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ぷつん

ぷつん vol.3

作者: 藍沢 明

ぷつんとパソコンの画面が切れた。

どうしてこんなことになったんだ。


思えばお昼ごろから変だった。達也と弘明とご飯を食べながらしゃべっていた。

「あの授業意味わかんないよなー。」

勇樹が達也と弘明に問いかけると二人ともうなずいていた。いつもなら話に乗っかってくるのに今日は話し始めない。

「どうした、元気なくね?何かあった?」

聞いてみると達也がぎこちなく話し出した。

「あのさ……。今日何の日かわかる?」

唐突に聞かれた。

「え、授業発表とかあったっけ。」

特に思い当たることがないのでそう返す。

「いや、そういう感じではないんだけど。まあいいや。勇樹、今日の放課後、教室で待っててくれないか?ちょっと話したいことあって。弘明も一緒に行くから。」

弘明もうなずく。

「いいけど、今じゃダメなの?別に食べながらでよければ聞くよ?」

勇樹も気になり問いかける。

「いや、ちょっと長くなるから今じゃなくていい。放課後、待ってて。」

「そっか、わかった。」

それ以降も適当な雑談をして昼休みは終わった。



放課後、勇樹が二人を待っていると唐突に目隠しされた。

「は!?ちょ、何すんだよ!」

暴れようとすると腕をつかまれた。

「はなせよ!誰だよ!」

更に暴れようとすると

「ごめんな、勇樹……。」

達也らしき声が聞こえた。

「その声は達也か?離せよ、なんでこんなことすんだよ。」

「ごめん、俺たちもどうしようもなくて……。」

弘明の声も聞こえた。二人とも聞いたことのない切羽詰まった声をしている。勇樹は何も言えなくなり指示に従うことにした。

「とりあえず立って歩いてくれ。」

言われるがままに立ち上がり歩き出した。どのくらい進んだだろう、目隠しされて距離もよくわからなかったが、突然止まった。

「椅子があるから座って。」

言われた通りに座る。すると声がした。

「目隠しを解け。」

不思議なことに腕は拘束されていなかったので自力で外す。すると目の前にパソコンが置いてあった。画面には人のシルエットだけが映っており顔は見えない。声もボイスチェンジャーで変えられている。

