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戦国生存記  作者: 現実逃避
73/180

73、婚儀と上洛

永禄二年(1559年)五月

上田城では久し振りに大騒動で準備をしていた。


と言うのも俺の嫡男輝忠と斎藤道三の末娘桔梗との婚儀のためだ。道三追放の際にどうするか話し合ったが予定通り行うとしたので、明日その約束が果たされるのだった。


今回の婚儀は父義清が俺に家督を譲ると言ったので、輝忠は将来村上家の当主になるので来客も多かった。


長尾家から重臣直江景綱と一門の長尾政景、西上野からは長野業正様本人、今川家から重臣庵原忠胤、幕府から三淵藤英、細川藤孝兄弟、朝廷から義弟近衛前久、舅九条稙通といった感じた。稙家と兼照は京に居残りらしい。舅(稙通)の代わりに帰って来て欲しかった・・・。


幕臣の二人は義輝の名代で来たそうだ。本当は本人(義輝)が来ようとしたらしい。

来たら大迷惑だ!!!



他にも各地の繋がりのある商人がやって来た。しかし、宴の際にとんでもないのが紛れ込んでいたのだが俺はその時まで気付かなかった。



翌日、斎藤家から義龍と長井、日根野、稲葉がやって来た。


「義龍、待っていたぞ!・・・噂で聞いたがやはり、具合が悪いのか? 」

義龍はやって来ていたが少し顔色が悪そうだった。


「なに、風邪を拗らしただけだ。問題ない。それよりも、これで全ての約定を守ることになるな!」


俺は頷き、道三と頼芸に会うかと言うと、宴の際に会うから会わないと言った。二人とも一応宴には呼んでいた。特に道三からしたら実の娘でもあるからだ。


婚儀は無事に終わり、宴が始まった。

・・・そして俺は宴に参加した者達の顔を見渡して絶句した。一人、呼んでないしいつの間にか、しれっと紛れ込んでいたからだ。


俺は上座の方にいる来客の相手をしていきそれが終わると下座の方にいる商人達の相手を始めた。そして来ていた津田宗久の隣にいる人物の前に来た。


「よぉっ!」


「・・・・よぉっ!じゃないですよ。師匠いつの間に紛れ込んだのですか?前の二人に見つかりでもしたら...」

来ていたのは商人の格好をした茶の湯の師匠である松永久秀だ。


幕臣の三淵と細川の二人は上座の方に座っており、商人達は一番下座の方だったのでまだ気付かれていないようだった。


「フフフ、堂々と門を通ってやって来たが?何、あの節穴だらけの二人にこのワシが見つかると思うてか?」


久秀は笑いながら言ってきた。話がしたいと言うことで後日別に部屋を用意すると言って俺は離れた。

正直、胃が痛くなった。


宴はその後も続いた。義龍は土岐頼芸や道三と話していた。その後、今川家の庵原と話をしていた。多分、対織田でも話したのだろう。


輝忠は義弟の前久や祖父の稙通と話した後、三淵と細川の二人に捕まっていた。


暫くすると酔いが廻ってきたのか、どんどん賑やかになってきた。


「どれ、ワシが婿殿(輝忠)に舞を見せてやろう!槍を貸せ!!」

道三が舞を踊ると言って槍を求めていた。


家臣が俺に確認してきたので許すことにした。ただし、義龍と頼芸には護衛として上泉秀綱と秀胤を付けた。

無いとは思うが念のためだ。


槍を道三に渡すと見事な舞を踊って皆を驚かしていた。

特に俺の横にいる義龍は見とれていた。父である道三がこのように舞うこと等見たこと無かったからだろう。


逆に土岐頼芸は召し抱えた頃を思い出したのか苦い顔をしていた。

舞が終わると拍手喝采だった。それほど道三の舞が凄かったからだ。


「義照!其方も何か見せてみたらどうか?」

道三に、無茶振りされた...。


(視線が俺に集まってるが、どうしたものか....。)


俺が悩んでいると隣に居た千が声をかけてきた。


「殿、以前やられていた舞を踊られたらいかがですか?」


千が何のことを言っているか分かるのは俺だけだ。


千には何度か見せているが他の人前で踊ることなど無かった。と言うか恥ずかしくて踊れるか!


