少女の実力
シドロとリオンは森の中を歩いていく。
「はぁ、はぁ、」
リオンは少しだけ息が上がり始めていた。
「疲れたのか〜?最初の威勢はどうした?」
シドロが揶揄うように言う。
「う、うるさい。まだまだ全然疲れてないから!」
リオンがどう考えても空元気な足を前に運ぶ。
「少し休憩しよう。近くに川もあるしここなら休めそうだ。」
シドロは休憩を提案し腰を下ろす。
「…うん。わかった。ありがとう。」
リオンも口は渋々だが体は正直にすとんと座り水筒の水を飲む。
「…ごめん。私足引っ張ってるよね。」
リオンは水筒の蓋を閉めずに水筒を見つめる。
「どうしたんだ?急に?」
「シドロ一人ならもうその教会についてたかもしれないのに。私、息巻いて出てきた割には魔物との戦いも全然ダメだし。」
ここまで何度か魔物のようなものに出会った時、リオンも魔法を使って応戦していたものの苦戦していた。
「そんなに焦ることはないよ。少しずつ強くなっていけばいい。」
「でも……。」
「まぁ焦る気持ちがわからないでもない。でも実戦経験を積みながらの方が成長しやすい。しばらくはサポートの方を頼む。実際、リオンの魔法攻撃があるかないかだと戦いの組み立てやすさが全然違う。」
シドロの言葉にリオンのこわばった表情は少しだけ緩んだ。
「…うん、わかった。ありがとう。でも少しでも早くシドロに追いつけるように頑張るね。私の魔法と弓で全部撃ち抜いてやるんだから!」
「頼もしいな。」
リオンはいつもの調子に戻った。決意はしたものの10代の女の子。昨日までは村で普通に暮らしていたところから、突然世界を救うために魔物と戦っているのだ。当然不安や心細さがある。シドロは自分が旅に出た日を思い出して声をかけた。
「さて、丁度いいしリオン確認したいことがあるんだけど
いいか?」
「うん。なに?」
「リオンが現状できる魔法をある程度教えてもらってもいいか?その方がこっちも動きやすい。リオンも行動の整理をしやすいと思うから。」
「そうだね!えっと、じゃあ実際に見せた方がわかりやすいよね。ここは川辺だから大丈夫そう。」
リオンはぽんと立ち上がりお尻をささと拭いて杖を構えた。
「まずは、ファイアボール!」
リオンが魔法を唱えると激しい炎の球が飛んでいく。
「そして、マジックレイン!」
川の水が浮かび上がり燃え上がった炎の球に降り注ぐ。火は綺麗に消えた。
「まだまだいくよ!」
その後リオンは初めて会った時に見せた氷の魔法、魔物と戦った時に見せた風の魔法を見せてくれた。他にも電気の魔法や光の魔法などを見せてくれた。
「ふーっ。こんなもんかな?」
「すごいな、色々な魔法が使えるんだな。」
「へへっ。意外とやるもんでしょ?まぁ、初級魔法ばっかりだけど。」
「いやいや、これだけの種類が使えるのは相当努力したんだな。磨けばどんどん伸びる。炎の魔法は特になかなかなものだったぞ。」
「嬉しい!炎の魔法は結構自信あるんだ!ただ、水の魔法は近くに水がないと使えないんだけど。」
「成る程…。だから森の中であった時は炎の魔法は使わなかったのか。」
「うん。あのあたりに水辺がなかったから。森に火がついちゃったら消せないし。」
リオンは目線を下に下ろして言った。
「俺が軽い水の魔法は使えるからそこは安心してくれ。」
「本当?助かる!炎の魔法が使えるなら動きやすい。」
リオンの顔がパッと明るくなった。
「ははっ。その事がわかっていればリオンの本領が発揮できるなら早めに言っておけばよかったな!」
「ほんとだよ!炎が使えたらさっきの魔物にも苦戦しなかったんだから!」
さっきまで自信を失っていた顔をしていたリオンが今は少しだけ自信を取り戻した顔をしている。得意な魔法が使えるとわかったからだろう。それだけでもこの魔法披露は価値のある時間だった。
「あっ、あと回復魔法も簡単なものだったら使えるよ。」
「へぇ、そうなのか?やっぱりすごいじゃないか。」
「村の子どもが怪我したりするときに治療してたりできたらなと思って。といっても難しくて軽い傷と疲労を軽くするくらいしかできないけど…。だから毒とかは薬草とかでなんとかするしかないかな。」
ほっぺたを人差し指で描きながら言った。
「それだけできれば十分だ。あとは弓矢も得意だったよな。」
「うん!魔法を覚える前はこれで戦ってたから。正直なところ魔法より自信がある。10〜15mくらいの相手は打ち抜けるよ!」
リオンは得意げに弓を弾く真似をして言った。
「そうか…。それだけできるなら色々戦術に組み込めそうだ。色々教えてくれてありがとう。リオンは頼もしい仲間になりそうだ。」
「ま、まぁ当然。私結構できるんだよ!」
リオンはすっかり元気を取り戻していた。
「調子がいいな。」
「へへっ。」
リオンはウインクしながらベロを出してこっちを見ていた。
シドロはまずはリオンの不安を少しでも軽くしてあげようとしていた。リオンの表情からその計画は間違いなく成功したようだ。
それに、シドロにとって久しぶりに仲間と旅をしている。この何気のない時間がシドロにとっては嬉しかった。だからこそリオンには笑っていてほしかったし自然とシドロも笑顔になった。きっとその方がリオンも自分自身もは強くなれる。
「よし、シドロそろそろ出発しよう!」
「了解。」
足早にリオンはまた歩き始めた。
こちらの作品、必ず完結予定ですのでお待ちください




