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悪魔の翼  作者: 黒昆布
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心の内に秘めたもの


 さっきの天使が何か呪文を唱え、右手に持った槍に魔力を溜め始めた。落ちこぼれで未熟な俺にだってわかる。あれはまずい、食らったら即死だ。


「おい、まだかよシキ!そろそろ来るぞ!」


「もう終わる!あと5秒だ!5秒耐えろ!」

 

「食らうがよい、天龍捻槍(ドラグ・サージ)!」


 激しい光を放つとともに、膨大な魔力が槍に乗って放たれた。うまく防がないと一瞬で怒ら一帯が吹き飛ぶ。なら、ここで止めるしかない。


「氷魔法、氷凱壁(ひょうがいへき)!!」


俺の、唯一の特殊属性魔法。いじめられ、虐げられてた間ずっと一人で魔法を鍛えていた。その時、気づいたらできるようになっていた。これが破られたら、俺に勝ち目はない。


「そんな壁、何の意味もないわ!」


直後、轟音と共に俺の魔法が破られ、槍がわき腹を貫通した。


「グハッ……ははは、やっぱここまでか……結局こうなるんだな、俺は」


腹にえげつない回転をした槍が突き刺さってるんだ、もう助からないだろう。結局契約も間に合わなかったしな。


「悪いシキ、間に合わなかった」


「いいや、間に合ってるさ。ん-、媒体はこれで良いか」


シキはなぜか天使が使ってた槍を握り、魔力を流した。


「なに、やってんだ?」


「契約は完了した。これで俺の力をお前に与えられる。さぁ、いけ翼。お前の力を見せてやれ」


刹那、俺の体が何かに乗っ取られるような感覚に襲われた。悪魔のような角が生え、黒く光る羽が生えている。そっから、意識を奪うような、不思議な感じに襲われた。


「グウァァァ!!」


「やっぱ暴走したか。だからここではやりたくなかったんだけどな」


「貴様、そいつに何をした!」


「何って、契約だよ。命も何も奪っちゃいない。ただ制御が効いてないだけだ。だけどもう、お前じゃこいつに勝てないよセラフィ。翼は決して飲まれたりしない。暴走状態が終わったら、死ぬのはお前だ」


「戯言を!そんなもの、焼き払ってくれるわ!聖天炎破(ホーリー・フレイム)!!」


「やめとけセラフィ。お前じゃ勝てない。忠告はしたからな」


ダメだ、意識が飲まれる。何だこの感覚、今までの経験全部を思い出すような感じ。思い出したくないのに。吐きそうだ。もうやめてくれ。痛い、苦しい。辛い。誰にも相談できない。しんどい。死のう。死ねば楽になれる。


……俺はこんなことを考えながら生きてたんだな。ずっと吐きそうで、死にたくて、殺したかった。


「あきらめるな」「死んだら元も子もないだろ?」「まだ人生長いんだから」こういうセリフを吐く奴らが本当に嫌いだった。生きる希望を無理やりにでも押し付けてくる奴らは、恵まれてるんだと思ってた。


恵まれてるやつの言う事なんて、聞いたってしょうがない。誰にも、俺の気持ちはわからないんだから。


今まで、そういう気持ちを押し殺して、耐えれば終わるという考えで塗りつぶしていた。でも、心の内ではそんなこと思ってなかったんだ。いじめてくる奴らを、諭してくる奴らを殺したくて仕方なかった。


そうだ。俺は俺を害するものが大嫌いなんだ。俺の考えに反する奴が大嫌いだ。俺に敵意を向ける奴も、俺を諭そうとする者も。全員まとめて、消し去ってやる。だから、この感情を力に変えろ。今、目の前で俺に敵意を向けているあの天使を殺す力に。これから俺に立ちはだかるやつらを、なぎ倒せる力に。


「ウゥゥガァァァ!!っはぁ、はぁ……ただいま、シキ」


「お帰り翼、じゃあとりえず……避けて」


「へ?」


直後、激しい衝撃が俺を襲った。


「フン、契約をしたからと言って強さが変わったわけではないようだな。この程度で死ぬとは」


「誰が、死んだって?確かに多少はダメージ食らったけどさ。今なら勝てる気がするよ」


相手の攻撃を直に食らって壁にめり込んだが、痛みはそこまで感じなかった。と言うかもはや食らってないのと同等だ。


「なっ、どういうことだ!」もろに食らっただろう!」


「そうだな、確かに食らった。でも効かなかった、それだけだ」


「戯言を!聖剛乱舞(フェルナーレ)!」


「シキ、能力使うぞ!」


「使うも何も、君の物だ!好きにしな!」


さっき頭の中で散々見せられた嫌な光景。あの憎しみを開放しろ。長期戦には持ってきたくないし、一撃であいつを仕留める。


「俺の数年間、溜まりに溜まった憎しみを込めた一撃だ!食らえ、憎翼牙天(ぞうよくがてん)!」


憎しみを羽に乗せ、吸収した槍を顕現させてともに貫く技だ。羽を操り回転させ槍の勢いを上げる。


「こい、雑魚がぁ!!」


「ウォォォ!!」


上から高速で振り堕ちてくる天使をめがけ飛び上がり、右腕に羽を纏わせ威力を上げる。飛び上がった勢いをそのままに、右手に構えた黒色の槍は天使の体を貫通した。


「俺の勝ちだ、クソ天使」


「ガッ……グハッ……そんな、バカな」


「だから言ったでしょセラフィ。君じゃ絶対に勝てないって。俺には善戦できても、この子には無理だよ」


「……シキ、貴様ァ……覚えておけよ人間、いつか必ず貴様に復讐を果たすからな!」


そういうと天使は砂のようにさらさらと消えていった。


「ふう、勝ったと思ったら急に力が……」


「ちょ、翼?!おい、起きろ大丈夫か!」


「悪いシキ、ちょっと寝かせてくれ……」


俺はそのまま意識を失い、その場に倒れ込んだ。

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