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赤い髪と青い瞳

 天気予報通り、月曜日の朝からずっと雪が降り続けている。家の前を雪かきする人間もいれば、近所の家の雪かきをする親切な人間までいた。道には除雪車が朝昼晩と一回ずつ通り、除雪車が通った後、一時間ですぐに雪が積もり始める。


 それから、宅配の人間をよく見かけるようになった。前々から宅配を利用する人間はいたが、今はほとんどの家が利用している。原因はきっと、この近辺で連日起きている惨殺事件だろう。みんな外に出るのを恐れているんだ。


 道を歩いていると、選挙の時とかに使われる掲示板に注意喚起の紙が何枚も貼られていた。雪で数枚濡れて読めなくなっているが、濡れないように対策されてある紙には同じような内容が書かれてある。


【見知らぬ人物に注意を!!!】


【鍵を開ける前に確かめて!!!】


【アナタの家族も狙われている!!!】


 惨殺事件について書かれているのだろう。注意を促すのはいいが、これでは怖がらせるだけだ。最悪の場合、人間同士が疑心暗鬼になりかねない。


「こういうの有難迷惑って言うのか? それとも余計なお世話?」


 前に背負ってるカバンの中にいるクロに語り掛けた。クロは興味が無いのか、狭いカバンの中で器用に 毛繕いをし始めた。動物からしたら、人間の間で起きている問題なんてどうでもいいのだろう。


 コイツらにとって重要なのは毎日の餌と寝床。ペットとして飼う人間と、飼われてあげているペット。一体どちらが利用し、利用されているのか。暇な時に考えて時間を潰せるな。


 公園に辿り着き、ベンチに積もった雪を払って座った。一息ついていると、カバンに入っていたクロが顔を出し、僕を見つめながら鳴き声を発した。背負っていたカバンを足元に置くと、クロは自分でカバンの中から飛び出し、僕の膝の上で丸くなった。


「段々とお前が何をしてほしいか分かってきたよ」


 クロと過ごしてまだ三日しか経っていないが、入浴とトイレ以外は一緒に過ごしているおかげで理解できるようになってきた。何をしてほしいかはもちろん。キャットフードよりも人間の食べ物の方が好き。耳の裏を掻いたり、お腹を軽く叩いてあげると喜ぶ。


 逆に嫌いな事は、僕が危ない事をしそうな時や、入浴とトイレ以外で離れてしまう事。 


 総じてクロは、人懐っこくて手が掛からない賢い猫だ。清水さんが置いてった時はクロをどうしようか悩みはしたが、とりあえず捨て猫にするつもりはない。鶴が戻ってきても飼い続けていたいが、鶴が了承するかどうかは不安だ。


 膝の上に乗っているクロの温かさに安心しきっていると、急にクロが今まで聞いた事も無い唸り声を上げた。見ると、毛を逆立たせ、細い尻尾を太く立たせている。


 クロが凝視している方へ視線を向けると、公園の隣にある一軒の家。その家の屋根の上には、人間と思わしき者が直立していた。顔や正確な背丈は分からないが、白い雪景色の中で異様に目立つ赤い髪と青い瞳をしている。


 何をしているのかは分からないが、僕をジッと見ているような気がして気味が悪い。


 だが不思議な事に、僕はアレを気味の悪い人間だと思う一方で、憐れにも思っていた。可哀想で可哀想で憐れんでしまう。そう思ってしまうのは、遠目からでもよく分かる綺麗な青い瞳の所為だろうか。


「……帰ろうか。クロ」


 クロがカバンの中に入ろうとしないので、カバンを後ろに背負って、クロを抱いて家に帰った。家に入る時まで、クロは終始唸っていた。


 その夜、また惨殺事件が起きた。事件が起きたのは、あの赤髪の人間が立っていた家だった。

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