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大賢者の弟  作者: 山宗士心
第1幕 大賢者の弟
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こっそり街へ

「今日はこちらをお持ちしました」


使用人のミハウが市井で流行っている食べ物を持って来てくれました。

妹も喜んでいます。


あ、毒味は大事ですが僕達の分を残して下さいよ。


美味しい。

冷たくてとっても美味しいです。

牛乳を使ったお菓子だそうです。何度か牛乳を飲んだことがありますが、僕はちょっと苦手でした。でもこれは好きです。料理は偉大です。


妹も喜んでいます。僕の分もちょっとあげましょう。


街にはまだまだ知らない物があると聞きます。

僕はまだ王都から出たことはありません。

いつになったら出掛けられるのでしょうか。母様に聞いてみましょう。


街は危険がいっぱいだからもう少し大きくなるまで待ってね、と言われました。


魔法の勉強も剣術の稽古も頑張っています。

去年より背も伸びました。


まだダメですか。わかりました、牛乳を飲みます。野菜も残しません。

妹からも頑張ってねと励まされました。可愛すぎて抱きついてしまいます。




1月1日は新年祭です。

ついでに僕の誕生日でもあります。今日で6歳になりました。

背も伸び、力もついてきました。剣術の先生からも褒められています。


母様に新年の挨拶をするついでに、もう一度訴えましょう。あれから何ヶ月も経ちましたからね。

ふふふ、勝利の予感がします。


ダメでした。

新年祭を見に行きたかったんですが、人が多くて危ないと言われました。

今年もお城のテラスから傍観です。

大通りには屋台が並んでいます。

楽しそうな声と美味しそうな匂いがここまで届きます。

我慢して不貞腐れましょう。




いつも食べ物を買って来てくれるミハウが、こっそり街へ連れて行ってくれるそうです。

大丈夫でしょうか。

母様に見つかったら怒られてしまいます。やはり許可が出るまで待った方が。


確かにいつ許可が出るのかわかりません。

ちょっとそこまで行くなら、危険は無いでしょうか。遠くまで行かず一番近くの屋台までなら。


決めました。行きましょう。

あそこの店までですよ。すぐに帰りましょうね。

お願いします。


使用人の服に着替えて変装しました。

僕より少し年上の子供服です。これで僕もミハウの仲間ですね。


調理場の裏口から庭に出ます。この道は知りませんでした。

そのまま進んで、王都で働く人達が使用している門から街に出ました。

門兵から声をかけられましたが止められません。彼はミハウのお知り合いだそうです。


さて、店の前に来ました。

皆並んでますね。一番後ろはここですか。

とてもいい匂いがします。何を売っているのでしょうか。ワクワクします。

お店に並ぶのも、買い物をするのも初体験です。

買い物?あ、お金を持っていません。どうしましょう。


いいんですか。ありがとうございます。いつかきっとお返しします。


お店はお肉を串に刺して焼いた物でした。

牛の肉だそうです。

お城の食事でも牛肉は出てきますが、この料理は初めてです。


美味しい。

柔らかくてとても美味しい。

この香りは何ですか?他国から買い付けた香草を配合しているのですか。

香草の名前を教えてください。今度こっそり料理人にお願いして作ってもらいましょう。


満足しました。帰りましょう。

大丈夫です。ここは引くところ。戦略的撤退です。

さあ、行きましょう。

しばらく様子を見て、今回の行動が母様にバレなければ、また街に連れて行ってください。




大変なことになりました。

ミハウに裏切られてしまいました。


新年祭の時に街に出てから、何回もバレずに外に出ました。

少しずつ行動範囲を広げていきました。

色々見ました。楽しかったです。

色々食べました。美味しかったです。

そんな思い出も吹き飛んでしまいました。


屋台の火災に気を取られているうちに、ミハウに担がれて路地へ運ばれました。


訳もわからず抵抗しましたが、ミハウは動じません。

そのままも路地にある家に運ばれ、知らない3人が出迎えました。僕を誘拐するそうです。


さらに抵抗を続けていると何か飲まされました。

あ、なんか眠たくなってきました。

そこに女の子が飛び込んできて魔法を連打しています。僕を助けに来てくれたのでしょうか、凄い動きです。僕の魔法の先生より凄く見えます。

男の子が獣人と戦い始めました。こっそり近づいてきたのがバレたようです。こちらの剣術もいい動きです。

もうダメです。眠ってしまいます。最後に、逃げてくださいと叫びました。




目が覚めました。頬っぺたが冷たいです。

手と足が縛られ、口には布が当てられているのがわかります。


会話が聞こえます。魔力の話をしているのでしょうか。


女の子と目が合いました。魔法を使っていた少女です。同じように縛られています。

声を出そうとしたら、魔法少女に首を振られました。黙っていろということですね。


話を聞いていると実験するそうです。

僕も獣人は魔法が使えない、魔力を持たないと教わりました。どうなるか気になります。


実験は成功したようです。

獣人も魔力を持っているということです。訓練すれば我々と同じように魔法を使えるのでしょうか。


考えごとをしていると実験をした獣人が倒れました。蔦か何かでグルグル巻きになっています。誰がどうやったんですか。


僕の拘束が解かれました。

ありがとうございます。

魔法少女と剣術少年と、獣人の女の子?

僕が寝ている間に色々あったんですね、ありがとうございます。


あ、実験成功おめでとうございます。


なるほど、確かにあの植物が気も吸収する可能性はあります。魔力と気が同じと決めるのはまだ早いということですね。


この剣術少年は面白い人です。もっと話をしましょう。


そんな暇はないと魔法少女に怒られました。

その通りです、すみませんでした。


捕まっていた部屋を出て、上に向かいます。

ゆっくり、慎重に。

誰もいません。出口はどちらでしょう。


ありました、皆さんこっちです。急ぎましょう。


出口の扉を開けて外に飛び出しました。雨です。

雨ですが外に出られましたよ。


喜んでいる横から植物が伸びてきました。

すみません、また捕まりました。皆さんは逃げてください。

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