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戦国生存記  作者: 現実逃避
66/180

66、道三追放

天文二十四年(1555年)九月

尾張


信長は斎藤家が村上家と同盟したと聞いてから村上家を調べていた。昨年の戦で連合軍に勝利し信濃を支配下に置いていった為、同盟出来れば今川家に対抗することが出来ると考えていたからだ。


しかし間者では容赦なく始末されると聞いていたので商人を通じて調べた。

尾張に来る商人から聞けば海が無いが熱田に劣らない程活気があり金回りも良く、安心して商売が出来ると聞いた。

軍備等は分からなかったが、自国で鉄砲を量産しており、かなりの鉄砲を所持していることが分かった。


ついでに道三に紹介された大黒屋勘兵衛が義照から財政管理を任されておりかなり信頼を得ていると分かり、この大黒屋勘兵衛を調略して同盟を結べればと思っていた。

だが、信長は知らなかった。この情報は義照の指示で陽炎衆がわざと流した情報だった。


「猿、お主は大黒屋勘兵衛と面識があったな。村上家へ推挙されそうだったと」


「ははぁ!しかし、村上家の陽炎衆に素性を調べられ、半ば追い出されましたので...」

猿と呼ばれた男は大黒屋に潜り込んでいた藤吉郎だ。


「其方に命ずる。信濃の大黒屋に行き大黒屋勘兵衛を味方に付け村上義照に接触し同盟を結べるようにせよ」


「え?は、ははぁ!あ、あの殿、銭管理や蔵の管理についてはどうすれば?」


藤吉郎は急な命令に従いつつも今している財政管理と在庫管理をどうすれば良いか聞いた。と言うのも大黒屋でやっていた管理方法を信長に報告したら織田家で取り入れることになったのだ。それの指揮と指導を藤吉郎が任されていた。


「もう一年も経つ。他の者でも出来よう。任せてから直ぐに向かえ。それと、奴に書状を渡せ。俺からだと伝えるのを忘れるな」


「ははぁ!!」


藤吉郎は今やっている仕事を弟(小一郎)に任せ信長の書状を持って再び信濃に向かう準備をするのであった。



弘治元年(1555年)月

美濃


「ようこそお越しになられた。義龍様は奥の部屋でお待ちに御座います」


「かしこまった。案内を頼む」


美濃に着いた馬場信春は義龍と側近に面会した。

その際義照から預かった文を直接義龍に手渡した。

義龍は文を読んで苦い顔をし、溜め息を吐くのだった。


「義照に伝えてくれ。この条件は全て飲むとな。それと、道中、父(道三)のこと頼むぞ」


「ははぁ..。殿(義照)より道三様を預かるまでは義龍様の指示に従えとの御命令ですので我らに指示していただけたら従います」


義龍が読んだ文には道三に味方した者は一度は許し、道三を預かる間、生活資金を出してくれ、後、同盟については対等にすることとあったのだった。


同盟についてと、道三の生活資金については別に問題無かったが味方した者を一度許せと言うのは少し不快に思ったが織田との戦で使い潰せばいいと考えた。



「日根野、長井、実行すると皆に伝えよ」


「「ははぁ!」」

義龍の側近二人は直ぐに部屋を出て動き出した。


数日後

鷺山城に西美濃三人衆を含む重臣達が来ていた。

それと、同じ頃義龍は病と称して寝込んでおり、弟の孫四郎と喜平次を呼び出していた。


「それで、ワシを無理やり隠居させたお主らが揃って何用ぞ?」


道三が聞くと代表して稲葉が事の経緯を話し、義龍が病にかかり床に伏せり医者が言うにはそれほど長くは生きられないと言うので仕方なく、道三にまた当主になって貰いたいということを伝えるのだった。


道三は不信がりながらも家臣全員の血判書を集めろと指示をした。稲葉逹は今すぐには無理だと言い説得するが道三は聞く耳を持たなかった。


稲葉達は仕方ないので、義龍の様子を見に行ってくれと言い城を後にするのだった。

信春と合流した稲葉達は道三が城から出ないのならこちらから兵を率いて乗り込むべきと言うので兵の準備をしに戻っていった。


その頃稲葉山城に見舞いに来た孫四郎と喜平次は酒を呑んでいた。と言うのも、日根野が「わざわざお越しになられたのだからもてなさなくては」と、料理や酒を振る舞ったのだった。


