勇者さま嫌われる
奥にいたのは折れた杖を持ち包帯をぐるぐる巻きにした骸骨だった。
「なんだか殴りがいがなさそうだなー。」
「でも、すごく強い魔力を感じるよ。」
「そうだな。」
カタカタと音を立てながら骸骨はこちらに向けて杖を振るった。その瞬間炎が一直線に飛んできた。
「みんな避けろ!」
シドロの声に素早く全員が反応してよける。
「動きを止める!」
レインが相手の動きを止める魔法をかける。その瞬間に骸骨の動きが緩慢になった。そこを狙いレージが雷を放ち完全に炎は止まった!
「今だ!行けハート、シドロ」
レージの声に反応して二人が飛び出す。
「一気に決めるよ〜!」
ハートが何度も拳をまるでマシンガンのように繰り出す。
骸骨はそのうちヨロヨロとし始めてきた!
「最後は任せたよー!シドロ!」
「あぁ、任しておけ!」
シドロは目を閉じ剣を構えて集中する。剣は光を帯び始める。光が満ちたとき、シドロは目を開いて骸骨へ向かった。
「はぁ!」
骸骨は光に包まれる。勝ちを確信したシドロたち。
「見事だ。勇者ども」
骸骨が突然シドロにだけ聞こえる声で喋り始める。
「ここで我は朽ちようが、お前を魔王様の元に行かせるわけにはいかない。」
「……うっ?」
骸骨は一瞬紫色した魔力をシドロにぶつける。
「何をした?」
「そう時間は経たずともわかる。私の置き土産だ。半人前どもには防げまい。せいぜいくるし…め」
その言葉を最後に骸骨は消えてしまった。
「ふぅ。なんとかなったな。」
最後の言葉は気になるが、今のところ体に異常はない。それに、もし何かあればレインに治癒の魔法をかけて貰えばいい。
「よし!村に帰るか!」
「……うん。そうだね。」
「……あぁ。」
シドロはなんだか違和感のある返事に疑問を持ちつつも、
きっと疲れているんだろうと尚のこと早く帰ることにした。
「………んなの。」
「………なものだ。」
「ん?どうかしたか?」
「…嫌、別に。」
さっきからシドロの聞こえるか聞こえないほどの声で3人が話をしている。心なしか距離も離れて歩いている気がする。シドロはなんとなく気にはなるが足早に村へ戻ること
にした。
村に到着すると村長が目に入った。
「村長。魔物は退治しました!これで村は安心です。」
「おーそれはありが……。」
満面の笑みを浮かべていたが急に言葉が詰まる。そしてみるみるうちに表情が曇っていった。
「なんじゃね。その態度は?何様のつもりだ?」
「えっ?村長どうしたんですか?」
「えぇい腹が立つ。さっさと村から出ていけ!」
村長が声を荒らげていったため。とりあえずその場を去ることにする。
「なんだったんだ?」
「おっ!勇者さま!お帰りなさい。」
「あーさっきの。」
村を出る前に薬をくれた人に出会った。
「村長何かあったんですか?ひどく怒ってらっしゃいましたけど。」
「さぁ、しらねぇな。それよりもよぉー、お前さんたくさん薬持ってたよな?俺の。」
「へっ?」
「あれの料金もらってねぇぞ。生意気にもありがとうだ?普通金払うよな?なめてんのか?」
「いや、俺は何度もお金を渡そうと」
「今すぐ払え!」
「はい、はい!払いますとも」
剣幕に負けてお金を渡す。そしてシドロ一行は誰からも賞賛されることもなく村を去った。
「なんだったんだ、あの村。どう思うレージ?」
「………」
「レージ?どうした。」
レージは何も言わない。他の2人を見ても何だか様子がおかしい。
「おい。どうしたんだ?みんな。」
「………うるさい。」
普段のレインからは聞かない言葉にシドロは驚いた。