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勇者さまと湖の魔物②

「さて、そろそろかな?」

シドロは剣を構えながら湖の辺りを彷徨く。するとそこには木に刺した何かを貪るゴブリンの大群がいた。

「おい喜べみんな。餌がのこのこ歩いてきたぞ。さてさて人間さんが何か御用かな?」

魔物の一匹がこちらへ話しかけてきた。人の言語を話すということはそれなりの知性を持ち合わせているということだ。魔物たちは嘲るように大声で笑っている。口々に飯だのなんだと楽しく騒いでいる。

「おいおい、怖くて口も聞けねぇか?」

シドロは口を開かない。

「てめぇ、舐めてんのか!!」

横にいたゴブリンが持っていた棍棒で殴りかかってくる。

その時シドロは剣を抜き、そのままゴブリンを切り飛ばした。魔物たちは驚き静かになる。

「いや〜すみませんね。口開くと皆さんと仲良くできないもので。」

シドロは笑顔を浮かべながら魔物たちに言った。その瞬間に魔物たちの目の色が変わった。

「おいお前ら!遠慮はいらねぇ!このムカつくやつをボロボロのぼこぼこのべこばこにしてやれ!!」

「をぉーー!!」

魔物たちが一気呵成にこちらへ向かってくる。仲間をやられたこと、さらにシドロが口を開いたことで怒りのボルテージがMAXにまで引き上がった。

「上等だよ!」

シドロは剣を輝かせながらゴブリンたちを次々に片付けていく。まさにその様は一騎当千だった。

「シドロ様。本気でこのペースで全部倒せるとでもお思いですか?いくらなんでも頭が悪すぎます。」

アリーが懐から心配なのか馬鹿にしてるのかわからない口調で話しかける。

「思うじゃなくて、やるんだよ!生憎俺は、孤独なもんでね!」

シドロは勢い止まることなくゴブリン達をどんどん倒していく。

「なんなんだ。こいつ?バケモノだ!」

「バケモノはお前らのほうだろ?」

ゴブリン陣営もだんだんと焦りと恐怖が迫っていた。

「このペースでいけば、なんとかいける。」

シドロは勝利を確信した時。

「あまり調子に乗るなよ?人間。」

一際大きなナタのようなものを持ったゴブリンが振りかぶりシドロを吹っ飛ばした。

「お前ら慌てるな。相手はたかだか人間一人だ。我々が負けるはずなどない!」

その一言でゴブリン側の焦りは消え、覇気を取り戻した。

「ははっ。まずいかもな。」

「ちっ。笑ってる場合ではないです。すぐあいつがきます。」

アリーの言葉を聞き終える前に大きなナタをを持ったゴブリンが飛びかかってきた。シドロは素早く後ろへ飛びその攻撃を躱したが、その瞬間に何本も矢が飛んでくる。

「……うっ。」

シドロはギリギリのところでそれも躱したが体勢を崩してしまった。

「隙だらけだぞ!」

そこに大きなナタが襲いかかってきた。シドロは咄嗟に剣で防いたが力に負けて剣が弾かれる。

「今だ!やれ!」

再び周りに矢が放たれる。今度は火のついた矢だ。シドロは火の海に囲まれてしまった。

「そこそこ頑張ったが、ここがお前の墓場だ。自分の力を過信しすぎたな。」

ナタを持ったゴブリンがゆっくりと歩いてくる。

「本当におわったな。」

「何諦めてるの?なんとかしてください。おま…あなたがやられたらこの世界は終わりですよ。」

「そんなことは…」

周りは火の海、剣はその外にあるため取りに行けない。頼る仲間もいない。

「あいつの言う通りだよな。自分一人でなんとかできるなんてそんなことはないってのは分かってたんだけどな。」

シドロは苦笑いを浮かべた。ここまでの旅を思い出していた。いつもサポートをしてくれていた仲間。それが呪い一つで簡単に崩壊してしまった。それから一人でシドロは抗ってきたが限界だと悟った。

「終わりだ!」

ゴブリンがナタを振り上げた瞬間から、時間がスローに流れる


あぁ。アリーが何か言ってるけど聞こえないな。意外とあっさりだったな、最後は。誰か一人くらいは悲しんでくれるか?いや、そういや俺嫌われてるんだった。そんなやつもいるわけないか。

シドロは目を静かに閉じた。


「おぐっ。」

ゴブリンが声を上げた。シドロは開けることのないと思っていた目を開けゴブリンを見る。するとナタを持っていた手に矢が突き刺さっていた。そのせいでゴブリンは大きなナタを地面に落としていた。

「な、なんだ?」

「マジックレイン!」

誰かの呪文と共に雨が降り出し、辺りの火はみるみる消えていく。

「この声は…。」

「シドロ様、森の方をご覧ください。」

森の方を見ると見覚えのあるオレンジの髪を靡かせながら少女がこちらを見ていた。あどけない満面の笑顔でリオンはそこに立っていた。

「シドロー!ピンチだった??」

大きな声でイタズラっぽく揶揄うように言った。

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