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戦国生存記  作者: 現実逃避
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10、周辺国の反応

天文九年(1540年)十二月


三国同盟の署名を終え皆自国に戻っていった。

それと同時に周辺に此度の三国同盟のことを広めるのであった。


小県郡松尾城


「それは間違いないのだな!」


「はっ!村上家に女中として潜入している葉月からの知らせにございます。敵は来年田植えが終わった頃に攻めてくるとのことにございます。また、武田、諏訪も佐久郡の海野様と大井様の領地に攻め込むことになっているとのことにございます!」


その知らせに、幸隆は顔を歪めた。

村上とは小競り合いが続いていた。ついに本気で向かってくると分かってはいたが、武田、諏訪に海野家や大井家を同時に攻められては援軍を頼めず圧倒的に不利になり籠城しか策が無くなる。


「この事を直ぐに海野様、大井殿に伝えて参れ!我らは籠城の準備を行うぞ!」


幸隆は直ぐに家臣を集めて籠城の準備を行い始めるのだった。



信濃林城

守護小笠原家でも今回の三国同盟のことを話し合っていた。


「父上!今回の村上、諏訪、武田の同盟は村上の我らに対する裏切りではないですか!」

そう評定に怒鳴り込んできたのは信濃守護小笠原長棟の嫡子長時だった。


「長時、少しは落ち着け。皆の前ぞ」

落ち着きのない長時を見て長棟は落ち着かせる。


「しかし父上!このままでは攻めてくるのは目に見えているではないですか!」

大声で言う長時に一通の書状を渡した。


「義清から来た書状だ。此度の同盟は小県郡を制圧し後ろを固め高梨に対抗するための同盟のようだ。もし、武田が我が家を攻めた際には我らにつくと言ってきておる」


「そんなの信用できるのですか!」


「義清なら信用できる。故にワシの娘を嫁にやったのだ。彼奴は調略などは嫌うからな。騙し討ちはしないだろう」

長棟はそう言うと、長時を大人しくさせた。


長棟は長時のことが心配だった。弓馬に関しては勇猛な武将だが、兵をまとめるのが苦手だったり、考えが浅かったりと当主になるにしては問題点が多かったのだ。



その頃、同盟調印が行われた町では宴が催されていた。

これは、義照が短期間で町を作り上げた皆を労うためだった。

神水酒も振る舞われ町作りに協力した者達はその味に感動していたのだった。呑んだ後に朝廷御用達の酒と聞かされて、残しておけばよかったと後悔した者は多かったようだ。


今日一日、町では誰でも食い放題、飲み放題としたので寒い中でもどんちゃん騒ぎだ。

勿論、後で商人達に支払いをするのは俺だ。


一応、酒を飲み過ぎて騒ぎを起こす者は容赦無く取っ捕まえて、一日牢屋にぶちこんでいる。酒は呑んでも飲まれるなってんだ。


この町のように、村上領全てが皆で笑って過ごせる土地になればいいなと一人思うのだった。


天文十年(1541年)一月


「………義照、この額は何だ?」

義清は義照から渡された請求書とその詳細を書いた紙を読んで手が震えていた。


「以前話した町の建築費です。父上がくれると言ったので請求しに来ました」


新年の挨拶の日、町の建設にかかった費用を父上に要求した。


父の顔は驚いた後青白くなっていった。義利兄も同じだったので、やはり親子なのだと思った。


「義照、こんなにも払える訳なかろう!城が建つであろうが!」

父は大声で言ってきた。まぁ、予想通り払ってもらえないのは分かっていたので別の物を要求した。


「じゃぁ代わりに、今度小県郡を攻め落とした後、真田郷と後三千石下さい。今の町は父上にお返しします」


真田郷だけで千石はあるので、四千石寄越せと言ってやった。それでも、請求した金額よりはかなり安い請求だ。


「父上、いいのではないですか?義照はここにいる誰よりも政が上手く、領地を豊かにします。戦の後だとかなりひどい状況になりますが義照なら大丈夫だと思います」


義利兄上には金額を知らせているので、こちらの味方になってくれた。

他にも重臣達も味方になってくれたので決まるのだった。何人かは別の思いがあるようだが………


