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戦国生存記  作者: 現実逃避
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77、援軍

永禄三年(1560年)七月

上田城


俺の元に箕輪城の長野殿から使者がやって来ていた。

この混沌とした情勢で北条が動いた為だ。


「これ以上我らだけで北条に対抗仕切れませんのでどうか、直ぐに援軍を差し向けて頂きたくお願いに参りました」


使者の話だと今までは何とか守ってきていたが、調略や裏切り等で東上野は完全に北条側に付き、西上野の長野殿達に襲いかかってきたそうだ。てか、今まで単独で北条とやりあっていた長野殿はやはり化け物だ。だが、やはり歳には勝てず遂に倒れてしまったので援軍を求めて来たそうだ。


俺は直ぐに承諾し、真田幸隆を大将、副将を馬場信春にし小県郡と佐久郡を中心に一万五千の軍を送ることにした。

それだけ居れば十分だろう。


ついでに、輝忠の初陣もさせることにした。大将にしていないのは、幸隆の采配を学ばせる為だ。

・・俺はしばらく一人になりたい....。



その頃尾張では...。


「かかれ!かかれ!」


「「うおおぉぉぉぉ!!」」

織田信長率いる織田軍が鬼柴田を先鋒にして岩倉城を攻撃していた。義龍死去と美濃の情勢を聞いた信長の行動は早く、清洲城復旧よりも岩倉城攻めを優先し強行したのだ。


それも、急に家督を継いだ龍興はまだ国衆をまとめることが出来ていないと考えて尾張奪還の為だった。

実際、美濃は混乱したままだった。


「本丸が落ちたぞ~!!」


「伝令!!織田信安親子を討ち取りました!」


「勝ち鬨を上げよ!」


「えいえいおぉぉぉぉ!!」


信長は岩倉城を落とすと勢いそのまま犬山城に向かった。しかし...。


犬山城

「放てぇぇぇ~!!」


ドドドドドン!!


「ぎゃぁぁぁぁ!!」


岩倉城襲撃の知らせを聞いて援軍に駆けつけ犬山城で補給していた明智光秀率いる美濃鉄砲隊によって多くの犠牲を出すのだった。

光秀達は犬山勢と共に岩倉城に向かうはずだったが、岩倉城の落城が早かった為、犬山城防衛に切り替え待ち受けていた。



「これまでか...。全軍撤退する」

信長は落とせないと判断し撤退するのだった。戦果としては最低限確保した形だ。




「敵は退いてくれるようだな」


「火薬が保ってくれて良かったです」

清実と光秀は織田軍が退くまで火薬と弾が保ってくれて安心した。と言うのも斎藤家は村上家から安く大量に鉄砲を入手したが、火薬だけはどうしても手に入り辛かった。


義照は火薬だけは何処にも売っていなかった為、斎藤家も独自で商人から買っていたが値段がかなり高かった。


「次はここまで撃つことは出来ませんが、しばらくは織田軍も攻めてこないでしょう。今川との戦の被害はかなりのものですし」


「そうだな。お主や長井殿が言うように復旧を急ぎ守りを固めよう。今回は助かった」


光秀は数日程犬山城に滞在したが織田が完全に手を退いたので美濃に戻るのだった。



永禄三年(1560年)七月末


義龍の葬儀の代理と情報共有のために向かわせていた筆頭家老の昌祐と重臣の孫六が戻ってきたので詳細を聞いた。


本音を言えば俺自身行きたかった...。

義龍が死んだと聞いた時は保科達のことがあったので直ぐに動いたが、内心ショックが大きかった。


その為か、暫く食事があまり喉を通らなかった。初めはただの父親に対する愚痴の言い合いだったが、互いに父親に振り回され苦労しておると分かってから意気投合し、心の友とも呼べる程親しくなった。

俺からしたら転生したこの戦国時代で唯一友と呼べる存在になっていた。


義龍の急な死の影響は大きかった。

まだ幼い龍興は内政や家臣達について良く分かっておらず、龍興に付いていた評判の悪い斎藤飛騨守を重用し始め、斎藤六宿老(安藤守就 氏家ト全 稲葉良通 長井道利、日根野弘就 日比野清実)との仲が日々険悪になっているようだ。

それでも、大叔父でもある長井は龍興を盛り立てようと必死に努力しているようだ。


しかし、せっかく奪った岩倉城をもう取り返された。今尾張を攻めれば間違いなく織田は終わりを迎えるだろうがそれも出来ないとは……。


(俺なら無理をしてでも尾張に攻め込んで家臣や国衆をまとめるのにな...)