「お前は誰だ、どういうつもりだ!」

勇樹は叫ぶ。

「なぜここに呼ばれたかわかるか?」

画面の人間が話し出す。声の感じからして男では、と頭の中で仮定する。

「さあ、わからない。」

勇樹は一応答える。

「ふん、まあいい。お前にはとある謎を解いてもらう。解かなければ出られない。」

「なんでそんなの解かなくちゃなんないんだよ。」

「解かなければ出られない。」

「そんなの、拘束されてないんだからここから見えるドアでも壊せばいい話だろ。」

「そうしても構わないが、お前の友人二人はこちらにいる。勝手に出ればこの二人はどうなるかわからない。」

「達也と弘明が?なんで!?」

「名前はどうでもいいが、とりあえず謎を解かなけば二人に会えないと思え。」

「二人はいるのか、せめて声だけでも聞かせろ!」

勇樹が叫ぶと画面は変わらなかったが声がした。

「ごめんな、勇樹。」

達也の声が聞こえた。

「まじごめん、勇樹……。」

弘明の声も聞こえた。

「二人とも無事ならよかった。なんでこんなことになってるんだ?」

二人に問いかける。

「それは謎を解けばわかる。声は聞かせた。あとは謎を解け。そうすればわかる。」

男の声が聞こえた後、画面が消えた。そして新たな画面が開いた。

「これを解け。そうすれば二人を解放しよう。」

そう言うと音声は途切れた。

「あ、おい!ちょっと待て!クッソ、切れた。なんだよ、この謎。」


□ □ □  4⃣  □ □ □

□   2⃣  3⃣  1⃣ □

1⃣  2⃣の中を見よ


左端の四角は二つとも赤色、右端の四角は青色の枠になっている。

「なんで色が変わってるんだ?」

解かなければ出られないし二人が危ない。とにかく頭を回転させる。







しばらく考えてもアイデアが思いつかず、ヒントがないかと周りを見渡す。

ボール、籠、マット色々ある。ふとカレンダーが目に留まった。1行目の四角は7つなので一週間と一致する。

「そうか、赤と青は土日の色か。そうしたら文字数的にも一致する。」


に げ か す も き ど

ち つ   い く ん


「そうなると、1が木のく、2が月のつ、だから靴の中か!」

そう思い靴を探してみると誰のかわからない室内履きが一足あった。見てみると、もう一枚紙が入っていた。



8・ 1 ・20=帽子

13・ 1 ・16=地図

18・ 5 ・ 4=赤    のとき

8・16・ 4=?

ヒントは4⃣3⃣の下

解けたらパソコンのチャットに正解を打ち込め。



「今度は数字か?にしてもなんだこれ。文字数と数字が合ってないじゃん。3文字じゃないのか?それともこれの中に共通点があるのか?」

しばらく考えを巡らせるも何も浮かばず、ヒントに頼ることにした。

「ヒントは4⃣3⃣の下……。四角は最初の謎と一緒か?あ、そこにあった番号か。」

始めの謎を見返してみる。

「水の逆だから、いすか。椅子の下?今座ってる椅子か?」

そういいながら自分が座らされている椅子の真下を見る。

「なんだ、何もないじゃん。じゃあ椅子じゃないのか?」

他の場所を漁ってみるが何も出てこない。

「椅子の下、椅子の下……。やっぱりこれ以外に椅子なんて……あ、真下じゃないのか、座面の裏か!」

急いで確認すると紙が貼りつけられていた。



ヒント

26・15・15=動物園



「これだけか。」

この短いヒントで何を思いつけばいいのだろう。

「動物園、動物園。文字数は六文字だし、漢字では三文字だけど画数とも違うし。」





数分何も思いつかないまま過ぎた。

「とりあえず動物園の言い方を変えた方がいいのか?ひらがな、カタカナ、あとは英語か?そうするとZOOになるな。これは3文字だ。ん?Zが26?」

はたと思い当たる。

「確かアルファベットって26文字だよな?そしたらZは26であってそうだし、Zの後はOが2つ続いてるから15、15で番号が連続なのも合ってる。」

アルファベットを順番に思い出し数えていく。

「L,M,N,Oだから、確かに15だ!そうしたら元の謎も英語にしよう。」

紙を見ながら整理していく。

「ぼうしはCAPか?いやHATの可能性もあるから保留で、地図はMAP、赤は絶対REDだな。てことは帽子と地図の三文字目が一緒じゃないから帽子はHATの方だな。そしたらまとめてみると……。」

親切にもパソコンの近くに鉛筆があったので紙に書き込んで整理する。


8・1・20=HAT

13・1・16=MAP

18・5・ 4=RED   のとき

8・16・4=?


