表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国生存記  作者: 現実逃避
23/180

23、今後

天文十二年(1543年)十月

雪斎や勘助達と話し合った翌日、俺は孫六と商人達を集めた。商人と言っても俺が指示した京、堺、美濃、越後に拠点を作った忍達だ。元は甲賀五十三家の者達だ。


「では、皆名を聞かせて欲しい」

俺が言うと一人一人名と場所を言っていった。


「越後を担当させてもらいます、甲賀五十三家、夏見角助と申します」


「堺を担当させてもらいます、甲賀五十三家、岩根勘兵衛と申します」


「京を担当させてもらいます、甲賀五十三家、佐治三郎と申します」


「美濃は私(孫六)の部下に任せております」

名前を聞いた後、それぞれの状況を説明して貰った。どこも、評判で売れ行きは良いそうだ。それと同時に各地の情報も集めて貰った。

すると、堺担当の勘兵衛から鉄砲と思われる情報があったので、直ぐに購入して届けて貰いたいことを伝えた。


全員に領地をやって召し抱えることが出来ないことを謝り、銭で仕えてくれるか聞いた。勿論、それぞれ店を担当している頭領は銭四百貫文で、全員表向きは商人だが、裏ではきちんと武士と同じ扱いをすることを約束した。


すると皆、それでもいいと言ってくれたのでそれで召し抱えることにした。人数も増えたので忍衆ではなく名を与えることにした。

陽炎衆と名を改めた。一応陽炎衆の頭は孫六で納まり、他の三人を組頭とした。

それぞれ指示をした後、岩根勘兵衛と孫六と共に津田宗達に会うことにした。


豪商津田宗達と話をしたがやはり、神水酒と清酒を卸してほしいとのことだった。

清酒に関しては勘兵衛の店のみにしたかったので交渉して神水酒のみを卸すことにした。

勘兵衛が言っていた鉄砲について津田は凄く詳しかった。今のところ、堺と紀伊の根来でのみ生産されているとのことだった。


俺は鉄砲の製造方法を知るために神水酒を卸したようなものだった。また、堺では勘兵衛の店と津田宗達の店にのみ商品を卸すことで合意した。その代わり、鉄砲鍛冶師を二人程紹介してもらうのと、鉄砲三丁を頼んだ。価格にして千五百貫文だ。これでもかなり安くしてもらっている。

勘兵衛と宗達はポンと金を出してきたことに驚きつつも交渉は成立するのだった。




天文十三年(1544年)二月

昌祐が美濃から使者が来ていると呼びに来たので、向かうことにした。てっきり、安藤や稲葉の二人が来たのかと思ったが違った。


俺は昌祐と昌豊と部屋に入ると懐かしい人物が来ていた。


「十兵衛!久しぶりだな!元気にしていたか?」

「義照様、お久しゅう御座います。一応、生きてはおります」

「そんなに畏まらなくていいのに。美濃に居た時と同じで呼び捨てで構わんよ」


俺が言うと、光秀の隣に居た人物が挨拶をして来た。

「お初に御目にかかります。斎藤家家臣、明智光安と申します。此度は使者として参りました」


俺は光秀に父親かと聞いたら叔父だった。後、一応使者として来ているので呼び捨てなんて出来ないと言われてしまった。本当に頭が固い奴だ。


話を戻して用件を聞いたら、正式に斎藤家との同盟と商品の流通をお願いしたいと言って道三からの書状を渡してきた。


俺じゃなくて父上(義清)に言えばいいじゃんと言ったら、俺に根回しして、同盟に向けて動いて欲しい為今回やって来たそうだ。

書状にも同じことが書いてあり、一番最後には家臣を皆引き連れうち(美濃)に来ないか?と書かれてあったのでつい、ツッコンでしまった。

俺は書状を光秀達に見せると光秀が「やっぱりか...」とボソッと呟いていた。


俺は二人を屋敷に泊め、父上に今回のことを伝えることにした。叔父の光安が言うには父への書状もあると言っていた。


数日後、父から連れて来るように言われたので二人を葛尾城に案内した。


二人を案内した後、同盟について話をしたが、木曾、小笠原を挟んでいるので四家で軍事、経済の同盟なら考えるとなった。

俺としてはすぐに受け入れて欲しかったけど木曽と小笠原がいるので仕方なかった。

その為光秀達は一旦戻ることになった。



天文十三年(1544年)八月

葛尾城

一族、重臣、家臣が一同に集まっている。

遂にこの時が来てしまったのだ。


「今回武田は高遠攻めをしておるが、守護小笠原長時が高遠に与した。直接戦っている訳ではないが、盟約違反されたも同じだ。皆には武田と縁を切るか、それとも直接戦をした訳ではないので見逃すか話をしたい」


