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第2話・復活(挿し絵付き)

'25.9/30

勇者・癖毛の金髪設定の追加

魔王・両側頭部に角が生えている設定の追加

一.

本編に入る前に封印魔法というのを少し説明しておこうと思う。封印魔法というのは対象人物、或いは物体を世界……というより空間から隔離するものと言われている。ゆえに結晶で包まれた存在が第三者に視認されることは無い。


封印期間は術者の魔力量を元に『設定』で決めることが出来る。術者が近くに複数いればその総合魔力量で期間を設定出来る。


今回、封印する際にリューはライオネルに近くに寄るように指示をした。これは単に封印の漏れ溢しを防ぐためではなくライオネルの魔力も使うためである。


しかし誤算が生じた。ライオネルには魔力を一滴たりとも持っていなかったのである。無論、100年の封印くらいリュー単独でも可能だった。しかしライオネルとの死闘を経て魔力が減少した今、100年の封印は途中で設定解除されてしまった訳である。


そのような訳で誰も知り合いのいない100年後の世界ではなく、中途半端に知り合いがいる(恐れがある)50年後の世界に再び現れてしまった二人であった。 


二.

「……ライオネルよ。さてどうするかのぉ」


口元をベタベタにしたもとい、されたリューがライオネルに訊ねる。50年の間、封印されていたとはいえ、当人達には瞬き一瞬分の感覚でしかなかった。その為に封印直前に行われた行動が再開された訳である。


「とりあえず王都に向かうというのはどうか?こんな辺鄙なところにいるよりかはマシだろう」


落ち着いた表情で、しかし頬に紅葉マークを映したライオネルが答える。興奮が収まらずそのままの流れで服を脱がそうとしたライオネルにリューはライオネルの頬にビンタをかました訳である。


そのお陰でライオネルは冷静さを取り戻した訳で二人はようやく現在の状況を理解し会話をするに至った。


「にしても封印をした場所と解かれた場所は同じ……ということは本来ここには魔王城が有ったはずじゃが……」


リューは辺りを見渡すが周りは広大な草原しかなく、かつては恐怖の象徴とさえ言われた魔王の居城は存在しなかった。その代わりに……。


「まさか俺のでけぇ石像が建っているとは……」


魔王城跡地にはライオネルの石像が建っていた。その大きさは50mを超え右手で持っている剣は頭上に向け天に掲げている様相だった。


「笑えるのぉ」


リューが看板を読みながら静かに言う。どうやら石像の由来やらが書かれているようでライオネルもリューの後ろに立ち看板を見る。……どうやら石像の原材料は倒壊した魔王城らしい。


「人間のすることは笑えるのぉ」


いつの間にか看板ではなくライオネルを見るリューに思わず目を逸らす。すると逸らした先に新たな看板が置かれていることに気付く。


「あっ!あそこにも看板があるぞ!」


ライオネルは必要もなく駆け出した。リューがライオネルに追い付いた時、ライオネルは既に看板を読み進めていた。


「どうやらこれは王都までの地図らしい。どうやら東に向かえば辿り着くようだ」


「そ、そのよう、じゃな……」


肩を上下し荒い呼吸をするリューにライオネルが声を掛けるがリューは手の平を出して心配無用と制止させる。それから10回ほど呼吸をして幾らかマシになるとリューは深く息を吐きライオネルに顔を向ける。


「そんな心配するでない。ワシは魔王じゃ。動かざること魔王の如しという言葉が有るように走ったのは久々じゃから呼吸が乱れるのは仕方ないことじゃ」


───要は運動不足か


そんな言葉が喉から出かかったライオネルであったが余計な言葉で再びリューを怒らせ呼吸を乱すのはどうかと思い別の言葉を吐き出すことにした。


「それよりもだ。心配するべきことは他に有る」


「他の心配ごと?」


リューは首を傾げた。


「50年前……魔族と人間は互いに争っていた訳だが……」


ライオネルは語る。魔王と勇者がいなくなった今、恐らく互いに争うのは止めているだろう。しかし長年の戦争で積もりに積もった怨みは簡単に消えることは無い。故に100年ほど封印されようとした訳だったが計算違いで50年で解かれてしまった。