「こうなるから、8がH、16がP、4がD。答えはHPDか。なんかの略称か?」

他のものが日本語から英語に変換できるということはHPDも日本語に戻せるはずなのだが思い当たらない。とりあえず、パソコンへ打ち込んだ。

「HPD、と。これでどうだ!」

少し間が空き、正解と返答があった。そして唐突にドアが開いた。開いた音に驚き思わず手をかざすと、人が入ってきた。

「ハッピーバースデーテゥーユー ハッピーバースデーテゥーユー ハッピーバースデーディアゆうきー ハッピーバースデーテゥーユー!」

歌声と共に入ってきたのは達也と弘明だった。二人とも無事だったようだ。

「二人とも、無事ならよかった。でもなんで歌いながら?」

「いいから、とりあえずふーってして!」

「いや、ケーキもろうそくもないし。持ってるのケーキの絵じゃん!」

二人が持っているのはケーキではなくどこで印刷してきたのかケーキの絵だ。ご丁寧にプレートの名前はちゃんと「ゆうき」になっている。

「学校にケーキ持ち込めないんだから、仕方ないだろ。ろうそくも火気厳禁だし。ほら、消すどうさだけでも!」

言われるがままに勇樹はろうそくを吹き消すしぐさをした。

「ふーーーっ」

「おめでとう、勇樹!」

「ありがとう。いや、二人とも捕まってたんじゃないの?」

「それに関しては……テッテレー!ドッキリ大成功!」

そう言いながら達也はドッキリ番組に出てきそうな札のミニチュア版を出してきた。

「え、じゃあ捕まってなかったってこと?」

「まあ、そうだね。だましてごめん。」

達也が謝ってくる。

「え、なんでこんなこと?」

「だってお前、自分が誕生日なの忘れてるし。」

「そんなことないけど。今ハッピーバースデー歌われて思い出したし。」

「それまで忘れてたんだろ!?昼休みに聞いた時も何の日かわからないっていうし。誕生日なの覚えてたら少なくともいうだろ。」

確かにその時は忘れていた。というか自分の誕生日に執着のある方ではない。

「去年も誕生日なの忘れてさっさと帰っちゃったから、今年こそはちゃんと祝いたいよなと思って。」

弘明も続ける。

「だからこんなよくわかんない謎解き仕組んだの?」

「そう。」

「いや、手が込みすぎだろ。ていうか連れていかれるとき怖かったんだけど。マジで死ぬかと思ったんだけど。」

「いや、申し訳なかった。」

弘明が頭を下げながら言う。

「大体、なんでこんな場所使ってるんだよ。ちゃんと許可とったのか?」

謎を解いているときはわからなかったが体育館の倉庫の一角をうまく区切って勇樹を座らせていたらしい。先生たちに怒られそうだ。

「それは体育の先生に許可とったよ。どうしても驚かしたい奴がいるんです!!って。そしたら先生がノリよくて貸してくれた。」

「パソコンは?」

「どうしても使いたいって頼んだら放課後まで先生が預かるっていう条件で持ち込みOKにしてくれた。おかげで色々できたよ。」

達也が自慢気に話してくる。

「なるほどな。先生が優しくてよかったわ。とりあえず、誕生日にドッキリを仕掛けたっていうのはわかった。でもHPDってなんだよ。誕生日と関係ねーじゃん。」

二人に問う。

「それはハッピーバースデーの略だろ。」

弘明が答える。

「誕生日ってHappy Birth Dayの頭文字をとってHBDだろ?なんでP?」

達也が少し考えた後ばつの悪そうな顔で

「あ、おれハピバのつもりでアルファベットにしちゃった。」

と答えた。

「いや、それだったらHPBだろ。」

勇樹が思わずツッコミを入れる。

「あ、本当だ。俺ハピバとハッピーバースデーが混ざって間違えてたみたい。」

「俺も気づかなかった。」

達也、弘明二人ともが自覚がなかったらしい。

「だからHPDなんて意味ない言葉になったのか。おかしいと思ったんだよ。それだけ何の日本語にも変換できなかったから。」

「そう、本当はHPDでハッピーバースデーって答えが返ってきたら正解にするつもりだったんだけどなんかアルファベットで返ってきたから正解にするか弘明と迷ったんだよ。」

「だから正解って返ってが遅かったのか。」

「そう。いやーびっくりした。でもよかったサプライズできて。」

「びっくりしたのはこっちだよ。ていうか手が込みすぎだし。驚かしすぎだろ。」

本当に死ぬかと思った。勇樹は小さくつぶやく。

「ごめんごめん。お前去年も誕生日忘れてたから今年こそは思い出してもらおうと思って弘明と計画したんだよ。なあ?」

「そうそう。ちょっとやりすぎかなとは思ったけど。どう?誕生日覚えられそう?」

弘明がニヤニヤしながら聞いて来る。

「いや、覚えるも何も……。今日のことは覚えてるよ。」

こんなことがあった日、一生忘れねえよ。



ちょっと謎解きが書きたかった。

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