勇者さまと村祭り③
「全く、なんなんだ。あいつは。」
村長は苛立っていた。なぜあんな腹立たしいような男を娘が庇うのかと。
「リオンには悪いが、祭りまでには出て行ってもらわないとな…。」
村長は一人呟いた。
ーーーーーー
その日の夜。
「外、魔物が声がする。」
シドロはベッドから外を覗く。
「夜になると魔物がたくさん外にいるの。」
リオンは遠くを見ている。
「だから村の人は夜は出歩かないんだ。」
「なるほどな。昼間も聞いていたがこんなにも多いんだな。」
「うん。ここ最近は特にひどい。」
リオンの言葉の音調からこの辺りの環境の様相がわかった。
「シドロとこの間会った場所の近くに湖があったでしょ?あそこの近くに魔物たちの根城があるみたい。」
「湖の近くって…。確か祭りはそこで、執り行われるって言ってなかったか?」
「うん。そうだよ。」
「危険すぎないか?」
「それでも、祈りを捧げることがいなくなるってみんな信じるしかないから。」
人は追い詰められると何かにでも縋りたくなる。当然のことだ。それほどにまでこの村の人は追い詰められているのだろう。
「どこかに助けを求めたりはしなかったのか?例えば街の騎士を呼んでくるとか。」
「まず、街は遠すぎるしこんな小さな村になんかなかなか来てくれないよ。」
窓にもたれかかってリオンは寂しそうに言った。
シドロは自分の無力さを感じた。ここまでの旅で自分は全ての民を救えているのだとずっと思っていた。
ー勇者さまが助けてくれたぞ
ー勇者さまばんざーい
そんな称賛がいつのまにか目を曇らせていたのかもしれない。心の中に形のない罪悪感が生まれた。
「ごめん。」
シドロは思わず口に出してしまった。
「ふふっ、なんでシドロが謝ってるの?」
「いや、ごめんなんとなく。」
「シドロは優しいんだね。」
リオンは小さな声で呟いた。
「えっ?」
「なんでもない。夜も遅いし今日はもう寝たら?」
「あ、あぁ。そうだな。」
夜も更けてきたころだ。自分が起きていてはリオンも眠りづらいかもしれない。シドロは眠ることにした。
「ねぇ、シドロ。」
「ん?」
「ううん。なんでもない。おやすみ。」
「あぁ。おやすみ。」
リオンは何か言いたげな顔をしていたがそのまま自分のベッドに入っていった。




