少女と旅立ち④
朝になりシドロは再び旅に出る準備をする。
「さて、そろそろいくか。アリー、そのシスターはどこにいる?」
「……森を超えた先にある小さな集落の近くにあります。」
「わかった。そこまではおそらくきちんと休める場所はないだろう。アリーもよろしくな。」
「私は外に出ることがないので関係ないです。」
「ははっ。そうだな。」
アリーとシドロは話そこそこに洞窟を出た。
「……?」
外に出ると見覚えのある少女が立っていた。
「リオン?」
「よかった。間に合ったみたい。」
リオンの背中には木で作られた弓矢と杖、そしてリュックを背負っていた。
「なにしにきたんだ?それにその格好。見送りにしては重装備だな。」
「………,」
リオンは何も言わない。
「リオン?」
「シドロ。お願いがあるの。」
「なんだ?」
リオンは決意に満ちた眼差しをシドロに向けた。
「私を旅に連れて行ってほしい。」
「はっ?どうしたんだ突然。」
「私を魔王を倒しにいきたい。村のみんなをこんなに苦しめた、元凶を倒したい。」
ーーーーーーーーーーー
「実は話したいことがあって。」
まっすぐな目で自分の父を見つめた。
「私、シドロと一緒に旅にでたい。」
「…何を言ってるんだ?リオン。」
呆気に取られリオンを見つめる。
「どうしたんだ突然。まさか、あの男に何か唆されて…」
「違う。私自身で考えたことだよ。」
「…何か理由があるのか?」
「村のみんなは魔物のせいでずっと苦しんできた。やっとみんなが解放されて、みんなが笑顔なのが嬉しかった。」
「あぁ、そうだな。」
「でも、その時に思ったんだよね。この世界には同じような思いをしている人たちがたくさんいる。その人たちも助けたいなって。」
「だからって何もリオンが危険を冒す必要は…。」
「この村だってそう。今は平和だけど、魔王を倒さない限りまたいつかそんな日が来るかもしれない。」
「魔王を倒すのは勇者であるあいつの仕事だ。それに、リオン。お前は確かにこの村ではなかなか腕利きな方だ。だけどな、それくらいでは魔王はおろか、強い魔物にも…。」
「そんなことわかってる!!」
リオンは強い口調で否定した。その目には少しの涙が浮かんでいた。
「私の実力が足りてないことなんてわかってる。選ばれたシドロみたいな人たちの仕事だってことも。でも、今のシドロには一人ではできないこともたくさんある。私はその部分では力になれる。」
「………。」
呪いのことを知らない村長はただのいけすかないもの程度としか思っていない。なぜリオンにできることなどないと思っている。ただ、娘のここまでの本気の眼差しを見たのは久しぶりだった。
「……わかった。勝手にしなさい。村のことは私たちに任せておきなさい。」
「ありがとう。お父さん。」
「そろそろ、お前も少し外へ飛び出してもおかしくはない年ではあったからな。まぁこんな突然しかもあんな訳のわからない男だとは思わなかったが。」
「……。」
「さぁ。そうとわかれば早く支度をして眠りなさい。」
「うん。」
リオンは準備へと向かった。その背中はとても大きく見えた。
「いつのまにか大きくなっていたんだな。」
ーーーーーーーーーーー
「ついていくって、リオン危険すぎるぞ。」
「危険なのは承知だよ。でも、私もう人が悲しむ姿を見たくない。だから連れて行って!」
真っ直ぐで純粋な決意に満ちた眼差しにシドロはリオンの本気を感じた。
「シドロ様。どうしますか?」
「……わかった。リオンこれからよろしく。」
「うん!ありがとう!」
リオンとシドロは固く握手をした。
「全く…。」
後ろからリオンの父もとい村長が歩いてきた。
「あの…。」
「やはり私はお前が憎たらしい。」
「お父さん…。」
「おそらく村のみんなもお前のことは大嫌いだ。」
「………。」
「でもな、娘が決めた道だ。否定する気も邪魔をする気もない。」
村長がこそりと微笑んだ。
「シドロよ。娘のことは頼んだぞ。決して無茶はさせないでくれ。もし、万が一何かがあれば村人全員がお前のことを本気で許さない。」
「はい。わかっています。」
村長はシドロの眼差しを見て安心したようにリオンへ視線をうつした。
「リオン。」
「はい。」
「村のことは私たちに任せてくれ。なぁに。元々は私たちが村の警備やらはやっていたんだ。」
村長はふざけるように力瘤を見せた。
「だから、気にせずお前はお前のやりたいことをやりなさい。ただ、忘れるな。お前にはこの村がある。この村のみんながいる。みんながお前を待っている。安心しなさい。」
「はい。絶対…忘れません。」
リオンの目には涙が浮かんでいる。
「それじゃあ、いってらっしゃい。無茶はするなよ。リオン。」
「はい。行ってきます。」
リオンは森に向かって走り出した。
「シドロ、早く行こう!」
「おい、急に走るな!…それでは。」
シドロは走っていくリオンにつられてついていく。
「リオン…頑張れよ。」
村長は小さな声で呟いた。
「おい!もう少しゆっくり歩け。」
「シドロのんびりしすぎ!」
リオンは吹っ切れたように早足で歩いていた。後ろから引っ張る躊躇を振り切りながら。




