勇者さまとプロローグ
初めての投稿です。勇者の旅を、どうか見守ってくれると嬉しいです。
「勇者さまが来てくれたぞ!」
「勇者さま、ばんざーい」
俺の名前は勇者シドロ。魔王ヴィザスに支配されたこの国を救うため、妖精王から託された剣を手に仲間たちと世界を旅して行く先々で人々を救っている。おれたち勇者御一行が現れると全員が歓喜し迎える。そして村を救った暁には英雄視される。そんなこんなでこの世界の英雄になりかけていた俺。いや、もう英雄になった気でいた。
あんなことが起きるまでは…。
勇者シドロとその一行は呪いに苦しむ村へやってきていた。夜になると魔物たちがやってくるため外には出られない。村の家々はところどころ破壊され、魔物に対抗しようとし怪我をしている民もいた。
「にしても…酷い有様だな」
「そうね。こんなことをするなんて私、絶対許さない」
泣きじゃくる子供の怪我を治しながら魔道士のレインが答えた。
「魔物たちはどうやら東の洞窟からやっていているようじゃ。シドロ殿、どうかこの村を救ってくだされ」
村長は震える声で懇願してきた。
「えぇ、もちろんです!この村を絶対に救ってみせます」
シドロは力強く返事をした。
「おぉ、ありがたやありがたや。」
「よっしゃぁ!そうと決まったらさ、早いとこ東の洞窟に行って魔物どもぶっ飛ばしてこうよ!私の拳で全部打ち砕いてやる!」
ハートは硬い獣の皮と鉱物で作られたグローブをカチカチと鳴らしながら言った。
「まぁ、待てってまずは計画と準備をしてからだ」
「そうそう。ハートはすぐ熱くなっちゃうんだから」
「へいへい。」
ハートはレージとレインに嗜められて少し不服そうだ。
「あはは。相変わらずだな。」
三人はこの調子だが、いざ戦いになると途轍もなく頼りになる。レージは魔法攻撃のスペシャリスト、レインは全てのものを癒す力を持ち、ハートはとにかく拳で全てを破壊する。3人の力がなければここまでの冒険は上手くいかなかっただろう。
「よし、それじゃあ準備をしたらさっさと行くぞ!」
俺たちは準備もそこそこに洞窟へ向かうことにした。
カバンには村で貰った薬を詰めて。
「それにしても、本当に良かったのだろうか。ただでもらってしまって」
「まぁ、もらってくれって言ってるんだからもらうしかないだろう」
「勇者さま!村秘伝の回復薬と解毒薬です!お納めください」
シドロたちの役に立とうと村の人々が色々と持ってきたのだ。何度お金を渡そうとしても受け取ってはくれなかった。
「ま、魔物たちを倒して恩を返すとしよう!」
「うむ。そうだな。」
「そうだよ!絶対村を救うんだから!」
「まぁ、レインちゃんがいたら薬は使わないけどね!」
いつも通りの緩やかな道中。今から魔物を倒しに行くには少し緊張感が足りないような気もする。けれど、シドロはそんな時間も嫌いではない。
10分ほど経ち洞窟へ到着した。
「着いたぞ。3人とも、いけるな?」
「うむ。問題ない!」
「うん!回復とサポートは任せて!」
「みーんなサンドバッグにしてやる」
さっきとは打って変わって全員が戦闘モードに切り替わって洞窟へ進む。この先の村の人々を苦しめる人たちを助けるために……
これから物語は動き出します。
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