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不明確

 泊まり込みを想定した勉強会は初日で完了した。残るは日記だけだが、こればっかりは未来予知でもない限り終わらせる事は出来ない。


「全部終わっちゃったね……どうしよっか?」


「解散でいいんじゃないですか? 目的が完了したし、無理して泊まらなくても」


「でも、せっかくだしお泊りしたいじゃーん! しようよ! 一緒に晩ご飯食べたり、一緒にお風呂入ったり、一緒のお布団で寝たりさ!」


「僕が男子って忘れてませんか? 真面目さんはどうなの? 僕達に泊まってほしいの?」


「清水です。まぁ、別に泊まっても構いませんが。元々そのつもりでしたし」


「やった! じゃあ、これから皆で晩ご飯の料理作ろうよ! その後は皆でお風呂!」


「「それは却下」」


 アメリアの強い要望もあり、惰性で泊まる事になった。


 キッチンで晩ご飯のメニューと担当を決めている二人の間に立っていると、アメリアにリビングのソファへと追い出されてしまった。食材を切れる程度の無能は引っ込んでろって意味だろう。仕方なく無能の評価を受け入れてやるか。


 待っている間、リビングに置かれている物を見渡してみた。真面目さんの部屋同様、リビングも必要最低限の物しかなく、大きな棚には沢山の本が並べられている。


 そこが気になった。ここには真面目さん以外の誰かの趣味や置物が無い。部屋はともかく、リビングには住んでる人の物が並べられてるはず。なのに、ここには、この家には、真面目さん以外の人が住んでる証拠が無い。家族の写真はおろか、親が飾るであろう娘の真面目さんの写真すら見当たらない。


 キッチンで料理をしている二人に黙って、僕は玄関へと向かった。靴棚の中を見てみると、たった四足しか無い。例え片親だったとしても、四足は少なすぎる。


 妙な好奇心が湧いてきた僕は、家にある部屋を調べ回った。僅か一分もしない内に全ての部屋を調べ終えてしまった。特にこれといった感想もなく、異彩を放つ部屋があったわけでもない。それがおかしかった。


「他人の家をコソコソと見て回るなんて、良い趣味をしてますね」


 二階の空き部屋から出た廊下で、真面目さんとバッタリ出くわした。真面目さんは僕が勝手に部屋を見て回っていた事に嫌味を言いつつも、表情や態度は平然としていた。


「料理は? まさか、もう出来たの?」


「いえ、二人でやる必要がなくなったので、後はあの人に任せてきました」


「そっか。何の料理を作ったの?」


「カレーです。サラダも作ったので、ちゃんと食べてくださいね」


「大丈夫。僕、好き嫌いは無いから」 


「そうですか」


 どうしてだろう。僕は真面目さんを警戒している。何を警戒しているのかは自分でもよく分からないけど、真面目さんから目が離せないし動けない。


「気になりますか?」


「何が?」


「木田君が覚えてる疑問の答え」


「……真面目さんは、話したいの?」


「……出来れば、勘繰らないでいただきたいです」


「そっか。うん、分かった。ごめんね、勝手に調べ回るような真似して」


「こちらこそ。気を遣っていただき、ありがとうございます」 


 そうして僕達は一階のリビングに戻った。モヤモヤするけど、それを晴らす為に真面目さんに無理強いして聞くのは友達として間違ってる。誰にだって聞かれたくない事や悟られたくない事はある。それは僕が一番よく分かってるはずだ。


 晩ご飯のカレーはとても美味しかった。特にカレーが甘口だった事が嬉しい。甘い物は苦手だけど、逆にカレーは甘口以外得意ではない。


「美味しかったね! やっぱりカレーは甘口だよね~! じゃあ次は皆でお風呂だね!」


「流れで強行しようとしないでください。僕は最後に入るので、女性のお二人が先にどうぞ」


「しょうがないな~。じゃあ清水ちゃん! 一緒に―――」


「私は二番目で結構です。ゆっくり一番風呂を堪能してきてください」


 露骨に落ち込んだ様子で、アメリアは渋々リビングから出ていった。


「どうしてああも一緒に入りたがるんだろう……?」


「まぁ、彼女は親元から離れていますからね。きっと寂しいんですよ」


「じゃあ同性の真面目さんが一緒に入ってあげなよ」


「清水です。一緒に入ってもいいのですが、入浴中に体をイジられそうなのでやっぱり嫌ですね」


「分かる~」


「でも、木田君となら構いませんよ。木田君が望むのなら」


「僕って変態に見える?」


「変態、というよりかは、変人ですね」


「真面目さんも大分だけどね」


「清水で―――聞き捨てならない事を言ってくれますね。私の何処が変に見えるのでしょうか?」


「改めて聞かれると、そうだな~……なんか、よく分かんない所? 何が分かんないかは自分でも分からないけど」


「随分と曖昧な答えですね」


 実際、真面目さんについて分からない事が多い。内面的にも、それ以外でも。


 どんな物が好きか。


 趣味は何なのか。


 将来の夢。


 真面目さんの過去。


 友達の事を何にも理解出来ていない自分が悪いとも思うし、何も教えてくれない真面目さんも悪いと思う。僕の事だけを真面目さんに知られて、真面目さんの事を僕は何も知らない。


 僕と真面目さんの関係は、どういう関係なんだろうか。

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