この世界について
「契約?どんな」
「ん-、そうだなー、俺の力をお前に預ける。だから、俺の仕事を手伝ってほしいんだよ」
悪魔の仕事なんて手伝いたくないに決まってるだろ。それに、ただでさえ俺はいじめられてたのに、悪魔の仕事なんて手伝ったらどうなることか……。
「悪魔の仕事なんて手伝いたくないよ。またいじめられる」
「おーい、今更何言ってんだ?人殺して自分も死のうとしておきながら、世間の目なんて気にすんのかよ」
「それを無かった事にしたのはそっちじゃないか」
「それはそうだけどよ……。ま、そんなことは置いといてだ。詳しいことを話すから、よーく聞けよ?」
なんかもう流れで契約しようとしてるな……...。だいたい、悪魔の仕事ってなんだよ。命を対価に契約しますみたいな奴じゃないのか?
「一応聞くが、悪魔の仕事って何なんだ?」
「色々あるが、一番多いのは天使と戦うことだ。あいつ等は無条件に俺らを殺そうとしてくる。と言うかそう育てられてるって言うのが正解かな。話を聞いてくれる奴らもいるが、戦いを避けられるのは極稀なことだ。
俺たち悪魔と天使は普通に暮らしてたが、いつかを境に戦争状態が続いてるんだ。一時は休戦したらしいが、またぶり返したらしい。どうやら、お偉いさん方同士で話し合っても天使は話を聞いてくれないらしくてな。だからまぁ、戦うしかないんだよ。ほかの仕事って言うと契約管理官だったり魂収穫者だったりと多岐にわたるが、まぁ正直人間がかかわる仕事はほとんどなくてな。天使と悪魔じゃ相性悪くて、契約した人間と一緒に戦わないと勝つのは厳しきくてね。だから基本、戦闘に回ってもらうよ」
戦闘か。正直、今の俺がこのまま戦力になれるとは思わない。いくら魔法ができようと、近づかれたら終わりだ。……怖いな。戦うのも、悪魔と契約するのも。でも、変わりたい。理由はあれど人を殺したやつが言う事じゃないかも知れないが、それでも俺は変わらなきゃいけない。
「お、目の色変わったねー。じゃあ、少し詳しく話そうか。まず、魔法についてはどのくらい知ってる?」
「魔法は五大元素である炎、水、風、土、空を基礎とする特殊な術のことを言う。さらにそこから
派生し、氷、雷、闇、光などが存在する。この4つを操るには基礎の五大元素のうちどれかを極めていないと使用できない。」
悪魔は驚いたような顔でこっちを見た。なんだ、バカにしてんのかな。
「いや、それは誰に教えてもらったんだ?人間って皆、それが常識としてあるのか?」
「当たり前だろ、ここら辺は義務教育で叩きこまれる内容だぞ?」
「へー、だから人間って弱いのか」
何なんだこいつ。すっごい腹立つことをポンポンと出してくるな。人間が弱いって、その人間の中でもいじめられてた俺はどんだけ弱いんだよって話になるだろ。……まぁ実際弱いけどさ。
「まぁいいや。次に、魔物については?」
「魔物は通常の動物に強力な魔力が当てられることによって生まれる怪物。その強さはあてられた魔力の強さにもよるが、魔法や体術が使えない一般人ではまともに戦うことすらできないと言われている。また、魔力が異常に濃い場所から生まれることもある。そこから生まれた魔物は、相当な強さでなければ対処できないと言われてる」
「なるほど。じゃあ次なんだけど……悪魔や天使についてどれくらい知ってる?」
悪魔や天使なんてめちゃくちゃ古い文献に残ってるかどうかすら怪しい。だから、俺は全く知らない。大体こんなやつってことくらいしかわからん。
「さっき聞いた話がほとんどみたいなもんだ、全く知らない」
「OKだ。まず、一からぜーんぶ話すから、耳の穴かっぽじってよく聞け。全部おさらいするぞ。
まず、この世界には魔法が存在する。魔法は、五大元素を基本とする。特殊属性としてさっきの4つがあるが、これは自分の意志や鍛錬次第で五大元素を極めなくても使える。
次に、魔物について。魔物は基本2種に分かれる。天界、天使の住むところからきたやつらか、この地に
住むやつら。元の動物に似てるのはこの地に住んでるやつらだ。元の動物が魔物化することは、結構稀だ。天界からくる奴らは、問答無用で俺や人間を食い殺そうとする。それを倒すため、人間はいろんな力をつけていったんだ。その結果魔法の存在に気づき、魔力を手にした。
最後に、悪魔や天使について。俺たちの力は、簡単に言うとじゃんけんだ。悪魔は人間に強く、人間は天使に強く、天使は悪魔に強い。この力の関係を利用するために、悪魔は人間に契約を持ちかけて戦うわけだ。どうだ、大体わかったか?」
いきなりいろんな常識を覆された気分だった。特殊属性魔法は普通に訓練すれば使えるとか、いろいろ習ってきたことと違う。
「まぁ、分かるわけないよな。だから、来てほしい場所がある」
「どこ?」
「悪魔と契約した人間が人に混ざって魔法を学ぶために作られた場所。その名も、黒月魔術学園」