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戦国生存記  作者: 現実逃避
109/180

109 帝からのお願い?

永禄九年(1566年)5月


どうも、義照です。先月から大和制圧を行っていたのですが予定が変わり急遽京に戻ってきました。

原因は景虎です。


景虎大将の連合精鋭軍が三好三人衆を瞬殺、皆殺しした為です....はぁ~。



5日前


「はぁ?今なんて言った?」


「はっ!長尾様率いる精鋭軍が三好と激突し見事大勝されました!」


幕府からの使者として来た男は分かる範囲で何があったか説明してくれた。


三好勢二万五千は俺達が流した情報を信用したのか知らないが、景虎が一万五千を率いてくると聞いて待ち受けていたそうだ。景虎は到着するやいなや先陣を駆って突撃し、先陣を除いて他の軍はあわててその背を追いかけたらしい。・・・


先陣で景虎と一緒に突撃した身内達がいるが....


理由は分からないが、三好は景虎達が直ぐには攻めてこないと思っていたのか、一度目の斉射後は散発的な射撃しか出来なかったようで前線は崩壊、乱戦となったそうだ。


動揺はしたが三好も馬鹿ではないので前線を放棄し数の差を生かして包囲殲滅しようとしたが、これが悪手となってしまった。


完全に囲む為に包囲する兵の厚さが薄くなってしまう。おそらく普通の兵士相手なら別に問題ないが、景虎の元にはそれぞれの精鋭(猛者)が送られていたので、包囲は簡単に食い破られた。


その後は一方的な蹂躙だったそうだ。

三好宗渭、岩成友通は景虎、山県昌景、柴田に本陣を襲われ討ち死に、三好長逸は本陣から何とか逃げ包囲を抜け出したが、その先で待っていた馬鹿兄に討ち取られたそうだ。


今回一番の手柄は景虎だが、三好殲滅に関しては、逆包囲後一兵たりとも逃がさなかった馬鹿兄らしい。


なんでも、誰よりも早く退路を絶ち、包囲から抜け出した三好勢を皆殺しにし逃さなかったらしい。あの馬鹿兄が..あり得ない...


三好勢二万五千のうち、死者は一万数千にのぼり包囲されるまでに逃走した者はわずかだったらしい。


ちなみに先ほどの数字には捕虜や負傷した者達も含まれている。

何故なら捕虜は景虎の指示で全員首を刎ねられたからだ。まるで中国の白起だ。


それにしてもあの猪突猛進の体現者で突撃以外を知らない馬鹿兄が誰よりも早く退路を断ったことを聞いて俺は誰かと間違えたのではと思ったが、使者は間違いなく馬鹿兄でその活躍は凄まじかったと力説までするのだった。


・・・・後で、馬鹿兄に付けていた陽炎衆に、詳しいことを聞こう....


さて、使者がわざわざ来たのはこの報告をするだけではなかった。

三好三人衆を討ち取り、三好兵もほぼ討ち取ったので、義秋が将軍宣下と幕府の再興を盛大に祝うので戻ってこいと言うものだった。


・・・呆れるしかなかった。

以前俺達が立て直した京はまた荒れ果て見るかげも無くなっていたので、前久と稙通と息子の兼照と相談し、朝廷としては将軍宣下は簡単に終わられせて幕府は京の復興を進めるべきと言う話をし、朝廷より使者が行っていたはずなのに、そんなことは知らないとの如く、幕府は盛大に行うと言ったのだった。


念のため、盛大に行う為の銭はどこにある?と聞くと、俺達を始め大名に出させると言ったので、俺の中で何かがキレた感じがした。


ガタッ!


