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戦国生存記  作者: 現実逃避
99/180

99、永禄の変

新春お慶びを申し上げます。

今年もどうかよろしくお願い致します。


年内で完結致します(予定)ので最後まで読んでいただけると嬉しく思います。


また、感想等頂けると執筆の励みになりますのでよろしくお願い致します

永禄八年(1565年)5月末

上田城


寿桂尼暗殺の報から数日後、俺の目の前で孫六と望月出雲が揃って頭を下げていた。

「・・・では、全員殺されたと見ていいか?」


「はっ....」


「申し訳ございません!!」


俺は勘助の件があったので寿桂尼の居る今川館周辺に追加で間者を送り込んでいた。

合計十人....。その十人全員の行方が判らなくなっているのだ。

駿河に居る全ての間者ではなく、今川館周辺の者達だけがだ。


「分かった・・・。消えた者達の家族には手当てを出してやれ」


「ははぁ...。ありがとうございます」


孫六と望月は伏して頭を下げた。

ちなみに望月が居るのは消えたのが望月の配下達だからだ。


「・・・孫六、出雲。殺った奴らを徹底的に探しだせ...」


「「ははぁ!!」」


二人は伏して頭を下げた。特に望月は涙を流していた。


「さて、現状だが・・・最悪だな...」

俺が言うと集まった重臣達も暗い影を落としていた。

ちなみに今の重臣はと言うと...


三家老(重臣よりも上)

工藤昌祐(筆頭)

真田幸隆

出浦清種


重臣

工藤昌豊

馬場信春

鵜飼孫六

長野業盛

須田満親

保科正俊

大熊朝秀


と言った感じだ。

保科は金山城が出来た後美濃を任せることにしており、大熊は年老いた南条が信濃に戻る事を希望したので三河の取り纏めを任せる為に重臣としたのだ。ちなみに須田と清種が推薦してきた。


後、最近は影の薄い満親は、重臣ではあるが実際はまだ奉行衆筆頭だ。ただ、父親の満国が重臣だったので席は残している。それに甲斐を任せきっている。



「今川は氏真と朝比奈が急ぎ戻り、武田信虎を捕縛し牢に入れているようです」


「また、武田に対して今回の件で根絶やしにすると周囲に話しているようで、北条に使いを送っているようにございます」


清種と孫六が駿河の情報を教えてくれた。

寿桂尼の亡骸と一緒に信虎が帯刀している刀が残されており、そのせいで信虎が殺ったと考え牢屋に入れたそうだ。何とも分かりやすい偽装だ。


(だけど、氏真には通じたのか...。はぁ~。福もショックで倒れてしまったしどうするか..)


「三河の徳川ですが、今川方の城を攻め続けております。今は岡部殿、蒲原殿が何とか防いでおりますが、寿桂尼の死が伝わった為か将兵の動揺が激しく押され始めております」


大熊の説明で、やはり徳川が仕掛けたのかと皆考えていた。


「しかし、あからさま過ぎるな~。俺達も邪魔され動けなかったし。一体黒幕は誰なんだ?」


俺が言うと皆考え出した。

一番最初に思ったのは武田の自作自演、次に徳川だ。


だが、自作自演にしてはあまりにも信玄が動揺し、家中が分裂の危機にまでなっている。信玄が本当に考えたのなら先に手を打っているはずだから。


次に徳川だが、状況から考えての結果だ。一番利を得ているからだ。


「はぁ...。恐らく武田と今川で戦になろう...。皆、国境の守りを固めておけ。それと、もし民百姓が逃げてくれば、保護はしてやれ。それと、いつでも出陣出来るよう準備を怠るな...。今後の動き次第では甲斐、駿河、遠江に一気に攻め込む」


「「ははぁ..」」


全員が頭を下げたので評定は終ることにした。

その後、三家老と大熊を残した。


「さて、大熊。残って貰ったのは他でもない。まだ徳川から使者が来たりはしているのか?」


「はっ!何度も来ておりますが御指示通り、今川との関係がある為突き返しております」


家康からは何度も使者がやって来ていた。特に俺が尾張に行った後からだ。

恐らく、今川と手を切る為に尾張に行ったと思ったのかもしれない。


まぁ、寿桂尼にも織田と同盟と誤解させたから仕方がないか...。

(まぁ、寿桂尼が死んだ今、尾張も東海も俺達が全て貰う..)


「一度、話を聞いてみるか?相手がどういう風に考えているのか知りたいしな」


「でしたら、徳川に使者を送りますか?」


「いや、今送っては却って今川や他の国に疑念を持たれる。送るべきではない」


「でしたら、三河に行っても不自然ではない者を送ってはどうですか?」


幸隆が提案し、数名名前を上げた。

確かに、不自然ではないし、もしもの時は切り捨てられると判断した。


「では、幸隆、大熊と共にこの件を進めてくれ。清種は引き続き今川と繋ぎを続けてくれ」


俺は非公式に使者を送ることにした。家康をよく知っている人物だ。まぁ、行きたがっていたから丁度良いだろう。

後は使者からの報告を待つことにするのだった。


勘助の件から不安定な情勢が続く中、京では歴史に残る大事件が起こるのだった。



永禄八年(1565年)6月

京 二条御所


「...来たか..」


義輝は主な近臣達を集めていた。数は三十名程だが、皆義輝と共に死ぬ気だ。

御所は既に三好の兵に囲まれ、直ぐにでも襲いかかろうとしていた。


一刻前に、義照の忍で福禄屋の佐治から三好が兵を連れて御所を攻めると言う情報を得て避難しようとし一度は御所を抜け出る。


しかし、一部幕臣達から「権威を失墜させる」、「上様に手を掛ける訳がない」と反対され戻ってきていたのだった。

だが、自身の嫡男は自身が誰よりも信用できる人物に書状と共に預け、母の慶寿院と正室の藤(近衛)は近衛屋敷に戻し安全を確保している。


ドドドドドドドン!


