第12話
翌日午前7時45分。
俺はすでに軍装に着替えて第3会議室へと来ていた。
「失礼します」
ドアを3回ノックして、中から声がかかるのを待つ。
「入れ」
すぐに副総司令官の、あの声が聞こえてきた。
ドアの取っ手を握り、押し下げてからドアを奥に押し込む。
「失礼します。潟平中佐、出頭いたしました」
入りいったん後ろに身体を向けてからドアを閉め、再びクルリと副総司令官を見る。
そして敬礼をして入室をしたことを報せた。
「ああ、待っていたぞ」
副総司令官が座る席を指示し、それを聞いてから俺はパイプ椅子に座る。
「……さて、もう少し時間がある。少し待っていてくれ」
「はい、わかりました」
副総司令官の言葉に、周りをようやく見回して、誰が来たかを確認した。
副総司令官のほかには、テック・カバナー財閥の代表者であるリサ・テレサ・オールド、それとスーツ姿の男性が一人。
それにこの場に似つかわしくないアロハシャツに山盛りのちくわをほおばっている初老の男性。
スーツ姿は知らないが、このアロハシャツの人物は極めて有名だ。
「武装社長、挨拶もせずに申し訳ありません」
見つけてすぐに俺は彼のもとへと駆け寄って声を出す。
「ああ、構いはしないよ、潟平中佐。今回はそこまで厳しい会とはならん。僕がここにいるのも、君らの会議を見守るためのオブザーバーだ。君が思っているだろうように作戦自身に参加するということは考えておらんよ」
この界隈では知らない人はいない、手野武装警備社長、通称武装社長その人だ。
いつに生まれ、どこで生まれ、どうして暮らしていたのかというその一切が謎の人物。
噂には聞いていたがこうして実際にお会いするのは初めてだ。
「さあ、君も席に戻りたまえ。もう少しで会も始まるだろう」
「はっ、では失礼いたします」
生ける伝説とも呼ばれる武装社長と、こうして会うことができるとは思ってもいなかった。
それに実際は思ったよりも小さい、160センチぐらいではないだろうか。
しかし、それにしても圧は副総司令官の何十倍も強く、何か飲み込んでしまうような迫力を感じた。