俺に機嫌良く話していた使者は、何故か腰を抜かしたのか座り込み顔が真っ青になりガタガタ震えていた。それに水溜まりも出来ていた。



「と、殿...」


「・・うん?どうした?」


声をかけてきた昌祐の顔には冷や汗が出ていた。

周りを見ると本陣にいる全員が下を向くか震えていた。


連れてきていた息子の輝忠や預かっている三好義継なんか、汗びっしょりとなりガタガタ震えていた。


「・・・・はぁ。全軍に撤退するから準備せよと伝えよ。使者殿、それでよろしいか?他にあれば聞くが?」


「あ、あ、ははい!な、ななんもありません!!」


使者はそう言うと逃げ帰った。


「・・・昌祐?」


「殿、お願いですから幕府の使者を殺そうとしないでください。禰津の時より恐ろしかったです...」


俺は気付かないうちに使者を殺すのではないかと思われたようだ。そんな事するわけ無いのに....。


「はぁ、将軍宣下が終われば帰るか...」

俺は直ぐに大和から撤退をし、京に戻り今に至る。

他の大名達も戻って来て準備が進められていた。



京 禁裏(御所)

義秋の将軍宣下を明日に控えた頃、俺は一人呼び出された。


「義兄上(義照)、遅くなってすいません 」


「父上...」

入ってきたのは前久と兼照だが、兼照は目で何か合図を送ってきた。

だが、俺はそれが理解できなかった。

その二人の後から入られた御方の御尊顔を拝するまでは...



「なっ!あ...」

俺は直ぐに伏して頭を下げた。

入ってこられたのは正親町天皇・・・帝だった。


「面を上げよ...。此度は非公式だ。そう固くならなくてもよい」


俺が伏していると帝から御言葉を頂けた。だが、本当に顔を上げていいのか悩み動けなかった。


「義照、帝が御許しになられているのだ顔を上げよ」


いつの間に入って来たのか、義父九条稙通に言われて頭を上げた。


「帝がお越しになられるとは...思っておらず...」


俺は困りながら、帝以外の三人を見た。なぜ前以て言わなかったと恨んだ。


「義照、兼照の件済まなかった。そちには我が父の時から朝廷を敬い助けてくれたと言うのに、朕はなにもすることが出来なかった...」


帝はそう言うと頭を下げる。


「滅相も御座いません!全ては某の考えが浅はかだった故に起きたこと!全ては私の責任で御座います!」


俺は再度伏して頭を下げた。帝が頭を下げて謝ってくるなど夢にも思わなかったからだ。


「主上、そろそろ本題に・・・」


稙通は帝に声をかけた。今回呼んだのは謝る為ではないからだ。


「此度呼んだは兼照の事じゃ。実は春齢がこの者と懇意にしておる」


(春齢?誰の事だ?)


「恐れながら、春齢様とはどなたの事でしょうか?」


俺は伏したまま聞いた。正直、公家の名前など覚えていなかった。


「義照、お主本当に知らぬのか!」


稙通が驚いて聞いてきたが知らないものは知らなかった。


「朕の娘じゃ」


「・・・・~~~~!!!!!」


俺は伏していた良かった。でなければ、どんな顔をして帝を見ればいいか分からなかった。


(はぁー皇女様だって!兼照は一体何をした!俺は何も聞いてねぇぞ!また、前久の謀(嫌がらせ)か!てか、なんで皇女様が兼照と懇意にしているんだ!!皇女ってあれだろう?内裏から出ないんじゃないんか?一体どこで知り会い懇意になる機会があるんだ?てか、まさか、兼照の奴手を出したんじゃないだろうな!!でなければ、帝自らいらっしゃるわけないよな!あ~そうなれば俺達は終わりだ。ここは、責任を取って兼照を殺して俺も切腹しないといけないのでは...)


俺は伏したまま頭の中をフル回転しても困惑し冷や汗が止まらなかった。

そして、俺が伏したまま何も言わないので沈黙が流れていた。


「急に言われても困惑するであろうが、まだ続きがある。とりあえず顔を上げよ」


稙通に言われて俺は恐る恐る顔を上げた。


「義照よ、朕は春齢を兼照に降嫁こうかさせたいと思っておる」


「お、恐れながら、こ、降嫁と言うことは皇女様を兼照の妻にと言うことでしょうか?」


俺が震えながら聞くと帝は頷いた。

俺は驚きの連続で目の前が真っ白になり意識を失った。


どれくらいたったか分からないが気が付いた時には帝は居られず、稙通と兼照だけだった。


話しによれば四半刻(三十分)も気を失っていた様で、危うく医聖、曲直瀬道三ではなく、その一番弟子が呼ばれる所だったらしい。

道三は今毛利元就の元に派遣されているようで不在らしい。


意識も戻ったので詳しい説明を受けた。

まず、どうして皇女様と懇意になったかだ!


