表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国生存記  作者: 現実逃避
165/180

165、その頃の各地

京で三大国の当主が集まっている頃、北条家は大混乱に陥っていた。氏政と氏直が戦を始めた為だ。


遡ること十数日前。

北条氏直は父氏政と叔父の氏照を捕える為に自身に従う者を連れて小田原城に入った。 しかし、氏政は兵を率いて待ち受けていたのだ。


「氏直!この裏切り者めが!北条を滅ぼす気か!」


「な、なぜ父上(氏政)が!どうして!」

驚く氏直達だが、氏直達の後ろを塞ぐ兵士達の間から一人の男が出てくる。


「氏直様、お諦め下され。北条家の当主は氏政様ですぞ」


「政繁…貴様裏切ったか~!」

出て来たのは、大導寺政繁であった。その瞬間全て掌の上だったと気付く。


「まさか、幻庵様と綱成も私を……」


「その二人は後だ!氏直を捕えよ!」

氏政の命で兵達が一斉に氏直を捕えにかかる。


「ッ!父上!次村上と戦えば間違いなく滅びますぞ!!」「氏直様お逃げ下され!」


氏直に付いていた者達の必死の抵抗で何とか包囲を抜け本丸の外に逃れたが、兵士達が氏直を追い掛ける。



「はぁはぁ……。私はまだ捕まる訳には…」


「氏直様、如何されましたか?」

氏直が息を整えていると、家臣に声を掛けられる。


(父上の命を聞いていない?……なら…)


「急ぎ、幻庵様の所へ行かないと行けないからな、済まんが先を急ぐ」

氏直は門を閉じられる前に急ぎ城を出ようとした。

だが、三の丸の門前に兵士が集まり出られなかった。


「氏直様、此方です」

門の方を覗いていた氏直は慌てて振り返る。そこには一人の下女がいた。


「お前は…」「風魔の者です。此方へ。幻庵様も保護し頭領が既に退路を確保しております」


「分かった……頼む」

氏直は風魔の手引きで何とか小田原城を抜け伊豆の韮山城に向かった。

初め北条綱成のいる玉縄城に向かおうとしたが幻庵によって氏規の韮山城に向かうことになった。玉縄城では孤立してしまう可能性が大きかった為だ。


韮山城に入った氏直は兵を集め始めた。主に伊豆の家臣達が氏直に付いたが孤立した者が出来た。穴山と小山田一族である。


二人は武田を裏切り北条に付いたが、村上に寝返ろうとし、輝忠から武田の許しがあればと相手にされなかった。

要は「裏切り者はさっさとくたばれ」と言うことだ。


氏政は二人に逃げられ、

綱成は籠城する構えを見せた為、監視を残して兵を集め始めた。そして氏直を廃嫡し三男の氏国(史実の太田源五郎)を次期当主にすると発表したのだった。



現在は箱根峠で氏直、氏政両軍が睨み合いを続け玉縄城には氏政に付いた氏照が向かい、伊豆方面に孤立した穴山、小山田は武田によって攻められていた。


村上家は和睦したので北条の内戦には手を出さないが、裏切り者(小山田、穴山)は調停外としたので武田が動いたのだ。

ちなみに、穴山、小山田は降伏の使者を送ったが首にして戻されており最早赦される事は無く勝つしか道は無かったのである。



その頃奥州、米沢城では宴が行われていた。伊達政宗と輝忠の長女華の婚儀の為だ。


村上家からは一門の村上照親と村上清勝、三家老の原昌胤、重臣斎藤利治が参加していた。本来なら筆頭家老の須田満親も参加する予定だったが、毛利、朝倉、村上の三大国の交渉の為不在だったのだ。


伊達政宗12歳、華13歳とまだ若いが婚儀まで進めたのは互いに同盟の強化と後方を固めたかったからである。


「村上殿(清勝)、どうぞ一献」

「片倉(景綱)殿忝ない……では、私も……」


清勝は片倉景綱と、斎藤利治は遠藤基信と、原昌胤は照親と共に伊達輝宗とそれぞれ話をしていた。


「しかし、無事に婚儀が済んだことは良かったですが………、初夜で喧嘩とは……」


「その件は我が主(政宗)が申し訳ありません」


「いやいや、片倉殿が謝られることはありません。嫁いだ姪(華)は政宗殿よりは歳上。妻になるものが夫を支えるのが当たり前と言うのに……此方こそ申し訳ない」


清勝と景綱は二人揃って溜め息を吐く。

初日の婚儀は無事に終わった。だが、初夜(床入り)で政宗と華の二人は喧嘩したのだ。


「政宗様はその…ひきこ……へそ曲がりな故、奥方様の気に障ることでもやられたのでしょう……」


「姪(華)は甥(輝忠)よりも兄上(義照)に似て容赦なく色々言う所がありますから……。政宗様には申し訳ない…」


二人は溜め息を吐きながらも呑みあった。清勝と景綱(片倉)は後に義照と義龍(斎藤)、義勝(仁科)と具教(北畠)、国清と半兵衛(竹中)の様に愚痴を溢し合う程の仲になるのだった。



喧嘩した二人は輝宗によって同じ部屋に入れられていた。しかし互いに口を開かずそっぽを向いていた。


(もう、御爺様(義照)の嘘つき!聞いてたのと全然違うじゃない!)


