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戦国生存記  作者: 現実逃避
112/180

112 未来の赤鬼

永禄九年(1566年)七月

上田城


「信濃よ!俺は帰って来たぞ~!!」

俺は嬉しいあまりついつい叫んでしまった。

正直、幕府のお供とおりは地獄のような日々だった。

ぶっちゃけ、帝が居られなければ京なんか行っていない。信州でのんびり平和に過ごしたい。

そして、叫んだことで周りからは哀れみの目で見られた...。


関東連合は全員帰国し、馬鹿兄はそのまま娘の渚と共に常陸に向かった。佐竹への嫁入りの為だ。

だが、渚は戦に行くつもりなのか、額当てを巻き、鎧を身に付けて行った。


(・・・うん。何も起こらないことを祈ろう...。)


そして不在の間、守りを任せていた長野業盛と矢沢頼綱、須田満親から報告を受けた。

本当は輝忠にも聞かそうとしたが輝忠は帰って直ぐに妻の桔梗の元に走り去ってしまった。

まぁ、いない間に長女が生まれていたので今回は見逃そう。


さて、里見と北条は無事に話が纏まり、里見家が北条に従属した。上総等の領地は削られたが本領安房は安堵されたらしい。


下野だが、上洛する前にこちらに従うよう書状を送っておいたが、返事が帰ってきたのは佐野昌綱と壬生綱雄みぶ つなたけ皆川俊宗みながわ としむねだけだった。

壬生と皆川は宇都宮から独立してから従うとした。

宇都宮とその取り巻きは佐竹に従うらしい。まぁ、婚姻しているから仕方がない。だが、こちらに付くと言った壬生と皆川を攻めれば容赦はしない。


そして、三河だが・・・


「まさか、撤退してるとはな・・・」


「大熊様も負傷され今は野田城に入っておられます。然れど、徳川に兵はほとんど残されていないと思われます」


三河だが、大熊達はまさかの撤退をしていた。

そう、岡崎城を落とせなかったのだ。

長篠城で鳥居元忠が、野田城で大久保忠世が最後まで降伏せず城にいる全員が討ち死にした。


そして、大熊達もこの二つの城を落とすのに多くの兵を失ったのだった。

岡崎城で残った三河勢は籠城し粘った為、落とせないと大熊と出浦の二人が判断し野田城に撤退したのだった。


「三河がこれ程粘るとは面倒な・・・。二人には軍を解散させ戻ってくるよう伝えてくれ。詳しい話も聞きたいからな 」


「畏まりました。それと、殿が上洛する前に指示された、井伊直虎、虎松、と井伊家家老小野政次の三人が既に来ております。如何されますか?」


「え?・・・・あ...」

(すっかり忘れてた~!!!)


俺は呼び出していたのに完全に忘れていた。なので、直ぐに会うことにした。

暫くすると三人がやって来て平伏した。


「お呼びとのことで参りました、井伊直虎にございます。こちらは息子の虎松にございます」


「虎松にございます!」


「井伊家家老、小野政次にございます」


三人が名前を言ったがまぁ、虎松は元気があっていい。確かまだ五歳だろう。


「まぁ、三人共顔を上げよ。さて直虎と言ったな。高瀬(直親娘)は元気にしておるのか?」


「はい。虎松同様私の娘として井伊谷で過ごしております」


「そうか。井伊谷に戻った後のあやつ、直親のことを教えてくれるか?」


「はい。では...」


俺は直親が井伊谷に戻った後の事を聞いた。直親は戻ってきた後、井伊直盛に俺達の領地でしていたことを話して、井伊家でもやってみればどうかと言って井伊家で色々なことをやったらしい。


お蔭で、井伊家は義元から目を付けられ高瀬を人質に出したらしい。

全く、国人とはいえ、義元に許可を取らずにやるなんて馬鹿者め。


だが、うちでやっていたということもあり、義元は遠江の一部で試験的にやり始めた。しかも上手くいっていたらしい。しかし、桶狭間で全てが変わった。


義元が討ち取られ、直盛と直親は家康の謀反鎮圧に駆り出され、三浦の馬鹿のせいで揃って討ち死にした。


そして、氏真はそんな井伊家に手を掛ける暇もなく放置し、家康によって井伊谷は占領された。なんとも史実とは違い不幸まっしぐらだな。虎松も人質に取られたが、関東同盟のせいで起こった動揺の隙を付いて、曾祖父になる井伊直平達による決死の救出で無事救われたらしい。


