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vs, SJK  作者: 凰太郎
vs, フラモン
20/41

vs, フラモン Round.4

挿絵(By みてみん)

「ふぇ……ふぇぇ……」

 泣き疲れて惰性(だせい)でグズってるし。

 オモチャ売場で、よく聞く声だな。

 ボクは腰に両手を当て、強い語気で(たしな)めた。

「デッカイ図体して、ビービー泣くな! 少しは〝グレート・マジ ● ガー〟見倣(みなら)え! 涙も流さなきゃ言葉も喋らないぞ!」

「えぐっえぐっ……ふぐぅ……」

 なんとか泣くのを(こら)えるフラモン。

 まったく、幼稚園時代のヒメカか!

「で?」と、ボクは叱るように切り出す。「どうして無差別強襲(こんなコト)したのさ?」

「グスッ……だってぇ……」

「やっぱ命令されたのか?」

「……うん」

 シュンと(うなず)いた。

「ジャイーヴァに?」

「うん……マドカちゃんを捕まえろって言われたから……」

「で?」

「え?」

「……みんなに悪いと思わないのか?」

「はぇ?」

「無差別強襲なんかして、学校のみんなに悪いと思わないのかって言ってるの!」

「ふぇぇ……だって、命令で……」

(まわ)りを見ろ!」

 饅頭顔(まんじゅうがお)が、半ベソで周囲を見渡した。

 ボコボコ(えぐ)れたグラウンドに、()ぎ折られた植樹(しょくじゅ)。校舎だって一部破損している。

 あまりに荒れた惨状を認識し、ようやくフラモンは自分が大変な事を仕出(しで)かしたと実感したようだ。

「ふぇぇ……だって……だって、ジャイーヴァ様が『手段は選ばん』って言ったから──」

「言い訳の前に、まずはみんなに『ゴメンナサイ』でしょーがッ!」

 (しつけ)にキレた!

 ラーメン屋での五 ● さんのように!

「ふぇぇぇん! ごめんなさい! ごめんなさい! うわ~~ん!」

 大泣きながらに校舎へと玉葱頭(たまねぎあたま)を下げる。

 まったく! どんな教育してんだか!

 ジャイーヴァのヤツ!

「ホントにゴメンナサイッ!」

 気合いを入れて深々と頭を下げた──ボクが!

「マ……マドカちゃん?」

「……みんなが許してくれるまで頭上げんな」

 戸惑(とまど)いに凝視(ぎょうし)するフラモンへと小声で注意。

 謝罪は誠意が大事だ。

 (しばら)く、気まずい沈黙が漂い──。

「ま……まぁ、いいんじゃねーか?」「う……うん、別にウチらに被害無かったしね」「とりま校舎とか壊れたけど……それって校長とかの案件だし?」「ってかコレって休校のパターンぢゃね?」「マジ? ヤタッ!」

 口々(くちぐち)に脱線しだす女子高生(JK)軍団。

 そのテンションは、侵略被害に()ったとは思えないほど明るい。

 ホント現金なのな、オマエら。

 だけど、それは無敵な強さだよ。

 寛容(かんよう)に脱線した空気を(さっ)し、ボクとフラモンは静かに頭を上げた。

 校舎内には普段通りの(かしま)しさが(にぎ)わっている。

 うん、普段通り(・・・・)だ。

 何故だか誇らしさを覚え、ボクはフラモンへと軽くサムズアップ。

「あ、そうだ!」女子生徒の一人が、何かを思い出したようだ。「みんな、一緒に……せーの!」

 てっきり〝正義の味方(ボク)〟への謝辞でも言うのかと思いきや──ッ!

「「「「「日向(ひなた)マドカさん、成仏して下さい! 南無南無南無…………」」」」」

「全校生徒で合掌すんなやァァァーーッッッ!」

 女子高生(JK)軍団は『御仏壇のは ● がわ』と()したとさ……。

 と、今度は予期せぬ質問が飛んできた。

「ねえ? アンタ、何者なの?」

「ふぇ? ボク? えっと……えっとね?」

 ホント()らない質問だ。

 こっちは正体悟られたくないのに。

そいつ(・・・)の仲間?」

 隣の巨体を()して(のたま)った。

「違うよ! コイツは〈ベム〉っていう宇宙怪物!」

「じゃあ、アンタは? 何が違うの?」

「え……っと」

 改めて突き付けられると困るな。

「ねぇねぇ? 何が違うの?」

 ボクの複雑な心境を余所(よそ)に、好奇の質問は()まない。

「もう! しつこいな! ボクは〈SJK〉だよ!」

「「「「「(こう)()なん?」」」」」

「違うわッ!」

 全員息ピッタリに首傾(くびかし)げボケすんな!

