪景色となっている。だが音が聞こえたのはさっき。ここから聞こえた音じゃないようだ。


 階段を上って四階に着いた。今朝見回った時同様、この階の部屋の扉は厚い板で塞がれている。部屋の中を確認出来ないが、聞き耳立てて部屋の中の音を聞いてみたが、吹雪が窓を叩く音しか聞こえなかった。


 階段を上って五階に着いた。この階は部屋が少なく、扉にスプレーでバツ印が描かれている。ほとんどがドアノブが外れていて、唯一ドアノブがある部屋の扉には鍵が掛かっている。聞き耳を立ててみたが、この階も吹雪が窓を叩く音しか聞こえない。


 全ての階を見て回ったが、何処にも異常が無い。あの音は物が倒れた音だったのだろうか? 部屋の中を一々憶えていないから、一つくらい変わっていても気付けない。


 何はともあれ、音の正体が分からなかった。分からなかったのなら、気にしないでおこう。ここまで探しておいてなんだが、音の正体を突き止めた所で何も得にならない。


 僕はアメリアを連れて一階に戻ろうした。


「あぁー」


 今の今まで手を引かれるがままについてきたアメリアが立ち止まった。


「どうした? 何で歩かない?」


「あぁー」


 奇声を発しながら、アメリアは人差し指を立てて、階段の上を指した。


 この上の階は屋上だ。ただ屋上への扉は頑丈に施錠されていて、いくら猛吹雪といえど開く事はない。仮に人間が道具を使ってこじ開けようとしても、開く事は出来ないほど頑丈だった。


 だから、屋上には何の異変も無い。


 そう思った瞬間、嫌な予感がした。


「……」


 屋上へといく階段を見上げた。この階段を上っていけば、屋上へと通じる扉がある。何の以上も無いのなら、気にしないでおけばいい。それは分かっているが、それ以上に確信出来る嫌な予感が屋上からする。


 意を決して、階段上り始めた。一段、また一段と上る度に、嫌な予感は更に増していった。これ以上進むなと言う防衛本能と、自然と屋上へと進む足が混在している。まるで操られたようだった。


 中間地点まで上ると、一気に寒気がした。この階段を上り切った先に、屋上の扉がある。頑丈に塞がれた扉だ。厚い板も鎖もあって、絶対に開けられない扉だったはずだ。


 なのに、この階段を上った先から吹雪の音が聞こえてくる。漂う寒さとは別の冷気が流れてくる。


 一段、また一段と階段を上っていった。自分の足を見ながら上っていった。


 あと三段という所で、異変が目に映った。階段に雪が積もっていた。吹雪の音と冷気がより一層強く感じる。


 階段を上り切り、ゆっくりと顔を上げて屋上の扉を見た。


 


 屋上の扉はこじ開けられていた。

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