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戦国生存記  作者: 現実逃避
173/180

173 決着

お久しぶりです。

久々の更新ですが、当面は最低月1更新とさせて頂きます。

申し訳御座いません。

閻王の甲板で大将同士の決闘が行われている頃、毛利隆元は残された船団を指揮し豊後への上陸を開始していた。


「上陸を急げ!関船は兵を下ろした後は村上の援軍に向かえ!伝令は国境の味方に上陸したことを伝えにいけ!」


「申し上げます!!敵がこちらに気付き向かってきます!」


「申し上げます!吉川元春様が合流!!上陸された仁科義勝様と共に兵を率いて敵の迎撃に向かわれました!」


「全く元春め!既に兵を進めていたか!直ぐに追加で援軍を送れ!」


上陸した隆元の元に続々と知らせが駆け込んだ。敵は乗り込んでくるのを予想していたのか上陸地近くに兵が集まっていた。しかし、前もって九州入りをはたしていた吉川元春が兵を率いて合流し、戦力はあっという間にこちらが上となった。


「遠慮はいらん!一人残らず殺せ!!」

「一人も生かすな!」

吉川、仁科軍は大将自ら先頭を進んでいた。迎え撃っていたのは南蛮人ではなく高山右近等、キリシタン武将達だった。


「くそ!数が違いすぎる!」

「このままでは潰されるだけだ!城に退くぞ!」

高山右近は大声を上げ指揮をする。しかし、それを許さない者達がいた。


「逃げてはいけませぬ!神は貴方達を守ってます!皆は神の教えを守るのです!」

叫ぶのは南蛮からやって来た宣教師達だ。キリシタン達は右近の言葉よりも宣教師の指示を聞いた。


キリシタン達にとって右近達は宣教師から軍を預かってるだけの存在と認識しており、別に立場が上だとは思っていなかった。そして、宣教師達はキリシタンを突撃させている間に逃げようしていた。こんな蛮族の国(日本)で死にたくないからだ。

キリシタンは無謀な突撃をし続け、その数は一方的に減っていく。


「こんなの……神を守る戦ではない!」

右近は目の前の惨劇に震えながら宣教師達を探した。だがどこにも姿が見えなかったことで捨てられたのだと理解できた。


「最早、ここまでか……。生きている者は皆逃げよ!逃げて生き延びるのだ!」

右近は叫び、近くにいた者達は悩みはしたが直ぐに逃げ出した。残ったのは宣教師の言葉を鵜呑みにしたキリシタン達だけであった。


半刻後、連合軍全軍の上陸が終わり戦場にキリシタン軍の生き残りは一人も居なかった。


「このまま、豊後を制圧する!元春、仁科殿は肥後方面に、我らは臼杵城方面へ、朝倉殿は筑前方面に進み、キリシタン、いや南蛮人を一人を残らず討ち取るぞ!」


「毛利殿の申す通りだ!一人でも逃せば災いとなるぞ!」


「「ははぁ!!」」

毛利隆元と朝倉義景の指示で本陣の武将達が出ていくが、そんな本陣に伝令が駆け込んで来んだ。


「申し上げます!島津家から使者が参りました!」

伝令の言葉で本陣から出ていく武将の足が止まる。ここに来て九州最大勢力である島津がやって来たからだ。


「島津だと?馬鹿を言うな!我らがここに来ることを知っておるわけがないではないか!」


「誰が来ている?」

「島津歳久と名乗っております!」


島津歳久の名前を聞いて毛利勢は言葉を失った。島津四兄弟の名は九州で知れ渡っており、元大友家臣団からその知勇を聞かされていた。


「会うしかあるまい。ここに案内せい」

隆元はそう指示すると、二人の武将と一人の公家が本陣に連れられて来た。


「御初にお目にかかる。某、島津左衛門督歳久と申します。こちらは我が家臣、鎌田政金と申します」


「おぉー原殿!都でお会いした以来ですな〜!」

歳久が挨拶している横から公家の男が呑気な声で原胤盛に声をかけた。


「もしや、久我三休殿か?一族が勅勘を受け、都より追放されたと聞いたが…」


本陣に残っていた原胤盛は思い出しながら尋ねた。久我三休とは父親である久我晴通との付き合いで知っており、長男の通堅が天皇の逆鱗に触れ一族全員が都より追放されていた。


「いやー兄上のせいで追放された後大友殿に招かれてな。大友殿が亡くなった後は島津殿の元で世話になってたのよ」


「それで、島津家が何用か?」

「時間が惜しいので率直に申し上げます。我らは既に南蛮殲滅の為兵を進めております。領地について此度の南蛮殲滅で我らが抑えた地を認めていただきたい」


歳久の言葉で本陣は静まり返る。歳久の言う事を鵜呑みにしては九州の半分を認めることと同義だからだ。


「それで、島津は九州の半分を抑えることになる。我らが退いた後九州を統一するつもりではないのか?」


「いえ、我らは毛利、朝倉、村上家の同盟に加わりたく存じます」


歳久の言葉で誰もが考えだす。三国同盟に対抗出来る勢力は日本には存在しない。だからこそ島津はそれに加わろうとしたのだと考えた。隆元は参加には賛成だが、九州の半分は危険だと思っていた。