「まだ魔族の怨みが民衆の心から消えていない……そんな状態で王都に出向けばリューの身が心配だ。話を振っておいてなんだが王都は止めて田舎に行くことを提案する。農業でもして穏やかに過ごそう」


「まぁ待てライオネルよ。確かにワシは人間を超えた可愛さを持っているが見た目は人間そっくり。バレることはないぞ」


ライオネルは悲しい表情を隠すために顔を伏せる。


「リュー。人間はな頭に角なんて生えていないんだ。君の隠すことが出来ない程の立派な角を他の人が見たら……」


「む?角のことか。これなら取れるぞ」


リューが両手で角を掴むと<キュポッ>と小気味良い音をして角が側頭部から分離した。


「それって取れるの!!??」


「断面に魔力を込めると好きな所に接着できるのじゃ。魔族で流行りの化粧品(コスメ)で……まぁ今は違うと思うがの」


そんな説明をしながらリューは外した角を一瞬名残惜しそうに見つめると草むらに放り投げる。


「なんだ捨てるのか。片方は無事なんだし勿体無くないか?」


「もしもじゃ。予想される今の世相でワシが持ってる所を見られでもしたら危ない目に遭うかもしれないじゃろ?凶事の種は予め捨てておいた方が良いのじゃ」


「そうか……」


言葉はいつもの様に軽やかな言い回しだがどこか寂しそうな空気を背中から醸し出している。そんな湿っぽい空気を感じ取ったのかライオネルもおとなしめに相づちを打つ。


だが、リューが振り返った時にその様な湿度は消え去った。天使のような顔をしてはにかんでいたからだ。


「だがそうじゃの……。今の時代でも流行っていたら新しい角を買ってくれなんし♪」


「買う~♪給料3ヶ月分の角を買う~♪」


リューの可愛さMAXおねだりにライオネルは1オクターブ高い声で了承した。実にちょろい男である。そんな夫婦漫才もほどほどに2人は王都に向けて歩きだした。

挿絵(By みてみん)


三.

50年前、魔王城跡もとい『勇者像』から王都までの道のりは畦道の様な未舗装の道路であった。しかし封印された50年の間に王国は道路を整備。現在は馬車2台分、幅4mの石畳で舗装されている。


その上を二人は王都に向けて歩いていた。一人は心配そうな顔を、一人は死にそうな顔を。


「な、何でじゃ……何で徒歩で王都まで行かねばならぬのじゃ……」


「だって仕方ないじゃないか。封印魔法のせいでリューは魔力が枯渇している。俺はそもそも魔力を持っていない。ならば歩くしかないじゃないか」


「うあー!もう嫌じゃ歩きとうないんじゃ!あの場所で休んでからにすれば良かったじゃろ!」


「野宿は嫌だから宿に行きたいと言ったのはリューじゃないか」


「そんなこと言ったっけ?記憶に無いのじゃ」


「まぁ現代の金なんて持ってないからどのみち宿には泊まれないけどね」


「むー!」


正論は時として鋭い刃として人を傷つける。魔族とて例外ではない。対話を拒否し始めたリューは座り込んで抗議をした。


手を引いて動かそうとするがその場から動こうとしないリューにライオネルは散歩を拒否する柴犬が脳裏に浮かんだ。


諸々を考えたライオネルはリューの前に座り背中は差し出した。先程まで頬を膨らまし不機嫌を表現していたリューは途端に笑顔になりライオネルの背中に飛び乗った。


二人は歩みを再開する。


「良いぞ!良いぞ!」


今は旦那とはいえ勇者ライオネルには散々苦渋を嘗めさせられていた。そんな男に自身をおぶらせるという現実にリューは興奮。上機嫌のリューにライオネルは静かに微笑みを返した。


なおライオネルのこの行為は100%の善意だけではなかった。微笑みの裏に有る思惑をリューは知らなかった。


───計画通り!


