第14話
「えー、まずは共通認識の確認です」
女性で、瓶底眼鏡ともいうべき重そうな眼鏡を付けている。
声は若いが、30は超えていると思う。
みつあみじゃないのが残念だ。
「まず今回の彗星、じゃないくて隕石の軌道です」
副総司令官の後ろのモニターには地球を左下に、右上から大きな黒色の点が迫ってきている図が示される。
黒色の点が隕石で、それがだんだんと太陽の重力に引っ張られながら地球へと迫っていく様子が、予定されている時間とともに提示される。
「最初、隕石は地球の近くを通っていくルートをたどります。太陽から見て外側ですね。それが今から2か月後の予定です」
段々と速度を増しながら隕石は地球をかすめ、同時に図は太陽系の火星から内側の図へと移動する。
太陽を全体の中心とし、それからそれぞれの惑星が動いているのがはっきりと見える。
「隕石がどれぐらいこのときに崩れるかにもよりますが、もしかしたら月は一部が破壊されるかもしれません。また、隕石自身もいくつか破片が散らかっていくことが予想されています。これによって大きく誤差は生じますが、今回は最悪のケースを表示することとします。つまり、最終的に地球に衝突する可能性が一番高くなるルートになります」
あくまでも推定であることを示すためか、先ほどまで地球があった左下のところには英語で仮定と書かれている。
隕石は太陽系をさらに進んでいき太陽の重力につかまる。
地球をスイングバイする形になって軌道が変わった結果、さらに太陽へ接近するコースになる。
「ここで水星よりも内側の軌道を通り、太陽の重力に従って反対側へ向かいます。しかしながら地球も時間経過で進む都合上、最初の最接近からおおよそ8か月後に再度接近をします」
ここでもまだ衝突までは至らないらしい。
だがこの時の衝突確立というものも10パーセントは超えているようだ。
「そして再度地球の重力圏に入り、いったんは外へ行きます。ですが、十分な速度はすでになく、この時点で太陽にまで到達することなく、地球の周囲にとどまります」
それでもさらに3か月後に、地球の軌道の内側からやってきた隕石に地球は経路上ぶつかることとなっていた。
つまり、2か月後の最接近、さらにそこから8か月後の最接近、そして追加の3か月後の衝突という段階を踏むということだ。
「今から計算して、13か月後に、地球と衝突します」
分離する質量などにもよるらしいが、それでも地球上にいる生命には大打撃が加わるのは間違いがないだろう。
「地球衝突まではこれだけ期間がありますが、一方でこれだけしかないとも言えます」
と締めた科学者は、モニターを消した。