 いや、まぁ……無理もないけど。

「じゃあさ? それって何の略?」

 追及されたボクは、気まずい躊躇(ちゅうちょ)にボソッと呟く。

「……宇宙(スペース)女子高生(JK)

「「「「「ダサッ!」」」」」

 各教室が一斉にユニゾった。

 ……クルロリ、やっぱ不評です。

「ねえねえ? マドカちゃん?」

 隣の鋼鉄巨人が、人差し指でボクの頭をチョンチョン。

「何さ?」

「わたし〈ベム〉じゃないよ?」と、指(くわ)えポーズで饅頭(まんじゅう)(がお)をコクン。

「ふぇ?」

「わたし〈ベム〉じゃなくて〈ベガ〉なんだよ?」

「…………わあ、そりゃ驚いた」

 そうきたか。

 このデッカイ『山を砕く(しろがね)の城』みたいな図体して、ヌケヌケと〈ベガ〉ときたもんだ。

「ホントだよ?」

 疑りシラケるボクの心境を察して、(さら)に指(くわ)えコクン。

「……言い張るか」

「だって、ホントだもん」

「言い張るか!」

「じゃあ、証拠見せるね?」と、フラモンはボクを正視したままガキョンガキョンと(いぬ)()いになった。

 結果、深々とした土下座スタイルに(まと)まる。

 愛嬌満載の饅頭(まんじゅう)(づら)は上げたまま。

 ってか、怖いよ! むしろ!

 ボクの身長よりもある巨顔が、ドデンと眼前に据えられてるんだから!

 で、ガションと顔面が開いた。

 プシュウと(あふ)れ出た気圧差が白い(もや)()れ流され……その中に彼女(・・)はいた。

 お姫さまみたいな清楚系美少女!

 ピンクのロングヘアがサラリと流れ、潤む瞳は母性本能を(くすぐ)る。頼りなくも愛玩的な表情が、語らずとも「ちょっとドジっ子なの♪  てへ♪ 」なキャラクター性を現していた。

 その肢体を覆うのは〝純白ロイヤルドレス〟ならぬ〝純白ムチムチボディスーツ〟──SFアニメでよく見るような肉感圧迫してるヤツ。

 エロッ! こいつ、エロッ!

 野郎イチコロ属性てんこ盛りじゃんか!

「ななななッ?」

 驚愕するボクへ〈フラモンベガ〉は「てへ♪ 」と舌を出して頭をコッツンコ。

 いらないよ!

 そういう天然ブリッコな野郎イチコロモードは!

「ななななななッ?」

貴女(あなた)(がた)が〈フラットウッズ・モンスター〉と呼んでいるUMAは、正式名〈半自律型外殻実装仕様コスモローダー〉──宇宙では種族間を問わずに普及している凡庸(ぼんよう)機体ですわ。とはいえ、ここまでの巨躯仕様や変形機能搭載は、(わたくし)も初めて見ましたけれど」

 驚愕収まらぬボクの背後から、ラムスが平然と解説する。

 うん、いつの間にか背後にいた。

 気配すら感じさせずに。

 大方、地面からでも涌いて出たんだろう。

 清水の如く。

 まぁ〈液状生命体(ブロブベガ)〉だから不思議でもないけど。

 ってか、そんな事はどうでもいい!

 ボクの驚愕は、意識を()がれる事無く継続中!

「ななななななななななッ?」

「マドカ様に理解し易く言うならば、別に〝搭乗型ロボット〟という解釈でも構いませんわよ? コンセプト概念は、それほど変わりませんし」

「何でロボットの中からGカップが出て来るのさァァァーーッ?」

「…………争点、そこじゃありませんわよね?」

 ラムスの冷ややかなツッコミと同時に〈フラモンベガ〉は「いやん♪ 」と寄せ乳で恥じらった。

 何故か、まんざらでもない照れ顔で。

 おにょれ! このEとGめ!

 オセロみたいに、(ボク)を前後から挟みおって!

 ……ん? 待てよ?

 オセロみたいに(・・・・・・・)

 って事は!

「ひっくり返して! いっそ、ひっくり返して!」

 ラムスの脚に(すが)りつこうと飛びつき──ズシャアァァァ──擦り抜けて顔面スライディング!

 寸前で部分液状化しやがったな。

「……次、()りますわよ? (わたくし)に抱き着くのは禁止です……ヒメカ以外は」

 氷のような殺意満々で(さげす)んでくるし。

「ってか、愚妹(ヒメカ)ならいいのかよぅ!」

「ママさんもOKです」

「ボクだけ仲間外れッ?」

「あら? 当然でしょう?」と、悪意ある温顔でにっこり。

 何コレ? 新しいイヂメッ?

 ボクは口元(くちもと)を押さえ「よよよ」と泣き崩れる。

「うう、(ヒド)いよぅ……ジュンなら〝おさわりし放題〟なのに……」

(ひと)を風俗嬢みたいに言うなーーッ!』

「ふぎゃぺれぽーーーーッ!」

 パモカ放電のおしおき!

 ああ、忘れてた……ジュンとパモカリンクしてたっけ。

「で? いきなり何ですの? 今回は、どんな思考に(いた)ったか知りませんけれど……」

 腰に両手を据えた嘆息(たんそく)で、ラムスが(たず)ねる。

「ひっくり返してくれたら、ボクも胸デカくなるじゃん!」

「……は?」

「デカくなりたい!」

「なりませんわよ」

 ……何気に傷つく()(ぐさ)だな。

 うん、でも、まぁ……さすがに『オセロ法則』が現実に適用されるはずもないか。

 とか思いきや!

貴女(あなた)の胸は絶望的。それ以上の成長は見込めませんわ」

 ぅおいッ!

「荒野」

「グサッ!」

「絶壁」

「グササッ!」

「草木も生えなければ憩い(オアシス)も無い死の砂漠」

「ぶるぉあぁぁーーっ?」

 容赦ない毒舌攻撃にボクは死んだ……。

 若 ● ボイスの悲鳴を吐いて……。

 チーン ♪

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