勇者さまと洞窟
「ハート!私が動きを止めるからあいつを仕留めて!」
「あいよ!おまかせ!」
「くらえっ!」
洞窟に入ってしばらく経った。全員の連携もあり、魔物を討伐していく。
「ふぅ。なんとかなったな」
「全然歯ごたえなくてつまんない!もっと強いのいないの?」
「おい、ハート。油断するな。奥からは強い気配を感じる。」
「あいあーい。わかりましたよー。」
ハートをいつも通りレージが嗜める。
「ねぇ、シドロ。怪我とかしてない?すぐに回復してあげるからね?」
「ありがとうレイン。でも、心配するな!全然平気だ。」
油断しているわけではないが、ハートの言う通りこの辺りの魔物はあまり強いものを見かけていない。ここまでほとんど苦労もなくここまできた。
「そう。わかった。」
「レインはいっつもシドロのことばっかり気にしてるね〜。」
ハートが揶揄うように笑った。
「そ、そんなことないよ!みんなも怪我してたら言ってよ!」
早口で顔を少し赤らめていった。
「皆さん楽しんでいるところ悪いのですが、ちょっといいでしょうか?」
ポケットの中から声がするため、徐にシドロは碧色の石を取り出した。
「どうした?アリー。」
声の主はアリー。妖精王の命令でシドロ達の旅をサポートしている妖精。この石を通じて話すことができる。
「この先にすごく強い気配を感じます。皆さんなら大丈夫だとは思いますが一応警戒を。」
「了解。ありがとうアリー。」
「この奥にもっと強いやつが〜。楽しみ楽しみ!サンドバッグにしてやる〜。」
「ハート!言ってたでしょ?油断しないようにって!」
「全く。お気楽なやつだ。」
「ははっ。みんな!行くぞ!」
シドロたちは奥へ進んでいく。
「にしてもさ〜。その剣ってまだ本来の力の半分も出してないんでしょう?」
「あぁ。そうらしい。」
「こんなに強いのに、不思議な感じだね。」
この剣は妖精王から託されたもので、邪悪な魔を打ち砕くことができるらしい。けど、今はその力は完全にを発揮できない。その為には勇者を支える従者の資格のあるものを見つけその者たちが試練を乗り越えなければならないらしい。
「シドロは乗り越えたんだよな?」
「あぁ。まぁな。」
「すごいすごーい。私も早く試練とやらを受けたいなー。」
ハートが声を弾ませて言った。
「私は不安だな‥」
「どうした?レイン。」
「でもさ、従者の素質のあるものってこの世界に3人しかいないんだよね。本当に、私はその一人なのかなって。」
「間違いない。俺が見込んだんだから。」
従者の資格は3つ。知恵、慈愛、勇気だ。
1.困難や恐怖を恐れない勇気を持つもの
2.この世界の誰よりも慈愛の心を持つもの
3.民を救う確かな知恵を持つもの
「知恵はレージ、勇気はハート、そして慈愛はレインだ。頼りにしてるぞ。」
「無論だ。」
「もちもち!」
「……うん。わかった。私頑張る。」
皆が決意を込めた眼差しでシドロを見る。改めて頼りになる仲間だと感じる。
「まもなく、強い気配の在処です。」
アリーが告げる。
「さぁ、一気に片付けるぞ」