父義清が聞くと一番初めに義利兄上が武田との同盟継続を主張した。親武田派の家臣達はそれに賛同した。


しかし、馬鹿兄の傅役の屋代正重が「このまま武田を放置すれば信濃は呑み込まれ、我らも臣従しなくてはいけなくなるのでは?」と言うと反武田派と親小笠原派がこぞって、同盟破棄を口にした。


親武田派は義利兄上やその家臣、裏で武田と関係がある者がいて、反武田派は諏訪、大井、望月など武田に追い出された者達やそれに繋がりがある者達、親小笠原派は譜代家臣や重臣といった感じだ。まぁ、小笠原とは武田より深い繋がりがあるからだろう。


ちなみに馬鹿兄は親小笠原派で俺はどこにも入っていない。勧誘みたいなのはあったが全て断った。そんな派閥に入ってしまえば、思うように出来ないからだ。

父は珍しく意見を言わなかった。何でだろう?


議論は続き、紛糾することもあった。

俺は今回幸隆を連れて来ていたので二人で馬鹿らしいと話をしていた。


幸隆を連れて来たとき警戒され、刀を抜いた馬鹿も居たが俺が物理的に黙らせた。流石にその後、向かってくる者は居なかった。


幸隆も義清は分からないが義照以外、誰も先が見えていないと呆れていた。


義清は真田とばかり話している義照が何も言わないことに疑問を持っていた。今までなら先に言ってきていたからだ。


「義照、真田とばかり話して何を考えておる?」


父が言うと、馬鹿みたいに言い争いをしていたのが静かになった。それに、全員が俺と幸隆に注目した。


「いえ、誰も先を考えられていないのかと思い、これからのことを幸隆と相談してました」


「義照様と真田殿は今後どうなると思われているのですか?」

正重が聞いてきたので、二人で話していたことを伝えることにした。


「まず、武田は信濃を統一しようとするでしょう。勿論私達を滅ぼして」

俺が結論を言うと親武田派は驚き、反武田派は義照が味方についたと喜んだ。


「お静かにお願いします。まず、今回の高遠攻めは村上、武田、諏訪の三国同盟が発端だと思います。武田は信濃進攻の足掛かりを求め裏切った諏訪を乗っ取り高遠、木曾、小笠原を相手にしていくと思います。守護小笠原の力が落ちれば私達が領地を差し出して臣従すると思っているのでしょう。仮に臣従しなくても信濃半分近くを取った武田は容赦なく攻めてくるでしょう。言うことを聞かない家など必要ないでしょうからね」


俺が説明していくと、やはり、反論してくるが幸隆と共にきちんと状況も含めて論破していく。

その状況に義利兄上は顔が青ざめていった。


「それで、お主ならどうすると言うのだ?」

父は結論を聞いてきた。状況説明やこれからの予想は言っていったが、具体的な行動指針については触れなかったからだ。


「今回は武田に関して何もしません。武田が直接小笠原を攻めた訳ではないので盟約違反をした訳ではありませんので。私達が同盟破棄するのは武田が小笠原と直接対峙した時でいいと思います。ただ、小笠原、仁科、木曾、美濃斎藤家と関係を密にし、武田が信濃を制圧する予防策を立てる必要があると思います。諏訪、高遠は捨て石として武田にくれてやります。さすれば佐久郡、諏訪郡、伊奈郡の一部、小県郡の一部を武田が有することになり、欲を出さなければこれで甲斐の食料不足は無くなります。信濃の味を覚えてやって来るなら、村上家単独ではなく連合軍として立ち向かわなければ、かなり厳しい戦になるでしょう」


俺が説明すると皆静かになり考え出した。

今回何もしないとなればどちらにも損は無いからだ。俺としては破棄して攻めたいが、一応兄の顔を立てたつもりだ。


「...いいだろう。今回武田に対しては何もしないことにしよう。信濃国衆の同盟に関して重臣達と話し合うこととする」


評定は解散され、重臣と義利兄上は今後について話し合うために残った。

俺は直ぐに上田城に戻り築城と兵士の訓練を行った。

それと同時に、孫六に武田に与している地侍や反武田の者との繋がりを作るよう命じるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白いです。 続きが気になりいつも日付更新時に履歴を見てしまいます。 自分ならこうするだろうと考察しながら読める事 [気になる点] 主人公の中途半端さ [一言] 生き残りを決めてる…
[気になる点] なんか主人公の意見で同盟継続に決定したみたいになってる 同盟破棄して攻め込みたいならそう言おうぜ [一言] 道三がしつこいのに嫌いになれない 五万石の印象が強すぎる
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