村上輝忠の娘華は心の中で祖父(義照)を恨んだ。

義照から政宗の事を、野心家で隙があれば我等(村上家)を飲み込み天下を狙おうとする程の気概がある男と教えられていた。


だが実際に政宗に嫁ぎ、会話をしていると全く違うことが直ぐに分かった。


政宗は人前(家臣達)では立派な跡継ぎの様に凛々しく振る舞っているが、いざ二人になると自信が無いのかネガティブ思考になり、人の目を気にして一人ぶつぶつ呟く等全く別人の様になっていた。


華は家臣達の前の立派な政宗なら喜んだが二人の時の政宗を見たら幻滅し、こんなの(政宗)に嫁ぎたくなかったと思った。


そして華は初夜で政宗を叱責し自分の思いを政宗に伝えその性格を直し奮い立たせようとした。


だが、政宗の方からしたら自分が気にしていることをズケズケと言われたが言い返せず最後には手が出てしまった。


二人は片倉景綱と村上清勝によって止められ政宗は輝宗から、華は清忠と照親から説教を受けた。


輝宗は政宗に村上家との関係を破綻させる気かと怒鳴られ、華は兄照親に父(輝忠)を困らせ戦を起こす気かと怒鳴られ、清忠は事に至った経緯を尋ね理由を聞いて呆れた。


「兄上(義照)には政宗様に非がないことを伝えておきますのでご安心下され」


「清勝殿、宜しくお願い致します」

暗くなった気分を変える為に二人は酒を呑み合い、朝には二日酔いになったのだった。



伊勢 大河内城


「行くぞ~!」


「!まだまだ~」


おおおおぉぉぉぉ!!!


城内の訓練では朝から男達の声が響いていた。


「流石は日ノ本最強と言われる仁科馬廻衆。兵が倍でも手も足も出んか!」


「はっ!何を言うか。ワシの馬廻りに食らいつけるなど、義照の直属か馬場と上泉の僅かな精鋭くらいぞ!」


義勝は自身の馬廻りのみ引き連れ伊勢に滞在していた。北畠具教と再度殺り合う(仕合)為だ。

だが、その願いは叶わなかった。


具教は伊勢一向衆との戦いで左腕を負傷し治療が遅れた為化膿してしまった。切り落とさなくても済んだが全く動かなくなっていたのだ。具教は兄弟、子供等だけでなく、これまで捧げてきた人生(剣術)をも失った。


義勝もまさかその様なことになっているとは思ってもおらず言葉を失う。


具教は折角来たからと、義勝達の為に宴を開いた。義勝はそれを受けその際、生き残った具教の四男徳松丸と五男亀松丸を鍛えることを伝え、北畠兵士達は馬廻りに鍛えさせる事を提案したのだ。

そして、伊勢に滞在して早三ヶ月が経っている。


「ところでお主の息子(徳松丸)もそろそろ元服だが…嫁は決めたのか?」


「いや、まだだ」


「なら、ワシの孫娘をやろう」


「は?」


具教は義勝の言葉に呆気に取られる。それは周りにいた両家の家臣達もだ。


「あやつ(徳松丸)は剣の筋がいい。それに、気概もある。ワシの鍛練をこなす程な。だからワシの孫娘を嫁にどうだ?」


義勝は淡々と言うが具教達にとってこれ程良い縁談は無かった。

なんせ、村上家と繋がりが深くなり伊勢での勢力を回復出来る可能性もあるからだ。


「仁科殿、どうか宜しく御頼み致す」

具教は義勝に頭を下げ縁談を受ける。

義勝は笑みを溢した後直ぐに息子盛勝と弟義照へこの件を伝える文を送った。


数日後、文を受け取った盛勝はこれまで以上に勝手過ぎる父の行動に唖然とした後遂に倒れてしまう。

原因は過労である。


京で書状を受け取った義照は怒りも呆れも疾うに越えており、「兄上(義勝)の好きにして。こっちも好きにするから」とたった一言言い放つ。

そして、書状に仁科家の領地を増山城以外を没収して、伊勢と尾張蟹江周辺に変えることを通告したのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 村上殿(清忠)と記載があったのですが、そのほかの部分では清勝になっている気がします。 また、村上清勝からみた華は又姪(兄:義照の子である甥:輝忠の娘なので)…では無いでしょうか? 分か…
[一言] 脳筋の勝利ですね。 普通なら北畠の嫡子と大勢力となっているといっても村上の一門でしかない馬鹿兄の孫との婚姻は惣領の了解もないのを含めてちょっと考えにくいでしょうからね。 官位もだが家格など…
[一言] うん、 勝手に婚姻を決めるのは…流石にまずいですよね。 御家騒動まっしぐら!ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