ただし、救出に向かった直平達は虎松を逃がすため討ち取られたらしい。

おまけで知ったが直平は築山殿(瀬名姫)の外祖父になるらしい。流石にこれには驚いた。


「成る程、そのようなことがあったのか・・・さて、井伊谷にだが代官を派遣し統治させようと思ったが辞めた」


俺が言うと直虎と政次は驚いていた。代官を派遣されることを知らなかったのだろう。まぁ、誰にも言ってなかったしな。


「井伊直虎。虎松が元服するまでは其方が井伊谷を治めろ。ただし、うちのやり方には従って貰う。良いな?」


「畏まりました。その、虎松はやはり人質でしょうか?」


「いらん。今回連れて来させたのはあ奴(直親)の息子だから会ってみたかっただけだ。連れて帰れ。それに人質は無意味と最近知ったのでな。人質は暫くは預かるが最終的に返すことにした。まぁ、ここ(上田城城下)に残りたいなら残っても構わんがな」


俺は遠江のことを聞いて人質は意味が無いと知った。なので、半年から一年は人質を取るがそれ以降は返すことにした。

ようは、まぁ、裏切れば根絶やしにすると言うことだ。

昔ならともかく、今なら出来るだけの力がある。


「分かりました。では、虎松をここで養育したいのですがお許しを頂けないでしょうか?」


「・・・それは何故か?」


俺は人質はいらないと言ったのに直虎はここに置くと言ったので俺は直虎を睨んだ。

隣に居た政次なんか直虎の発言に驚いていた。


「亀..直親が申しておりました。村上家は日々新しい事を学ぶことが多く大変だったと。このまま虎松を連れて帰って養育する事はできますが、この子が大きくなってから苦労するよりは今から学んでいた方が良いと思った為に御座います」


俺は直虎から理由を聞いてそんなに苦労させたか?と思ったが気にしないことにした。


「まぁ、好きにすれば良い。下がって良いぞ」

俺はそう言って直虎達を下げた。


「はぁ、女(直虎)なのが勿体無い。男ならば井伊家は安泰だっただろうな」


俺は直虎と話してそう思い口を溢した。本当に勿体無い。



永禄九年(1566年)八月

上田城


三河征伐に向かわせた二人が戻ってきて俺達の前で頭を下げていた。


「このような失態を起こし、申し訳ありません!!」


大熊と出浦は伏して頭を下げた。

結果で言えば、一万七千のうち五千近くが討ち死にもしくは負傷していた。


何故、ここまで被害が大きいかと言うと、長篠城を力攻めで落としたが、二ヶ月以上掛かってしまい、焦った大熊が野田城でも力攻めをしたせいだった。


野田城でも、力攻めをしたが一月近く粘られ、負傷者を癒すため仕方なく休息し、その後岡崎城を一度攻めたがやはり粘り強く力攻めは無理と考えて包囲のみに徹したそうだ。しかし、俺達の方が早く終わってしまい、味方の士気も最悪だったので撤退したそうだ。


「まぁ、負けてしまったのは仕方がない。誰にでも失敗はある。だが、流石にここまで酷いと沙汰無しとはいかないな...」


俺が言うと二人は怯えていた。大熊も出浦も流石に死罪は言われないだろうがかなり厳しい沙汰を言われると覚悟した。


「昌祐、普通ならどれ程の刑罰とするか?」


「・・・死罪まで至らないですが、ここまで酷ければ領地召し上げ程になるかと...」


昌祐は顔を歪ませながら答えた。昌祐としては出浦とは長い付き合いだし、大熊のことも認めていたからだ。


「そうか・・・では、」「しかしながら、これまでの功績もありますのでどうか寛大な処置を・・・」


俺が言おうとすると昌祐は口を挟んだ。まぁ、これが本音だろう。


「確かにそうだな。では、沙汰を言い渡す。まず出浦清種、三家老より罷免する」


「ははぁ...」


「大熊朝秀、事の発端はお主にある。重臣より罷免し領地である三河を召し上げ、遠江に新たな領地を与える」


「っ!畏まりました....」


二人は伏して頭を下げた。特に大熊は顔が歪み悔しさが滲み出ていた。俺としてはこのまま三河に残ればきついと思ったので遠江に移動させることにした。確かに今回はしくじったが大熊の実力は本物だからだ。


「さて、徳川に関してだが・・・ここまでやられたんだ。潰すぞ。輝忠、お主が二万を率いて岡崎城を攻めろ」


「えっ!あ、はい!・・父上、お願いが御座います。朝秀と清種を連れていきたいのですがよろしいですか?」


俺は輝忠の発言に正直驚いた。まさか、輝忠が二人を連れていきたいと言うとは思わなかったからだ。

正直、連れていかせる気ではあったんだけど・・・


「元からそのつもりだ。大将を輝忠、副将を昌豊、信春、参謀を左近、昌幸お主達がやれ。大熊、出浦、二人には先陣を命ずる。やられたんならやり返せ!!」


「「必ずや!!!!」」


俺が命ずると清種と朝秀の顔が変わっていた。特に大熊の形相は凄かった。


それから直ぐに出陣へ向けて準備が進められた。そして、翌月九月には輝忠達が出陣していくのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 三河武士は強いですね。 今後どうなるか楽しみにしながら待っています。
[良い点] 息子は本当ええ子に育ったなあ
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