・・・内裏で偶然会った後、内裏を度々抜け出して九条屋敷に遊びに来ていたらしい。まぁ 、近衛、九条屋敷は内裏の近くだからこれないことはない。


はじめ抜け出してまで来ていたのは兼照が持っていた菓子が目当てだったらしい。


と言うのも内裏で出会った時、皇女様とは知らずに菓子をあげたらしい。女官ども、なぜ皇女様から目を離した...


ちなみに、菓子とはクッキーだ。作り方は簡単で、材料さえ揃えば作れたのだが、それを揃えるのが大変だった。

小麦を粉にするのに石臼で挽くのでとてつもなく時間がかかり大変だった。

だが、それを可能にした男がいた。


近衛前久である。前久は俺が餌付けしていたせいか、かなり舌が肥えており、趣味で自ら料理をする程になっていた。ちなみに、料理の腕前はかなりの物らしい。(うちの料理長より)


話はそれたが、前久は信濃にいた頃は簡単に材料が手に入っていたが京では金もかかり集めるのも苦労したようだ。


そこで前久は自分で信用できる商人を見つけ手を結んだのだった。

商人に材料を集めさせるだけではなく、小麦を製粉する作業等手間がかかるものは委託し、安定して材料が手に入るようにした。


商人の方は近衛家御用達と言う強力な後ろ楯(名声)と、前久が趣味で作る料理を料理人に習わせ商品として店屋を開いて稼ぐことで利益を得た。


そんな感じで材料は簡単に揃い兼照も前久に教えてもらっていたので自分でアレンジしながら作っていたらしい。


結果・・・どうも、皇女様の胃袋を掴んだようだ。


永禄の変が起きるまでは良く会っていたらしく、互いに詩を詠んだり、春齢女王様は琴を、兼照は笛を奏でたりしていたらしい。帝も知っていたが娘の嬉しそうな様子を見て目を瞑っていたらしい。ちなみに、稙通は初めて自宅に皇女様がおり兼照と仲良くしていたのを見て泡を吹いて倒れたそうだ。

俺でもそうなる。


そして、今回兼照に降嫁と言う話が出たのは、春齢女王様を入室(出家)させるかどうか話が出たかららしい。


入室の話が出たことで帝は、兼照と春齢女王の仲を知っていたので悩んだらしく稙通と稙家に相談し、過去に降嫁した前例を探させたらしい。


それで前例が見つかったまでは良かったが永禄の変が起き、上を下への大騒動となり、春齢女王の話しは一旦見送られ、やっと収まったので帝は今回の降嫁の話を出した。


俺は話を聞いて、頭が真っ白になったが帝から出た話なので、受けることにした。ただし、条件を付けてだ。


まず、降嫁後皇女様は完全に皇籍を外れること、兼照と皇女様との子は九条家の一族とし皇族とは何ら関係がないことを条件にした。


理由は簡単で、この件を前例とし時の有力者が無理やり降嫁させ天皇家の親族となって乗っ取りをさせない為である。

史実で言うなら秀吉とかやりかねない。


翌日、帝から御許しが出たので、婚儀に関しては全ては義父(稙通)と前久に任せることにした。本当は稙家だったが倒れてしまったので、前久になった。


なんせ、前例と言うのが近衛家だった為である。前久はよほど嬉しいのか涙を流し悲鳴を上げていた。

勘弁してくれと言っていたが二人の関係を知っておきながら止めなかったので、責任は取って貰う。



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― 新着の感想 ―
[一言] 春齢女王、あの某なろう小説ですっかり有名になって(笑) 遂にこの作品にも登場することになったなぁ・・・。
[良い点] この章は非常に評価かが難しいし分かれる。扱う小説は少ない。畏れ多いから。自分も正直具体的にどうこう書けない。そういう意味で自分も日本人なんだなあっておもった
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