黒月魔術学園
○○魔術学校とか、○○魔法学園みたいな名前の学校はこの魔法が存在する世界では当たり前にある。
現に俺が通っている学校の名前も、緑が丘魔術学園と言う名前だ。どこにでもありそうな緑が丘と言う名前だが、名前の中についている色は、この世界での魔法を学ぶ分野やそれぞれが得意とするものを表しているらしい。
この悪魔曰く、
紅位、赤色のつく場所は力強く勇敢な者。先導者的存在。
橙位、橙色のつく場所は創造性や戦術、発明などに秀でている。
黄位、黄色のつく場所は研究者等、頭のいいものが多い。
緑位、緑色が付く場所は治癒士等、魔力の扱いに長ける者が多い。
青位、青色のつくば場所は中立の人間が多く、理性的。
紫位、魔法において非常に優秀であり、この世界でかなり高位の存在。
黒位、7色を統率し、王となるもの。力に溺れ堕ちるものなど様々だが実力は7色の中で最高位とされている。
等など、階級が分かれているらしい。
7つの階級の中で最強と言われる黒。その名前が付く学校、黒月魔術学園。そんなところに本当に俺が行っていいのだろうか。今まで見たいに実力の差を理由にいじめられたりしないだろうか。
……どうでもいいか。俺を邪魔する奴らは殺せばいい。だって俺の手はもう、汚れてるんだから。
「さぁどうするよ少年、俺と契約して俺の手伝いをするか、このままここに残って今までのような日々を送るか」
「俺は、あんたと契約するよ。ここに残ったってどうせ、今とおんなじことの二の舞だ。それならいっそ、悪魔にだってなってやる」
「それだよそれ!その答えを待っていた!」
悪魔はいきなり羽を広げ空に飛び出すと、空中で俺の方へ手を差し伸べた。
「俺は悪魔の翅鬼ってんだ。よろしくな。お前の名前は?」
「俺は夜霞 翼だ。落ちこぼれでもなんでも、好きに呼んでくれ」
握手を交わし、さっきまで岩のように重かった腰を上げる。覚悟を決めたことで、かなり気が楽になったんだろう。
「落ちこぼれか、んじゃ俺と同じだな」
「同じ?俺とお前が?」
俺は驚きを隠せなかった。この悪魔が落ちこぼれには全く見えなかったから。むしろ、結構有能な方だと思ったんだけどな。
「俺はお前と同じ落ちこぼれさ。悪魔なのに魔法は苦手で、悪魔には効かない武術が異常に得意になっちまった。俺なりにどうにか周りに追い付こうと頑張ったんだがな」
「俺と真逆だな。俺は武術なんて全くできない。できることと言ったらさっきのナイフくらいだし、全部魔法に頼って生きてた。魔法はできてもフィジカルで圧倒される。そのせいでさっきのあいつらみたいな奴にいじめらるようになったんだろうな」
「お互い苦労してんだな~、まぁ頑張ろうぜ」
翅鬼はそういうと指を噛み、血で地面に文字を書き始めた。いきなり自傷行為を始めた翅鬼に俺は驚きを隠せなかったが、一旦落ち着き、その様子を見ることにした。
「なにしてんの?」
「黒月学園までの門を開こうと思って、魔方陣を描いてんだ。これを発動させれば、直ぐに移動できる」
そんな便利な魔法があるのか。と言うか、こいつ魔法使えてんじゃねえか。そこまで落ちこぼれってわけでもないのかな。
「ちょっと待ってろよ、もう少しで完成だ」
シキは指に魔力を込め、陣を発動させようとした、その時だった。
ドゴォォォォン!!!と、俺とシキの目の前に何かが落下してきた。煙が立ち込め、視界が一気に悪くなった。
「なんだ?!シキ、大丈夫か?!」
「ダイジョブだ!それよりこっちにこい!急げ!」
「悪い、なんも見えん!視界が悪すぎる!」
衝突で舞い上がった煙だけじゃない。誰かが意図的に煙幕を使ったような、完全に混乱させようとして来てる。
「シキ、伏せろ!水魔法 霞流風!」
俺は魔法を発動し、煙を一か所に一度に集め、視界を戻した。その時目の前に現れたのは、光輝く一本の槍だった。
「運の良いガキどもだ、我が龍槍を避けるとは……。我が名は熾天使 セラフィナ・スピアレイン‼今この時をもって、貴様ら悪魔を撃ち滅ぼす!」
貴様ら悪魔って、俺まだ悪魔じゃないんですけど……。それに天使だって?なんでこんなところにいるんだ?
「おい翼、考えてる時間はねぇ。今すぐ契約するぞ、血出せ」
「わかったよ……痛ッ」
俺は指を噛み、血を一滴、シキが持っていた紙に垂らした。
「翼、数秒だけ俺を守ってくれ。どんな方法でもいいから」
「わかった。あとは任せるぞ」
俺は 翅鬼の言う通り、水、風魔法の応用 風水牢を使った。
「今この時より、我は我が王の名の下において汝の契約者とならん。我が肉体よ、我が契約者に力を与えよ。深魔契約!」