リューに悟られぬ様にライオネルはニヤリと(リューには微笑みと解釈された)笑みを浮かべる。


頭の114.514%が煩悩に支配されているライオネルはリューをおぶる際にある計画を練っていた。それはどさくさに紛れてリューの乳と尻を堪能しまくるという計画だった。


リューの服装は全身をローブで覆われている。その為、皮膚が露出している部位が頭と手くらいしかなく、それ以外は身体の輪郭すら分からなかった。


その様な秘密の花園を妻とはいえ無遠慮・無思慮に暴こうとすればディープキスの一件と同様、頬に新たな紅葉を咲かせることは必定。バレない様に機会を伺っていた。


そして到来したチャンスをライオネルは見逃さなかった。リューの身体を支えるという名目で両手は臀部を掴み、身体を安定させるという名目で背中に胸を押し付けさせる。


───なんと甘美な女体かな。背や露出している手、足音から肉付きが少ない細身の女体とは想定してはいたが……少ないがちゃんと成長した女性らしく主張しているじゃないか!


リューに嫌われたくないライオネル気付かれない様に静かに歓喜する。だが好きな女の体に触れ我慢が出来るものか?キスだけでも無理だったのに。


興奮が少し冷めたリューは違和感に気付いた。先程まで石畳の上を歩いていたライオネルが道から外れ森の方を歩いていたことに。


「む?ライオネルよ道から外れておるぞ」


ライオネルは答えない。


「そっちは森じゃ。宿など無いぞ」


ライオネルは答えない。


「もしもーし!」


リューはライオネルの頭を揺さぶるが答えない。


気が付くと周りは鬱蒼とした森の中。周囲からは見つけることが出来ない場所に立っていた。ライオネルはリューを抱きながら背中に付けている褐色のマントを取り外すと地面の上に敷いた。その上にリューを仰向けに寝かせるとライオネルはその上に自らの身体を覆わせる。


───待つのじゃ!せめて初めては甘い言葉を言われながらベッドの上で処女を捧げたいと思おておるんじゃ!


そう叫ぼうとしたがリューの口をライオネルの手が塞ぎ一切の反論・要望を許さなかった。告白前の殺し合いをしていたオラオラ系のライオネルを思い出し───まぁこれはこれで……と別種の胸の高鳴りを感じつつ来る衝撃に備え目を閉じた。


しかし少し待っても股に衝撃は来ない。それどころかローブもずらすことさえしない。何事かと思い恐る恐る目を開けるとライオネルはリューを見ずに顔を上に向けて正面を見据えていた。


リューも頭を上にしてライオネルと同じ方向に視線を向けるとそこには柄の悪い男の集団と縄で縛られ座らされている女性らしき人物が一人がいた。


座っていた女が馬車に放り込まれるのを確認すると男達が下卑た表情をして嗤う。ひとしきり嗤うと男達も荷台に乗り込み馬車を走らせた。そんな様子をライオネルは眺めていた。


「あれは……」


「恐らく盗賊だな。身代金か人身売買か……目的は分からんが女にとってはどちらも不幸な結末を辿るだろう」


「助けるのか?勇者として」


ライオネルは馬車が走り去った方向に視線を向けたまま妻の顔を見ず、質問に無表情で答える。


「俺はリューに告白した瞬間から勇者という称号は捨てたよ。今の俺に『魔を挫き人を助ける』なんて心構えは無い」


「なら放っておくのか」


うーん……とライオネルは唸りながら顎に指を当てて分かりやすく悩む。幾瞬か間を置いて顎から指を離した時、ライオネルは妻の顔に視線を向けて答えた。


「いや、ついでに助けよう」


「ついで?」


「喜べ。俺らは宿にも泊まらず野宿もせずに済みそうだ」


口角を大きく上げて含みの有る笑みをライオネルは浮かべる。初めて見る夫の新しい表情にリューも釣られて(ライオネルよりも自然体な)笑みを浮かべた。


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