伝説となりつつあった夢の新技術は人類を救えるのか?時遅くもない・・・
博士と長官の3つめです。
「やりました、ついに伝説となりつつあった夢の核融合技術が確立致しました。」
「とうとうやったか、だが10年遅かった。太陽はすでに寿命を終え、氷の大地となった極寒の地球を人類は捨て、新天地を求めて宇宙へ旅立ったのだ。今更、核融合技術が出来たところで、燃料となる3重水素もないのにどうする?役に立たんだろ?
どうせ研究するなら、外宇宙航行用の新ロケットエンジンとか、燃料消費抑制技術とか、もっと近々で役に立つことを研究したほうが良かったんじゃあないのか?」
博士の報告に、科学技術庁長官は顔を曇らせる。人類を乗せた宇宙船は、どうにか地球の重力圏を脱出し、新たな太陽系を求めて外宇宙へ向けて航海しているところだった。
「私の研究は核融合技術に特化しておりましたからね。他の技術研究など、勉強のやり直しになってしまって非常に効率が悪いので、他にやることもないので手元の材料で細々と一人だけで研究を継続してまいりました。
新ロケットエンジン開発などは、他の研究者が取り組んでいるから問題ありませんよ。
それより成果に辿り着くまで時間がかかったのも仕方がないのですよ、宇宙での無重力環境が飛躍的に開発スピードを向上させたのですから。地球上でどれだけ実験を繰り返していても、成功しなかったでしょう。」
「そうか・・・無重力環境でなければ安全に制御できないということなのか?だがなあ・・・今更地球へ戻るわけにもいかないだろうしな・・・火星に移住するか?地球より少し小さいが、僅かに大気もあるのだろ?水だって氷の形で存在する可能性があると、聞いたことがあるぞ。
だが火星にだって重力は存在するから、やはり核融合技術を使うのは無理と言うことか?」
「もうとっくに火星は通り過ぎていますからね。今更地球へ戻れませんし、もうすぐ木星へ接近しますから、木星の衛星へ降りてそこを第2の地球としましょう。当面使う3重水素は手持ちがありますし、極寒の地のガニメデは水が存在する可能性を指摘されております。
今更太陽からの距離云々は関係ありませんし、何より重力が地球に比べて非常に小さいので、核融合技術には最適でしょう。」
木星の衛星へ向けてかじを取り、人類移住計画が始まった。