「領地に関してはまぁいいだろう。だが、同盟に関しては村上家も交え話さなければならんな」


九州とは全く縁がない義景が領地に関しては認めてしまった。この時、義景の頭の中には島津を通じて勘合貿易に乗っかる算段を考えていた。


「一旦和睦はしよう。だが、領地については村上殿や島津家当主を含めて改めて話をするとする。それでよいか?」


「では、現状の領地だけは認めて頂きたい」

隆元の意見に負けずと歳久も食らいつく。最低限これだけは認めさせるつもりだった。

隆元としても、これ以上拒否し続けては後がやりにくくなると感じ悩んだ。こんな時に弟の隆景が居てくれればと……。


「わかった。それは認めよう。朝倉殿も認めておるしの。それで、島津は我らと合流するのか?」


「はい、島津本隊はすぐに合流致します。別働隊とは臼杵で落ち合う予定にございます」


隆元は歳久と義景とこれからの侵攻ルートについて協議し、一刻後には島津本隊二万が合流したのだった。




閻王の甲板ではロドリゲスと義照の一騎打ちが続いていた。乗り込んできた南蛮人兵士からは熱烈な声援が送られ、村上兵達の方は加勢すべきかと不安で堪らなかった。


船は戦闘を続けている為揺れに揺れており、船での戦いに慣れているロドリゲスが圧倒的に優位だった。

ロドリゲスは揺れさえも利用し義照に斬りかかり、義照はなんとか捌いていたが、揺れに対応できず体中切りつけられていた。恐らく鎧がなければ既に死んでいたかもしれない。


「ヨシテルどうした!そんなものか!」

「大殿!!」


(あぁ…本当にやれんな……)

義照は無言のまま戦っていた。体は思うように動かず、揺れでまともに戦えなかった。何度か泰親が加勢しようとしたがそれは許さなかった。


当主として?武士としての意地?、いや違うな。ただ、武勇を認めて欲しかった。国の経営や戦では評価は高いが、個人の武としては全くだ。だから、馬鹿兄と言いながらも心の底ではあの武勇に憧れていた。


もう、いいか……。


ドスッ


「大殿!!」


ロドリゲスの剣が義照の左肩を貫いた。しかし、義照の太刀はロドリゲスの足に深く刺されていた。


「すまんが、ここからは殴り合いだ……」

「グッ!」


ロドリゲスは足の痛みに耐えながら突き刺した剣を抜きそのまま無手の義照に斬りかかる。

しかし……


ゴフッ!!


義照はロドリゲスの剣を無理やり左手で払い、右手で寸勁(すんけいを顎に打ち込んだ。

それはロドリゲスの意識を奪うには十分過ぎるほどの威力だ。そして、意識を失い倒れるロドリゲスに外門頂肘(がいもんちょうちゅう)で打込み止めをさした。


先程まで、圧倒的に優位だったロドリゲスがたった二撃でやられた事に誰もが驚き辺りは静まり返った。義照は少しふらつくとその場に崩れる様に座る。


「大殿!!」

しかし、義照がその場に座り込むと慌てて泰親達が駆け寄る。他にも武将数人が倒れているロドリゲスにとどめを刺し首を取ろうとする。


南蛮人達もロドリゲスの下へ向かおうとするも兵士に囲まれ動けなかった。


「利三、元正、ソイツはまだ生きているか?」

「はっ、虫の息ですが生きております。直ぐに首を刎ねます」


元正はそう言うと首を取ろうと脇差しを抜く。南蛮人達は叫び、切られながらも近づこうと必死に前に進む。


「止めよ。生きておるなら手当をしてやれ。泰親、奴らに降伏するよう言え。降伏した者には手当をするとな。勿論、そいつ(ロドリゲス)もだ」


「しかし……畏まりました。」

泰親は大声で南蛮人達に向かって叫ぶ。南蛮語で伝えた為、言葉を理解したのか武器を捨て手を上げた。元正や利三達は武器を納め、担架を持ってこさせたり手当の指示を始めた。


「大殿、直ぐに治療を!誰か医者を連れてこい!!」


鎧兜を付けていたとはいえ、ロドリゲスによって鎧の隙間を幾度も斬りつけられ義照は血まみれだった。

傷は多いが、深手は最後に突き刺された傷のみだったことで何とか生きていた。


「…泰親、戦況は?」

「敵は逃げ出しほぼ、掃討済に御座います。大殿、どうか今は傷の手当を!」

泰親は慌てて突き刺された傷口を抑え血を止めていた。そうこうしているうちに、医師が慌ててやって来てその場で治療を始めた。


「泰親。逃げた船が少ないなら動ける船を集め、後を追わせろ。決して外つ国に逃がすな。他は修理後豊後の港を制圧せよ……」

(あれ、なんかボーとするな……)

「承知しました!ですから今は治療を…。大殿?大殿〜!!」




義照は意識を失い、泰親は何度も大声で叫ぶ。閻魔の甲板で叫ぶ声が途切れることはないのであった。




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