「義龍様も先がない。これからは孫四郎様の時代に御座います」


「兄上がここまで病弱だったとは父上(道三)から見捨てられる訳だ!」


「しかし、兄上がなくなった後村上はどうするか?かなり仲が良いと言うではないか?」

喜平次の方はあまり酔っておらず、義龍がいなくなった後同盟がどうなるか気になっていた。


「ご心配には及びません。既に手は打っております」


二人の相手をしていた日根野が言うと喜平次らは「そうか」と言い酒を飲んでいった。

半刻後には、二人ともまともに立ち上がることが出来なくなっていた。


「ハハハ!これでは出来損ないの兄には会えぬな!」


「全くだ。すまんことをひたな」

二人は完全に酔っており、喜平次についてはまともに喋れなかった。


「その心配はないぞ」

そう言って襖が開けられるとそこには義龍が刀を持っていた。


「こ、こればどうい...グフッ!」

喜平次が驚いて聞こうとしたら後ろにいた長井によって殺された。


「な、何を!ち、血迷ったか!ぎゃぁぁぁぁ!!」

孫四郎は義龍によって始末されたのだった。


「殿、お見事に御座います」

長井と日根野は義龍に頭を下げていた。


「後は父だけだ。稲葉達にこちらは終わったと伝えよ」


「ははぁ!!」


数刻後、稲葉山城での惨劇を聞いた道三は驚き直ぐに戦の用意をさせたのだった。


「義龍め!弟を手にかけるとは!急ぎ触れを出し兵を集めろ!!」


道三は直ぐに兵を集めたが千人程度とあまり集まらなかった。史実とは違い義龍は家臣や民からの評価が高く、道三派の中にも、戦になれば不利なのは間違いないと義龍側に寝返る者が続出した為だった。


「申し上げます。西美濃三人衆、稲葉様、安藤様、氏家様が兵三千を率いて来られました!」

この知らせを聞いた道三派の家臣達は喜んだが、道三は義龍に従っていた三人が三千の兵を率いてやって来たことに違和感を感じた。しかしそれは直ぐに分かるのだった。


「も、申し上げます!稲葉様、安藤様、氏家様の兵が我らの兵を捕らえています!」


「やはり謀ったか!!!」


道三は叫んだが城内では刃傷沙汰にまでなっていた。

「城に居る者は全員捕らえよ!抵抗する者は切り捨てて構わん!!」


稲葉達は降伏を呼び掛けながらも向かってくる兵士を切り捨てていた。


道三は僅かな供を率いて裏口から逃げようとしていた。


「・・・仕方ない。尾張に逃れるか..」

道三はそう言うと供と末子の新五郎を連れて抜け道から出た。



しかし・・・・。


「道三様、お待ちしておりました」

そういって信春率いる兵達が囲んだ。全ては義龍の指示で抜け道を見張っていたのだった。

道三は驚きつつも唇を咬んでいた。


「義照の差し金か...。奴め、美濃を奪いに来たか!!」


「いえ、此度は義龍様が画策され、我が殿(義照)に依頼されたからに御座います。憎いが父であるので殺したくはないと...。なので、信濃に追放し二度と生きては美濃に入れぬと仰せでした」


信春が言うと道三は驚いた。義龍が自分を殺したくないと言ったからだ。正直殺したいほど憎んでいたと思っていた。


「・・・フフフ。..どうやらワシの目は曇っておったようだな...」


道三は天を仰いだ。義龍は義照が言っていたように龍になったのだと思った。

そして、道三は持っていた槍を手から離し地面に落とした。


「皆、武器を捨てよ...。確か馬場と言っていたな?その方、信濃まで頼むぞ。後、新五郎は連れていく」

道三はそう言うと前に出てきて信春に案内され馬に乗るのだった。


信春は稲葉達に伝令を送り道三を確保したことを伝えた。


稲葉達から道三の確保と道三と新五郎が国境から出たことを聞いた義龍は一言「そうか」と言い部屋に戻った。


義龍としては妹(帰蝶)に乗せられ驕り高ぶり自分を馬鹿にし家督を奪おうとした孫四郎と喜平次は殺す事にしていたが、そうではなかった新五郎を殺すつもりはなかった。しかし、道三と共に国を出た以上、同じように追放とするのだった。


翌日、義龍は道三に組した国衆に血判書と人質を稲葉山城に差し出すことで此度のことは一切咎めないと触れを出した。

道三に味方した国衆はこぞって血判書と人質を差し出したのだった。


中には明智光秀の一族や後に今孔明と言われる竹中半兵衛の一族もいたのだった。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 『弘治元年(1555年)【月】 美濃』 この部分、何月なのかわかりません(^_^;) その前は『天文二十四年(1555年)九月』で、この次の『67、蝮と鷹』では『弘治元年(1555年…
[一言] 義龍は名君かどうかは別として、結局死ぬまで信長は美濃に攻め入れなかったのでまあ普通に美濃を治めるに足る人物だったのでしょう、というか道三に比べれば・・・。 まあ、その寿命がね。まさか実行支配…
[一言] 明智光秀、竹中半兵衛は主人公からしたら欲しいだろうなぁ どうなるのか? 史実とは変わってるから義龍を見限る理由も無さそうですし
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