vs, ボクらのファイナルバトル Round.4
『マ……マドカちゃん? コレって?』
戸惑うモエルへ、ボクは朗々と告げる。
「だから『死ぬ気無い』って言ってんじゃん? 一人で無理なら二人! 二人で足りなきゃ三人! 個人個人が〝可能性〟を秘めてるなら、それが集まれば〝無限の可能性〟になる! それが〝友達〟のスゴさだ!」
『クサいですわね?』
『うむ、聞いてて恥ずかしいな……』
『っていうか、マドカがマトモな教示とかして大丈夫でしょうね? とてつもなく不吉なんだけど?』
パモカから流れてくる揶揄。
そこ、ウルサイよ!
『日向マドカ……アナタの作戦を実行するに当たり、今回は私が全体指揮を取る──それでいい?』
「よかよかダンス ♪ 」
『では、各機、フォーメーションへと移って』
『『『「了解!」』』』
クルロリからの指揮を受け、四色のフラモンが分散飛行!
各機が取り付くべきは、底面四方に据えられた球体ユニット──即ち〈光速推進力発生コンバータ〉だ!
「モエル! キミは中央のデッカイ球体を!」
『……え? あ、うん!』
フォーメーションは済んだ!
ここから第二段階だ!
『各機、バーニアのエネルギー供給回路を〈光速推進力発生コンバータ〉へと外部接続して』
指揮官の指示に従い、各フラモンが腰部から動力パイプを引っ張り出した。
そして、ウィンウィンと奇音を鳴く発光球体の一部パネルを開き、緊急差し込み口を露出させる。
「こんな御都合的な接続口、よく有ったなぁ?」
ボクの素直な感嘆に、クルロリが補足説明を添えた。
『本来はエネルギー出力値低下の際に、他ユニットから供給フォローしてもらう為の応急処置用』
『此処に差し込めば、いいわけね?』
ジュンの確認を『そう』と肯定。
『エネルギー流動方向を逆転させ、この膨大なエネルギーをアナタ達のバーニア出力へと転化する。その大出力なら、落下質量を双殺可能』
『しかし、大丈夫だろうな? 光速エネルギーだぞ? 万ヶ一、暴発されたらシャレにならんぞ』
『胡蝶宮シノブ、その為に私が此処にいる。客観的観測から全体の数値データを逐一算出把握し、各機の出力限界値まで的確に光速エネルギー供給値を調節する』
『貴女の技量、信頼して宜しいのですね?』
『いい』
クルロリに断言されると、何故だか不思議と自信が溢れる。
作戦実行前なのに、もう成功確定したみたいな安心感だ。
みなぎってくる可能性に任せて、ボクは気合を叫んだ!
「よぉぉぉし、いくよ! みんな!」
『ええ!』『はいはい』『……フッ』
「死なば諸共ォォォーーーーッ!」
『『『不吉な号令するなぁぁぁーーーーッ!』』』
怒気られた。
ここぞとばかりに一斉に……。
何だよぅ?
士気アゲようとしただけじゃんかよぅ?
斯くして、作戦実行!
五機のフラモンが、スカートバーニアから白い大花を噴き咲かせる!
その白く眩くも長い尾は、まるでウェディングドレスの如く!
『ク……ウッ! 信じる……信じているもの……クルロリを……マドカを!』
『ま……まだ死ねませんわよ! 私の手料理で……ヒメカを笑顔にして差し上げなければいけませんの!』
『と……止まれ! 否、止めて……みせる! 猫カフェにも行けないまま終われるか!』
『マ……ドカちゃん……みん……な!』
「グ……ウッ! ナ……ナメンな! ボクの……ボクたちの青春は──」
闇から振り下ろされる暴圧の拳を、宇宙の花嫁達が希望に押し返す!
「──いつだって全力全開だぁぁぁぁぁーーーーッ!」
そして────。
五機のフラモンを礎として、巨大宮殿は鎮座した。
規格外の重石を満身創痍に背負い耐える鋼鉄乙女達は、神罰を下されながらも尊厳を守り抜いたかのように誇り高い。
灰色の荒野へと降り立った四人のセーラー服少女達は、その亡骸を感無量に見つめる。
あ、訂正。
一名だけブルマ体操着だったっけ。
「……付き合ってくれて、ありがとね」
宇宙光に輝く白銀を朽ちた巨体へ向けて、ボクは素直な感謝を呟き漏らした。
「それにしても、よく止まったわね」
不意にジュンが、いつもの抑揚で事後感想。
うん、きっとわざとだ。
沈んだ空気を打ち消すために。
「うむ、流石の私も、正直生きた心地がしなかったが……」
シノブンは朽ちた巨影を眺め続けた。
その武勇に哀悼を捧げるかのように……。
如何にも〝戦士気質〟の彼女らしい。
「ま、クルロリ様がバックアップに付いていらしたから、然して心配はありませんでしたけど……」近場の岩へと腰掛け、ラムスは『おかずをクッキング』を読み始めた。「……もっともマドカ様の発案だけでしたら、絶対に乗りませんでしたけどね。地獄逝きの片道切符ですもの」
「どういう意味だーーッ! この性悪豊乳メイドーーッ!」
「さて?」
ペロッと小舌を出して、小悪魔的にはぐらかす。
このヤロー、帰ったら覚えてろよ?
出されたおかず、全部食っちゃるからな!
ヒメカに回す前に!
と、巨大フラモンのハッチがプシュウと白い呼気を吐いた。
開いたコックピットから飛び出して来たのは、Gカップのプリテンドフォーム!
「マドカちゃ~~ん!」
「うわっと?」
勢い任せに抱き着かれ、そのまま押し倒される。
──ガンッ!
「ぎゃおす!」
慣性を加味したタックルで、後頭部を打ったよ!
灰色の岩盤に!
「いッッッたいな! モエル!」
「……生きてる……」
「うん?」
抱擁に寄り添う頭が、か細く漏らした。
「……生きてるよぉ……わたしも……マドカちゃんも……みんなも……生きてる……生きてるよぉ……」
「だから、最初から言ってんじゃん! 死ぬつもりなんか無いって!」
「ふぇ……ふぇぇぇぇぇん! ふぇぇぇぇ…………」
子供みたいに泣きじゃくる。
ったく、仕方ないなぁ?
ボクはあやすように撫でてあげた。
彼女の気持ちが落ち着くまで……。
「えぐっ……えぐっ……マドカちゃん……」
「……何さ?」
「ふぐぅ……お礼に……好きなだけ揉ませてあげるね?」
「絶対ヤダよ?」
「シクシク……感謝のつもりだったのに……」
「シクシク……丁重に辞退します……」
「二人揃って泣き崩れるなーーッ! 鬱陶しいーーッ!」
ジュンのツッコミ怒声!
パモカハリセンが後頭部を叩き抜けた!
うん、ボクの後頭部だけ……何故ッ?
モエルはッ?
モエルは御咎め無しッ?
「ああ、やっと面倒な役目から解放されましたわ ♪ 」
本家ツッコミ役の健在ぶりに、ラムスがホッとした様子で呟いた。