ついでに、家臣が足りないだろうと出浦清種が家臣として付けられた。


出浦清種の息子昌相は真田昌幸の元で真田忍軍を統率していたことで有名だ。


ただし、清種が来るのは小県に移ってからとなった。



天文十年(1541年)四月


「完全にしてやられた………」

父はそう呟くとみるみる顔が赤くなっていった。


父義清が北佐久郡で持っていた領地を関東管領上杉家の援軍を得た海野、大井連合に奪われてしまった。


上杉の援軍はそれほど多くはなかったが、戦の準備をしている隙を突かれたのだった。


父は直ぐに武田と諏訪に奪われた北佐久郡の領地の所有を求めたが、約束通り佐久郡は諏訪と武田の物にすると返答を返してきて激怒していた。


「おのれ!!諏訪に武田め!我らを謀りよったか!」


「恐らく、どちらかが情報を流したのでしょう。でなければ、こうも隙を突かれることはないでしょう」


「佐久郡全てを手に入れるためにわざと大井と上杉家の動きを見逃したのでしょう!」


重臣達は猛反発し、同盟を破棄するよう言うが武田亀を娶った兄義利だけは反対していた。

流石に多勢に無勢、兄はどんどん反論されている。


「パン!パン!」

俺はおもいっきり手を叩いた。すると、何をしているのか気になったのか静かになった。


「父上も皆様も頭に血が上り過ぎです。まずは落ち着きましょう」


俺が言うと我に帰ったのか少し大人しくなった。

「父上、ここはこのまま三国の同盟は継続しましょう」


俺が言うと、やはり反発してきてうるさいので手を上げた。


「では、このまま破棄して、小県郡も捨てますか?それに諏訪と武田を背後に抱えたまま高梨と殺り合うつもりですか?」

俺が言うと静かになった。それが出来ないから今回同盟を結んだのだからだ。


「義照様、同盟を破棄しても今まで通りですので問題無いですぞ!」


重臣の小島が言ってきたので首を横に振った。


「違います。仮に同盟を破ったとしても武田と諏訪は佐久郡を取るでしょう。その後、小県郡の海野家を攻め落とし、我らを滅ぼそうとしてくるでしょう。今までとは状況が違います」


「なれど、このまま諏訪と武田の思い通りになり佐久郡を渡せと言うのですか!」


今度は重臣須田新左衛門が言ってきた。

俺は首を振った。

「確かに今回は思い通り動かされましょう」


「義照、ふざけているのか!!それでは我ら村上の面目が潰されるのだぞ!」


義清が大声で怒鳴ってきた。静かに聞いていたが我慢の限界だったのだろう。


「いいえ、父上、今は我慢すべきです。予定通り小県郡は我ら、佐久郡は諏訪と武田にしましょう。すると、追い出された海野や大井はどこに逃げると思いますか?」

俺が問いかけると皆考え出したが重臣、屋代正重が答えた。


「関東管領上杉家ですな。海野や大井は上杉家と繋がりがあります」


「そうです。逃げた海野や大井が上杉に助けを懇願しない訳がないです。上杉が佐久郡に攻めてくるでしょうから我らはわざと見逃し、奪われた北佐久郡を上杉が押さえたら奪い返せば如何でしょうか?」


俺はうなずいてから説明を続けた。

すると、皆じっくりと考え出すのだった。


「父上、義照の言うとおり、最低小県郡は押さえるべきです」


義利兄上は俺の考えに賛同してくれた。

家臣達は納得した者、本当に上杉が来るのか懐疑的な者で分かれ、父の判断を待った。


「………我らが小県を取ることは絶対だ。高梨を破り信濃一の力を持つことが目的だ。次の戦で小県郡を制圧し、しばらくは様子を見るとしよう。場合によっては手切れもあると考えておけ!」


「「ははぁ………」」


全員が頭を下げて、今後の方針が決まった。

とりあえず、同盟は続けて小県郡を制圧し、様子を見ることになった


評定の後、義利兄上に礼を言われた。同盟を維持してくれたかららしいが、多分、兄は嫁いできた武田の姫に骨抜きにされたなと思った。


正直、今回は自分のためでもある。父との約束で小県郡四千石を貰うことになっているので、こんなことで約束を反古にされたくはなかったのだ。


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