鉄砲の音と共に三好の兵が御所に流れ込んで来た。幕府側も必死に抵抗するが圧倒的な戦力差の前では為す術が無かった。


「さて皆の者、別れの盃は済んだな。それでは最後に三好の者共に我らの意地と生きざまを見せつけてやろうぞ!!!」


「「おおおおおおお!!」」


義輝はそう言うと盃を割り、太刀を取る。


そして、残った近臣達と共に三好の兵を相手に戦うのだった。


「ぎゃぁぁぁ!」


「て、敵は少ない!囲んで仕留めろ!」


「グハッ!」


「ガハッ!!」


(あぁ...自ら(義輝)戦場で刀を振るうとはこうも心地良いものだったのか)


義輝達は必死に三好の兵を殺していった。

義輝自身太刀を振るい、三好の兵のみならず、武将までも討ち取っていった。

その剣の腕前は凄まじく、三好方を圧倒し味方を鼓舞するには十分だった。


しかし・・・・


「危ない!!」


「上様!!」


「放て~!!」


ドドドドン!


「ガハッ!!」



剣や槍では勝てないと思った三好側は、鉄砲を撃ち込んできた。しかも、味方もろともだ。


「くっ!」


義輝は近臣達によって守られたが、貫通した一発の弾丸が肩を撃ち抜いていた。


「良し!あれではまともに刀を振るえまい!一気に討ち取れ!」


「「うぉぉぉぉ!!!」」


「上様をお守りしろ!!」


迫り来る三好の兵に生き残っていた近臣達は主を守ろうと必死に抵抗した。しかし、全員負傷しており、一人また一人と討ち取られていた。


「ここまでか...。藤延、まだ生きておるか?」


義輝は鉄砲から自身を守った近臣の一人に問いかけた。

進士藤延は鉄砲をもろに受けた為瀕死だがまだ生きていた。


「ゴホッ!!・・申し訳ありません。体が思うように動けません。最早御守りすること叶いませぬ~」


「すまぬ。最後の命じゃ。それに火を付けよ..」


「か..畏まりました..。上様..あの世でもお供致します~」

義輝は藤延の側の死んだ近臣が持っていた炮烙玉に火を付けさせた。福禄屋の佐治から譲り受けた物だ。


(あの世か....。フフ、閻魔(義照)が来るまでワシが皆と治めてやるか!)


「さぁーて。三好の外道共!!我が首欲しくばかかって来い!!まとめて地獄に送ってくれるわ!!!」


「行け!行け!!」


三好の武将は兵達に突撃させた。しかし御所の中なので全員が一気にかかることが出来ず、義輝は負傷しながらも一人また一人と討ち取っていった。

刀が折れれば、義照から習った体術で向かってきた兵士を投げ飛ばし刀を奪い、また敵を切り捨てていく。


そんな様子を見て三好の武将は鉄砲を持っている者に弾込めさせると再度容赦なく撃ち込んだ。


ドドドドドドン!!!!!


「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」


「ガハッ!!」

再度、味方もろとも撃ち込んだがそのお陰か今度は義輝を多くの鉄砲の弾が襲った。


義輝は崩れ落ちそうになるが持っていた太刀を突き刺して何とか立っていた。


「ば、化け物だ...」

何発もの鉄砲に撃たれたのに倒れない義輝を見て恐怖した三好勢は少しずつ後ずさりしていく。


しかし、この時義輝の意識は殆ど無くなっていた。

(あぁ....これがワシの最期か...)


最後に目にしたのは死んでいるが勤めを果たした藤延だった。


藤延の側の炮烙玉の導火線に火がつけられていた。藤延は最後の力を振り絞って付けたのだった。


(よく..やった.....)


義輝は力尽き、崩れ落ちるように倒れるのだった。三好勢は恐怖のあまり義輝に近付けなかった。

そして、導火線に火をつけられた炮烙玉は爆発し、三好の兵を巻き込むのだった。


爆発のせいで御所は崩れ炎に包まれる。

火が消えた後、三好勢は必死に遺体を探したが義輝を含めて、近臣達の遺体が出てくることはなかった。


義輝の最後は運良く生きていた三好の兵によって語られ、その最期は京のみならず、人から人へ日ノ本中に語り継がれ、多くの者に影響を及ぼすのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 明けましておめでとうございます! 元旦から更新ありがとうございます。
[一言] 元日からアップしていただき、ありがとうございます。 年内で完結予定ですね、最後まで楽しみにしています。
[一言] うーん、ボンバーマン義輝
感想一覧
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