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勇者さまと少女③

「ここは…?」

シドロは目を開けると見覚えのない木の天井が映った。

「そうか。俺は確か猪を倒した後そのまま。」

シドロは少し思案してそういう結論に至った。すると扉が開く音がした。

「あっ、やっと起きた。」

リオンが濡れたタオルを持って部屋に入ってきた。

「急に倒れたからびっくりしたよ。」

「ここは…?」

「私の家。」

「運んでくれたのか?」

「うん。まぁ、村の人たちに手伝ってもらってだけどね。」

タオルを絞り頭に乗せてくれる。

「村の医者に聞いてみたら怪我が原因ってよりは疲れが原因みたいだっていうから。」

「ありがとう、すまない迷惑をかけて。」

「私の方こそさっきはありがとう、助けてくれて。」

リオンが優しい目で語りかける。

「そういえば、あなたの名前聞いてなかった。」

「そうだな、俺はシドロ。よろしく。」

「シドロ…。もしかして旅してる勇者!?」

「ははっ。知ってるのか。」

「うん。魔王を倒そうと旅をしてるって。でも、確か4人くらいで旅をしてるって聞いたような。」

シドロは静かに目を閉じ何かを思うように言った。

「まぁ、色々あってな…。」

「………。」

リオンはその様子を見てこれ以上は踏み込んではいけないのだろうと思った。

「お腹空いてない?よかったらこの辺りで取れるキノコのスープがあるんだけど、食べれそう?」

「あぁ、ありがとう。」

リオンは立ち上がりスープをよそってもってきた。食欲をそそる匂いがすぐそこに現れる。

「いただきます。」

シドロはすぐに口へ運んだ。とても温かい。温度もだがなんだかとても心が温かくなった。久しぶりに誰かと触れ合えているこの状況も相まっているのかもしれない。

「よほどお腹空いてたんだね。おかわりもあるから、遠慮しないで。」

「さっきはこのキノコを取りに?」

「うん。この辺りはキノコや山菜がたくさん採れるから。でも最近は魔物も増え始めて…。村の人たちでも限られた人しか森の方へは行かなくなった。」

リオンは少し寂しそうに目線を下に落とした。シドロは壁に立てかけてある弓と杖を見る。

「それであんなものを持って森へ?」

「うん。襲われて怪我をしてくる人も多いから。こう見えて私、この村では一番弓と魔法は得意なんだから。」

「そうなのか。」

「…なに?バカにしてる。まぁ、勇者"さま"からしたらあのくらいの魔法だもんね。」

「いやそんなことはない。現に魔物を追い払って身を守れてる。リオンの魔法はすごいよ。修練を続ければ良い魔法使いになれるよ。」

「まっ、まぁね!」

リオンは照れてはいるものの褒められて満更もない表情を浮かべている。

「リオン!ちょっと手伝ってくれ!」

「はーい。」

誰かが窓の外からリオンを呼んだ。

「ちょっと行ってくるね。何かあったら呼んでね。すぐそこにいるから。」

リオンが外にでていった。扉が閉まる音の後に静けさがたちこめる。


シドロにとってはこんなに長らく話したのはアリー以外ではかなり久しぶりだった。なんとなくふわふわと夢心地だった。そして冷静になった時また1つの疑問が生まれた。


ーーリオンは俺と普通に話している?


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