1話 ここがキャッツカフェ!
『キャッツカフェへようこそ!
お困りのことがございましたら、どうぞキャッツカフェへお立ち寄りください!
どのような種族の方でも歓迎いたします。
貴方の悩みが解決するお手伝いをさせていただきます。
もちろん、本業であるカフェとして珈琲などの提供もしております。
場所は簡単! 今ある地図の真ん中、東の外れ!
ご用命はキャッツカフェへ!』
ジジ……ジジジジッ……。
ラジオのような電波に乗せて明るい声が響いている。それが、誰に届いているかは、発信元である、キャッツカフェではわからないだろう。だが、誰かに届いているという望みをかけて、呼びかけているのだ。
「ソマリ、そのへんでいいよ〜☆ありがと」
マイクに向かって話しかけている少女の肩をポンッと軽くたたき、声をかけたこちらも同じく少女がいた。
「店長! お安い御用ですよ!」
マイクごしに話していた少女が振り返った。狐のような大きな目で店長を見た。
「いつも、意味があるかないかわかんないことさせてごめんね」
店長の名前はコラット。今ラジオを流していたのがソマリだ。
「店長のためなら、いつでもやりますよ! きっと、誰か聞いてくれていますよ!」
「ソマリの美声を聞いてくれている人がいるって信じよ☆ また、頼むね〜。今日はお店に戻って」
「はーい!」
猫特有のふんわりした音のない動きで彼女は放送用に作られたブースをソマリは出て行った。
「伝わればいいにゃん……」
店長であるコラットは、遠いところを見ながら言った。
「ここは理想を実現する場所、キャッツカフェ。前の店長から受け継いだ思いは私がしっかり実践するにゃ☆」
一人ごとにも☆がつくようだ。コラットは律儀な猫である。
「前の店長が結婚退職して、このカフェを引き継いだけど、なかなかお客さんが来ないにゃ〜」
「前の店長の時は繁盛してたらしいのにね」
「なかなか無理にゃ〜やっぱり信頼性が乏しいのかもにゃ〜」
「しかも、前は、主要な種族の狼、シロクマ、ペンギン、フクロウもいたらしいじゃないですか。猫に偏ってるうちらじゃ、太刀打ちできませんよ」
「先代が偉大だと、後代は苦労するね」
「まったくだにゃ〜。まあ、まったりやるにゃ〜」
キャッツカフェのメンバーが雑談している時、カフェのドアを開ける人がいた。
「こんにちは、あの、ここが何でも屋って聞いて、依頼したいことがあってきました」
そのには、羊の女の子がいた。
「私のフィアンセが行方不明になってしまったんです。探して欲しいですが、彼の両親でさえ諦めていて……私はどうしても諦められなくて」
彼女はそう言って泣いていた。
「どういうことか、詳しく説明してほしいにゃん!」
コラットは久しぶりの依頼に目を輝かせながら、鼻息を荒くした。