土地は要らん
ドーラ、シビル、バスコの3人はストラオス王国の王都に来ていた。
村を襲って来た実行犯を近衛兵に引き渡した時、王都へ行くように促されたので後始末を任せて移動した。
「放っておけば数ヶ月で枯れる。燃やすのはダメ。急ぎたいなら切るしかない」
村を覆う植物の処理方法を聞かれたシビルはそう答えた。
リリーくらいの風使いじゃないと切れないと思うけど、と付け加えて。
その時点でリリーは子供達を連れて王都に帰っていた。
近衛兵達は困っていたけど、ドーラ達もそのまま移動する。必要なら正式にフリーグ家へ依頼して欲しい。
近衛兵が用立てていた馬車を使ってドーラ達は王都へ移動し、王城に入っていった。
「やっぱり馬車を使わなきゃ良かった。見張られてると落ち着かない」
場内の馬車留めで降りたドーラは、背伸びをしながら大きな声で愚痴を言った。
見張りの近衛兵も出迎えに来た兵士も微妙な顔をしている。
兵士に連れられて場内に入る。
場内の者から色々な視線がやって来る。好奇な目、侮蔑の目。いつものことだ、ドーラ達は気にせず進む。
ここで待てと言われた部屋に入る。
柔らかな椅子にどかっと座って休憩する。
「久しぶりに対人戦をやると疲れるな。手加減するのがめんどくさい」
向こうは殺す気で来たかもしれないが、結局両者に死者は出なかった。
動けないくらいの重症な者はいたが、生きているだけで満足して欲しい。
「地中を掘って移動する作戦が上手くいった」
遠くからドーラの戦闘を見ていたシビルが褒める。
「まあ目くらましにはなったかな。最初から全力でやれたら、あんな手間かけなくても良かったのに」
「ドーラが本気出すと、みんな黒焦げだろ。俺は手加減したが楽しかったぞ。面白い子供達にも会えたしな」
よほど楽しかったのかバスコは笑っている。
「確かに面白い子供だった」
シビルも納得している。
「なかなか才能のある子だったな。リリーの子供じゃなかったら私が雷撃魔法を教えてやるんだけどな」
「俺はクロエに秘技を教える約束をしたぞ。城から出たら男爵邸に行こうぜ」
「そういえば、バスコはどうやって子供達に捕まったの?」
シビルの質問に、バスコは楽しそうに答える。
そんな話に乗っちゃったのかと肩落とすドーラ。
シビルは実験に興味を持ったようで魔力と気を区別する方法を考え始めた。
俺にも魔力があるんだよとバスコは興奮している。
兵士が再びやってくるまで、3人はワイワイと話し合った。
「土地は要らん。報酬は金で支払う。最初からそういう約束だっただろ」
謁見の間に呼ばれたドーラは、褒美の話を聞いてそう答えた。
「シュバイン公爵領を召し上げたので土地が余っています。素直にもらっていただくと助かるのですが」
宰相が説明する。謁見の間には、ドーラと宰相、国王の3人しかいない。シビルとバスコは部屋で待っている。
計画の失敗を知ったシュバイン公爵は逃亡した。北の国境を抜けていったと後に発覚する。
「公爵の家族に渡すか、王家の直轄地にしたらいいだろ。何度も言うけど私は領地なんて要らない」
「公爵家は全員行方不明で継承者が居ません。多少は王家の領地としますがが全てとなると不満を持つ者が出ます。功労者が手を上げてくれると助かるのですが」
「功労者と言うならフリーグ男爵だろ。アイツに会ったからこの件は上手くいったんだ」
偶然会った男爵を介して、ドーラは誘拐計画のことを国王に売り込んだ。その方が報酬は増えるから。
国王からの返事は、そのまま実行するように、だった。
国王は自分の息子を囮にして、都合の悪い人物の力を削ぐことに成功した。
「フリーグ家にも打診しましたが、まずはドーラさんにと言われました。そろそろ腰を据えたらどうだ、との伝言も聞いています」
「大きなお世話」
「僕も婿を取って家を再興してはどうかと思う」
これまで黙っていた国王が発言する。
「私は婚約者に捨てられて以来、結婚はしないと決めている。それに戦争時に裏切った家の再興なんて、それこそ不満が出るだろ」
「裏切ったのは家臣達が隣国に騙されていたからだろ」
「部下の失態は上司の責任。国民は皆、伯爵家が裏切ったと思ってるよ」
「我々は、優秀な魔導師に国外へ出て行って欲しくない、と考えています」
ドーラと国王の平行線な話に、宰相が割って入る。
「私はもう縛られたくないと言っているんだ。爵位、領地、領民、婚約者、夫、そういうものに縛られたくない」
「困りましたね。そうなるとフリーグ家と王家で折半という形になりますが、男爵家の力が強くなり過ぎます」
「領主の成り手がいないなら、3人の息子達に領地経営を任せてみたらどうだ?将来の為の良い勉強になるだろ。魔力至上主義なんてそろそろやめて、他の才能で次の王を決めるのもいいんじゃないか」
ドーラが提案する。
「プフラオメ王子はまだ6歳ですが」
「剣術や魔法のように、領地経営の家庭教師でも付けたらいいだろ。そうでなくとも、派閥の誰かが手を貸すと思うが」
「領地経営が上手くいかないとなると、小さな領地すらまともに運営出来ないのに王国なんて、と民衆は思うでしょうね」
「そういう経験をせずに、若くして王座に就いたあんたは苦労したと思うが?先行きの不安が民衆を惑わせ、反乱に走らせるんだ」
「反乱の渦中に居た人の言葉は身に染みますね」
ドーラは肩を竦めて答える。
「どう分けるのがいい?年齢が離れているプフラオメに他2人と同じ大きさの領地を与えるのはどうかと思うが」
国王がドーラに問う。
「国王が適当に分けて、長兄から順番に管理したい土地を選んでいけばいい。バカじゃなきゃこの領地経営の重要さは理解するだろう。理解したら、自分がどの場所を選べば有利になるか考えて選ぶ筈だ。土地の広さは二の次になる。逆に狭い方が経営は上手くいくかもしれない」
「公爵領の東側は王妃の親類が治める土地。第2妃の実家は北方伯で、間に1つ他領があるが大きな街道で繋がっている。キーファー王子が東で、バンブス王子が北を取るという考えですか」
宰相がドーラの考えを推察する。
「まあな。ただ領内最大の街ザフトが西寄りにあるから、その街を含む土地を取る可能性もある。公爵領を5つに分けてザフト周囲は王国管理にした方がいいかもな」
「そうですね、公爵領内の行政はあくまで王国管理、一部を王子達に委託という形にするのが良いでしょう」
「プフラオメは王都に近い方を取るだろう。残る土地が男爵か。最近東の男爵領は盛況のようだから、経営手腕があるんだろう。王子達と競わせるには、いい相手じゃないか」
「期間は3年、様子を見て年数を増やしましょう」
宰相がドーラの話に乗ってきた。国王も納得する。
「わかった、その案で他の大臣達とも相談しよう。ドーラは本当に金だけでいいんだな」
「構わないが大人3人がしばらく働かずに暮らせる金額をよろしく。狸福の宿屋に泊まる予定だから、何かあればそちらに連絡をくれ。あとはプフラオメに挨拶をして帰るよ。あんたも息子と話くらいしな」
宰相は扉の向こうで控えていた兵士を呼び、ドーラの案内に付けた。
ドーラはプフラオメに謝罪し、励まして城を出た。