「ほう、義兄上(義照)は何か隠し事があるようで...。これは見せて貰わねば集まった皆は帰れませんな~」


(前久めぇぇぇぇぇぇぇぇ~!!!)

前久はわざと言ってきた。周りもそうだそうだと言うのだった。しかも、一部父の家臣等も紛れていた。貴様等、後で覚えておけ・・・。


俺は諦めた。なので、千には笛を取りに行って貰った。

千は琴に笛に鼓と楽器は何でもやれていた。ホント、出来た妻だ。


千が笛を持って来て、こちらも準備が出来たので、恥ずかしながらも舞うことにした。

俺が披露したのは鬼剣舞だ。と言っても、うろ覚えなので俺が好きに踊っているだけだ。千がそれに合わせて笛を奏でたのだ。


確か、鬼剣舞はこの時代には既にあるはずだ。機会があればまた見てみたいと思う。


多分、動きが激しく圧巻だろう。道三の舞より激しいからだ。

俺が踊り終わると誰も何も言えなかった。

(誰か何か言ってくれ~)


「何とも、激しい舞であったな~」


「誠に..。舞と言うよりは神楽に近いかのぉ~」


「いや~しかしこのような舞を隠し持っていたとは...。千、婿殿(義照)はいつ、このような舞を舞っていたのか?」


公家二人の反応に隣に居た者と話し出した。


「そうですね...。輝忠がまだ幼い頃はたまに踊られてましたね。今は全く見ませんね~」


千は思い出しながら答えた。側室の岩と福は全く知らなかったと拗ねていた。


そりゃそうだ。うろ覚えだし、恥ずかしいからそんなに踊るか!

俺は恥ずかしくて顔を赤くしながら酒を飲み干した。


宴はその後も続いたが暫くして終えるのだった。


翌日、俺は茶室で茶を点てていた。


「フム。及第点と言ったところじゃな」


「そりゃ、まだまだ師のように茶を点てることは出来ませんよ..」

俺は茶を点て、師である久秀に採点されていた。


「それで、久秀殿が来られるとは一体何事ですか?」

俺が聞くと書状を渡してきた。中を確認したら長慶殿からだった。

内容は将軍を大人しくさせて京を建て直すのを手伝ってくれと言うものだった。


俺は、ここに居た頃の義輝を思い出し、無理だなと思ったので丁重に断った。しかし久秀は諦めずに言ってきたので、京に行った際には相談に乗ると約束してやっと解放された。


最後に久秀に茶を点てて貰った。

弘法筆を選ばずとはこう言うことかと思い知らされた。俺が普段使っている茶道具なのに俺なんかより格段に茶が美味しかったからだ。

久秀は他の商人達に紛れて帰っていくのだった。



永禄二年(1559年)六月

俺は輝忠の婚儀後も残っていた前久と稙通と上洛することになったので準備を進めている。

と言うか、朝廷よりお願いと言う命令が来たからだ。


(前久の奴、持ってるなら先に渡してくれればいいのに...)


上洛軍は九千とし今回は輝忠も連れていくことにした。

ついでにもう二人にも声をかけてみた。

斎藤道三と土岐頼芸だ。

土岐頼芸は直ぐに行くと返事をし、道三は残ると言った。なので、何時もの三倍もの監視を付けて置くことにした。蝮から目を離すと何をされるか分かったものではないからだ。


それから十日後。

俺は九千の兵を率いて上田城を出立した。

主な家臣としては上泉秀綱、真田幸隆、工藤昌豊、馬場信春、甘粕景持、等と輝忠の家臣団だ。


昌祐には残って貰い、いない間の全権を委ねた。正直、昌祐と昌豊、幸隆の三人なら丸投..全権を委ねても安心していられる。特に昌祐は昔から居てくれるので信頼している。


不安があるのは北条の動きと甲斐に燻る火種だ。甲斐は須田に任せて改革をしているので大丈夫だとは思うが・・・もしもの時は昌祐が何とかするだろう。



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