「殿、実は稲葉殿から書状を預かっております」

昌祐はそう言って書状を渡してきた。

内容を確認して俺は悩んだ。


書状にはもし、龍興がこれ以上愚かなら道三か斎藤利治(新五郎)を美濃に戻して欲しいと言う物だった。

二人は書状の内容を知らないようなので恐らく稲葉の独断だろう。


「孫六、済まないがもう一度稲葉殿の所に行ってくれ。書状の内容に関してだが斎藤六宿老全員の署名が入った起請文を出してくれたら受け入れると伝えてくれ」


「畏まりました」

俺としては義龍との約束があるので受けたくはなかったが、道三を追放した六人の署名があれば還すことにした。

ちなみに利治は輝忠の近従として今回の初陣から付けている。利治も一緒に初陣である。



永禄三年(1560年)九月

尾張那古野城


清洲城を失い、那古野城に拠点を移していた信長は苛立っていた。

「清洲城と城下の復旧ですが..殆ど破壊されているため、一から城を建てるのとあまり変わらない銭が必要になります...」


「熱田は無理だが津島の商人から臨時の矢銭を取って対応しろ。それと、復旧は最低限としろ」


「殿、兵士に関してですが、今川、斎藤との立て続けに戦を行った為、今掻き集めたとしても三千にも満たないです」


「また、今回臨時で徴兵した農民兵の犠牲が多く田を作り税を納めることが出来ない村が多くあります」


「それと、今川、武田による乱取りの被害の全容が判明しました。熱田及び常滑、知多方面は人を残して持てる物は全て持ち去られておりました。また、家屋などは全て火が付けられ、襲われなかった寺社を除き、まともな建物は数える程しか残って居りませんでした」


「やむを得ん。此度被害が大きかった農地は税を免除し、それ以外の土地でも税率を三割とせよ。また、兵に関しては三男四男等から常備兵として集めよ」


信長は今川の大軍に苦しみながら勝利し、これからは尾張をまとめ、美濃に攻め込む気でいたがまさか美濃から攻められるとは思っても見なかった。

義龍の情報操作が信長の諜報を越えていたと言うことだった。


しかも、義龍が死んで美濃は混乱していると情報を得て岩倉城、犬山城を取り返そうと無理をして出陣したが犬山城で美濃鉄砲隊に散々な目に遭わされ、更に被害を大きくしてしまった。

そして止めに武田と今川の乱取りによる被害があまりにも大きいことに苛立ちを隠せなかった。


(美濃にあれ程の鉄砲があるのは分かっていたが、火薬もかなりの量を持っている...。今の織田では勝つのは厳しいだろう...。やはり、調略で少しずつ崩していくしかないか....)


信長は今回の失敗を反省し、次の方法を考えていった。

斎藤龍興と斎藤六宿老の間に亀裂が出来かかっていることは分かっていたので、家臣に調略を行わせると共に新しい同盟相手を探していた。


(東は三河に戻った竹千代(松平元康)が独立すれば同盟相手とすればいい。彼奴は必ず独立するだろう。三河の今川憎しは深いからな……。問題は……斎藤家と今川家の同盟国村上がどう動くか……)


信長は何度か同盟しようと繋ぎを作ろうとしたが、義龍と義元と同盟しているのでと拒否されていた。また同盟を諦め道三を引き取ることも交渉しようとしたが全面的に拒否され、連絡を取り合うことが出来なかった。


「何を難しい顔をされているのですか?」


一人悩んでいた信長の元に一人の女性がやって来た。


「帰蝶か...。美濃と村上のことを考えていた」


「村上ですか?父上(道三)が預けられている所ですよね。それに、死んだ義龍とかなり仲が良かったはずですね?」

帰蝶が言うと信長は頷いた。


「美濃を調略するのに舅殿(道三)が入ればやり易いと思うてな。しかし、どうやっても連絡を取り合うことが出来ない。何か良い方法は無いかと思うてな」


信長は道三が一定の支持を持っていることは知っており、調略に利用できると思っていた。しかし、道三とは完全に面会謝絶で会うことや文を渡すことも出来なかった。忍を送ったが戻ってきたのは首だけだったのだ。

しかも御丁寧に那古野城の庭に並べられていた。


帰蝶は少し考えてから一つ思い付いた。


「殿、私が参りましょうか?妹の桔梗が嫁いでいますので妹に会うと言うことにしついでに父に会えるよう妹に働きかけてみましょうか?」


帰蝶は自ら出向いて繋ぎになると言ったのだ。

しかし信長は帰蝶を村上に送る方法で悩んだ。帰蝶はその方法については信長に丸投げし、信長は思い付かなかったので家臣に丸投げし、任せられた家臣は無理難題に悲鳴を上げるのだった。





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